リクナビ問題から私たちは何を学ぶべきなのか
8月、SNSやTVを賑わした「リクナビ問題」。就活生から十分な同意を得ず、データを企業に販売していたニュースは驚きとともに伝えられました。その後データを購入した企業名が次々と明らかになり、官庁も対応に乗り出すなど、問題の余波はなお広がり続けています。
なぜリクルートキャリアという個別企業のつまずきが、ここまで大きな問題になってしまったのか。取材班「データの世紀」は初報をキャッチしたあとも、反省をどう生かすべきなのか考え続けてきました。
その記事がこちら。2019年度の新聞協会賞受賞にあわせて、読んでほしい記事を選んで無料公開しています。このnoteではリクナビ問題から学ぶ反省点を3つ、改めて提起したいと思います。
反省点1:モラルが足りなかった
年間80万人が利用する就活のプラットフォーム、リクナビ。ここにしか求人情報を掲載していない企業もあるため、就活生は使わざるをえないのが現状です。
私も6年前はその就活生のひとりでした。当時の規約がどうなっていたか思い出すどころか、ちゃんと登録前に読んでいたかすら怪しい。怠惰な自分を擁護するわけではありませんが、ユーザーに不利な条件が規約に書いてあるなんて夢にも思わないものです。
リクナビはきちんと情報の用途について説明を果たしたうえで、サービスを利用してくれている就活生の不利益にならないようにデータを取り扱う責任がありました。就職を応援する立場としてモラルを欠いていたと非難されても致し方ないといえます。
反省点2:データのもつ重みに鈍感だった
リクナビが収集したデータは38社が購入しました。リクナビ側は「採用の合否判定には使わない」と各社と確約したといいますが、真相はやぶの中です。各社はデータを購入するにあたって、自社に応募した就活生の個人情報をリクナビに業務委託として渡していたといいます。
業務委託のために個人情報を外部提供するのは法的に問題ないとされていますが、説明が足りなければ就活生の信用を失います。「合法だから」と思考停止しては、倫理的なデータ活用の道は遠ざかるばかりです。
反省点3:法整備が周回遅れだった
就活生から得たデータは個人情報保護法の対象になるため、今回の対応は違反にあたります。扱いを誤ったリクナビに非はありますが、個人情報の線引きが曖昧なままの法律にも問題はあります。たとえば携帯電話の位置情報は現状、個人情報に含まれていませんが、ようやく8月末の公正取引委員会で保護の対象とする指針案が出されました。
誰でも自分の位置情報にアクセスできる――想像したらちょっと怖いですね。実感と乖離したままのルールを、機動的に見直す必要があります。
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多くの会員を抱え、大量の個人情報を管理していたリクルートでさえつまずいてしまいました。では私たちは何を学び、どう生かすべきなのか。
一つ言えるのは、今まで企業に渡しっぱなしだった個人情報を一人ひとりが主体的に管理したほうがいい時期にきているということ。データ保護で先行するヨーロッパは、個人の権利を重視しています。同意してデータを渡した場合でも、自由に撤回できる権利を認めているとか。
グーグルのようにログを請求できるサービスもあります。渡したデータの棚卸をしてみると、個人情報をどこまで渡すべきなのか考える契機になるかもしれません。
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今回でおすすめ記事のご紹介は終わりです。加速するデータエコノミーは可能性と同時に課題もはらんでいます。
データの世紀をどう生きていくのか。私たち自身が問われています。
「データの世紀」まとめ読みはこちらから
(日本経済新聞社デジタル編成ユニット 渡部加奈子)