サバ缶が値上げ。それでも受け入れられる人気の秘訣とは?
サバ缶の価格が上昇しています。日経POS(販売時点情報管理)情報によると、サバ缶の22年12月の平均店頭価格は1個当たり177.5円でした。前年同期比で18%も高くなっています。
2018~2019年ごろに起こったサバ缶ブーム以来、サバ缶は、長く水産缶詰の代表を務めているツナ缶に並ぶ人気になっています。サバ缶ブームが起こった理由として、3つの理由が挙げられます。
以上の理由から、ブームになったことにより、伊勢丹新宿店(東京・新宿)などの百貨店もサバ缶を取り扱うようになり、高級化が進みました。
しかし前述のように店頭価格が上昇し続けているため、このまま値段が上昇し続けると、消費者離れの危険性があります。では消費者が離れないような価格とは、一体どのような価格なのでしょうか。
ここで注目したい「支払意欲」という考え方
ここで注目すべきなのは、「支払意欲」という考え方です。支払い意欲とは、消費者が「商品やサービスの価格が妥当かどうか?」を判断する際に基準とする、自分の経験や記憶に基づき支払いが可能な価格に対する感覚のことを指します。
例えば「ラーメン1杯1500円は高すぎて払えないが、300円は安すぎて、美味しくなさそう」といったように高すぎても、安すぎても価格が妥当でない限り、消費者は購入しようとしてくれないのです。
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支払意欲を把握するためには、直接買いたい金額を尋ねる直接質問法や、間接的な質問を行うことで交渉バイアスを抑えて支払意欲を測るPSM分析という手法があります。
実際に調査を行う際は、どちらの手法を用いるにしても、支払意欲調査の目的(価格改定、新商品開発等)を明確にして、調査を行うことが大切です。
PSM分析についてはこちらの記事を参照してください。
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サバ缶の値上げが、この支払意欲から外れてしまうと消費者離れが起こってしまうのです。ではこの支払意欲から外れないためには、どのようにすればよいのでしょうか。
サバ缶が支払意欲を超えないためには?
現状のサバ缶から製品を変えずに、値上げのみを続けていると、いずれ支払意欲を超えてしまいます。顧客の支払意欲を超えないためには、単に値上げをするのではなく、サバ缶に付加価値を加える必要があります。付加価値を加えることで、支払意欲の値を上昇させることができます。
サバ缶にどのような付加価値を付けた方が良いのかを考えたときに、重要なことは、顧客が求めている付加価値を見極めることです。
顧客が求めている付加価値を見極める重要性がわかる事例も
以前もご紹介しましたが、「明治おいしい牛乳」は、従来製品に比べて、内容量を1リットルから900ミリリットルに変更しました。その理由の説明として、「手が小さいお子さまや握力が弱い高齢者でも持ちやすい」「従来品に比べ、筋肉への負担が約1割軽減」を挙げました。
しかしネット上では、「筋肉はさすがに草」「実質の値上げ」などのツッコミが殺到しており、多くの消費者からは受け入れられていないようです。
当社が、変更の理由として説明した「軽くなって持ちやすくなった」などの理由を、消費者は、新たな商品の付加価値として感じなかったことが要因として考えられます。
このように単純に付加価値を加えるのではなく、顧客が求めている付加価値を見極めて製品に反映させることが重要です。
どのような付加価値を加えるのが良いのか?
実際にサバ缶に付加価値を加えるとなった際に、どのような付加価値を加えるのが良いのでしょうか。ここでヒントとなるのが、消費者の声です。サバ缶が人気になった理由として、以下の3つの理由がありました。
実際に付加価値を加える際には、ここに注目して具体例を挙げるとするならば、「ひと缶当たりのたんぱく質含有量を増やす」「アレンジレシピがしやすくなるような工夫をする」「消費者が求めるサイズを増やす」などの付加価値のつけ方が考えられます。
サバ缶の店頭価格は上昇していますが、このように単純に値上げをするのではなく、付加価値を加え、消費者の支払意欲を超えないような値上げをすることが重要です。