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日本のGDPがドイツに抜かれる理由

2023年のGDP、ドイツ3位・日本4位へ 1ドル132円なら並ぶ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

23年に日本のGDPがドイツに抜かれる主因の中でも、特筆すべきは日本の国内自給率が低下してしまったことでしょう。ドイツは2000年代以降、企業が国内で活動しやすい環境を作るために、政府当局が積極的な政策を講じてきました。これに対し、日本では円高デフレを長期間放置してしまったがゆえに、逆に企業の海外流出を加速させるような状況を作り出してきたことがあげられます。

このため、ドイツの経常黒字は特にGDPに含まれる貿易収支への依存度が高いことが特徴となっています。対して日本の経常黒字は、GDPに含まれない証券投資や直接投資の収益による所得収支によって経常収支の黒字を維持しています。背景には、ドイツでは2000年代以降、対外・対内とも直接投資残高がGDP比で増加したことがあります。つまり、日本がドイツと大きく異なるのは、対内直接投資が著しく少ない点です。

特にドイツは、2000年以降にユーロ統合で経済の実力見合いで割安な通貨を活用し、経済連携協定の推進や法人税率引き下げなどに伴う立地競争力強化によりドイツへの対内直接投資を推進しました。ドイツは元々高い技術力を持っていたことから他国よりも製造業の競争力があり、優良な人材と部品会社を持っていました。この点で特に製造業が企業立地上、優位となったことが大きいでしょう。

一方、外資系企業ビジネス実態アンケート報告書(JETRO、2022年度)において、在日外資系企業が日本でのビジネスのしづらさに関する改善要望に基づけば、日本固有の規制や独自の標準規格の緩和、行政のデジタル化・簡素化、リスキリングなどを加速させ、こうした改善要望を減らしていくことが、対内直接投資や日本企業の国内回帰の拡大のために必要なことがわかります。

また、日本企業の六重苦と言われた中でも厳しい労働規制については、逆に働き方改革などに伴う労働時間規制の強化などにより悪化しているのが現状です。そして、厳しい環境規制と高いエネルギーコストについては、厳しすぎる規制などに伴う安全な原発の再稼働が遅れており、エネルギーコストが高止まりしています。このため、日本の立地競争力は円安や人件費の低さで改善しつつありますが、まだ道半ばであるといえよう。

既に日本の製造業賃金はシンガポールや韓国よりも低い水準になっています。とはいえ、依然として生産拠点としての優位性は人件費の低いタイやフィリピンなどの新興国に分があります。このため、日本が立地競争力を得るには、コモディティ化した製品というよりも、そうした新興国では供給できない高い技術に裏打ちされた製品を生み出す国になることが求められるでそう。

そしてそのためには、為替動向にかかわらず、気候変動対策や経済安保、格差是正等の将来の社会・経済課題解決に向けてカギとなる技術分野や戦略的な重要物資、規制・制度等に着目し、国内の強みへの投資が今まで以上に必要となってくるでしょう。

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