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ルーズな文化とタイトな文化

組織のコミュニケーションカルチャー

組織のコミュニケーションカルチャーについて考える機会に、次のどちらを選ぶか、という話になりました。

A:禁止領域の設定
B:理想の共有と推奨

Aは、「あれをしてはダメ」「これをしてはダメ」と、禁止を明確化するものです。
Bは、「あれをしよう」「これをしよう」と、目指すべきものを明確化するものです。

言葉として、Aはネガティブなものであり、Bはポジティブなものです。

ルーズとタイト

『ルーズな文化とタイトな文化』(ミシェル・ゲルファンド著 田沢恭子訳 白揚社)という本があります。著者は、スタンフォード大学経営大学院組織行動学教授、同大学心理学客員教授、メリー団度大学カレッジパーク校心理学特別教授で、比較文化心理学、組織心理学を専門としている方です。

面白かったのは、タイトな文化とルーズな文化のトレードオフについてです。

タイトな文化
長所:誠実、社会秩序、自制
短所:狭量、因襲的、文化の停滞

ルーズな文化
長所:寛容、創造性、適応性
短所:社会の無秩序、協調の欠如、衝動的

環境的背景からの文化傾向

傾向として、災害、病気、食糧不足、侵略、内紛による混乱など、自然もしくは人的な脅威にさらされる歴史的背景のある地域は、タイトな文化が多くみられるとのこと。一方で、ルーズな文化圏は、それらの脅威に直面することが少ないという傾向がみられるとのこと。これは、古代ギリシアの時代から、現代にいたるまで、長い歴史を通じて、洋の東西を問わず、共通する傾向として見出せるものと書かれています。

もちろん、ひとつの国家の中でも地域によって、このタイトとルーズの傾向の違いがみられたり、同一地域での個人によって異なる傾向が見られることもまた多いのですが、総じて、そのような区分が見て取れるとのことでした。

いくつかの実験的な結果からも、ルーズな文化、ルーズな環境の方が、創造性が高く発揮されるのだそうです。

ルールを好む文化とルールを嫌う文化

面白かったのは、「ルール」という言葉を聞いて連想するものを、それぞれの文化圏に属する人に聞いた答えです。

タイトな文化:善、安全、秩序
ルーズな文化:悪、抑圧的、束縛的

「ルールを守る」というフレーズからの連想では、さらに激しく。

タイトな文化:言うことを聞く、従う
ルーズな文化:いい子ぶりっ子、ロボット的

など、タイトな文化においては、秩序を好み、型にはまった単純明快な暮らしを好む傾向が見られ、変化を好まない、慣れ親しんだものを守るほうが好きであり、古き良き時代をなつかしむというのです。一方、ルーズな文化は、その真逆の傾向がみられるのだそうです。つまり、ルーズな文化は、ルールを破り、その先に、新たなルールを作ることを見据えていると考えられます。既存のルールをただ守るのではなく、目の前にあるルール自体は改変可能であるととらえる姿勢なのだと思うのです。

新しい世界でのルールづくりの難しさも記事になっていました。

さて、禁止と推奨は、どちらが自由か
あらためて、冒頭のAとBを考えてみました。

A:禁止領域の設定
B:理想の共有と推奨

とは、少し言葉を補うと、まったく違った見え方がしてきます。

A:禁止領域の設定(とそれ以外の自由さ
B:理想の共有と推奨(による行動の制約

こうみると、禁止領域の広さにもよるとは思いますが、最小限の禁止領域に限定して設定するならば、Aの方が自由度を広く保つことができる、ルーズな文化と言えるかもしれません。

Bは、正解の指導につながり、導くことはできるかもしれませんが、タイトな文化であり、自由さを制限された状態かもしれません。

ポジティブに禁止を伝えるには?

創造性高く、自律的で、かつ共に世界観を共有しながら未来を描いていける関係性を構築したい、という場合、ルーズな文化が向いているように思えます。しかし、禁止領域を提示する際に、どうしても否定的な言葉になってしまいます。

否定的な言葉より肯定的な言葉の方が、ポジティブな空気感を生み出せます。どのようにして、最小限の禁止エリアを表現することができるのか。

理想的な行動の推奨は、ともすれば自由さを減らすことにもつながるという可能性に気づくことができました。僕自身、どのように考えていけばよいのか、迷っているところです。

個人的に、とても面白いテーマと感じています。

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