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欧米のマンガ躍進、その先は?

アメリカやフランス、ドイツでマンガの売上が好調だというニュースをよく見かけます。一方で、その後にどういった展開があるのか、あまり情報がありません。(少なくとも筆者の見てる範囲では)

コロナ禍による「巣ごもり需要」もひと段落ついた今、海外の「儲かった」出版社や書店が打ち出す次の手はあるのでしょうか?

2022年2月なので、ほぼ一年前の報道ですが、KADOKAWAの海外事業はマンガとラノベが牽引しているそうです。

現地の状況を伝える日本語の記事は割りとたくさんあります。「クーリエ・ジャポン」は英米を取り上げ、フランスも増えているという記事はいくつもあります。

ドイツに関しては、マンガ出版社最大手カールセンのシュヴァルツ氏への詳細なインタビュー記事を日独産業協会が公開しています。内容自体は、マンガ産業史におけるドイツ編を考える上でも非常に興味深く、おすすめですが、将来の展望についてはほとんど語られていません。

また、ドイツの出版取次大手によると、2022年のドイツ語のマンガ売上高は2018年の3,800万ユーロから1億600万ユーロの拡大したそうです。

そんな中、筆者も先日「ねとらぼ」にドイツのマンガ事情に関する寄稿記事を執筆しました。

ドイツでは、出版社ではなく、書店がマンガの好調な売上を背景に攻勢に出ているといった内容です。ポップアップ店をオープンさせるだけに、とどまらずイベントを開催し、マンガの売上拡大の追求にとどまらず、マンガ文化を広めていくような、そういう動きがありました。
この「ねとらぼ」で取り上げたドイツの書店大手タリアは、ロイナという小規模な町にも新たにマンガ専門のポップアップ店を設け、イベントを開催するそうです。

所変わって、アジアのマンガ販売の状況を紹介していて、参考になったのがこちらの竹村響さんのNoteの投稿でした。

ベトナムでは、現地をテーマにしたマンガが日本の出版社と共同で制作され、好調だという話です。これもあるマンガ文化のローカライズという意味では非常に興味深い事例です。


とりとめもなく書いてしまいましたが、筆者の「肌感」では、マンガの売上が伸びた先には、さらなる利潤追求行為の一環として、環境醸成がさらに進むのではないかと見ています。それは、マンガ「文化」の拡大として現れると見ています。マンガが大量に出版されれば、カジュアルな読者層が選択に困るケースも増えるでしょう。例えば、熱心な読者が読むべき作品を指南するような需要も生まれるかもしれません。

ドイツのアニメ・マンガファンが集まるイベントでは、マンガニュースサイトや熱心な読者による、座談会イベントが実施されることもあり、盛り上がっていました。

ここまで書くと気づかれる方もいるのではと思います。日本でも、「この漫画がすごい!」といったマンガの読み方を提案する書籍は、業界が成熟してこなければ出てこなかったものでしょう。今後、欧米でもそういった「マンガ語り」の需要が大きくなるようであれば、日本のマンガ読者として協力できるものがあるのではないかと感じた次第です。皆さんはどう思われますか?


タイトル写真:ドイツ、フランクフルトの大型書店のマンガ売り場の様子。筆者撮影。


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