「Nサロン」ゼミ ”海外イノベーション現場の発掘術” ホンネの狙い
NIKKEI x noteの新企画「Nサロン」が始まります。(今回の募集はすでに締め切られています)
この中で、「ゼミ」として”海外イノベーション現場の発掘術”を担当させていただくことになりました。公式なゼミの説明は下記にあるのですが、ガイダンスの前に、担当する私のホンネ(?)を書いておこうと思います。
究極の目的は、ビジネスに限定せず「発見や出会いを楽しむ」こと
公式説明では、ビジネスパーソンを意識して「チームに一目置かれるアウトプット力を磨く」といった”意識高い”感じのテーマが掲げられています。もちろんこれはウソではないし、安くないお金を払って参加する以上、仕事に活かせるものを得たい、というご希望があるはずです。それは当然として、さらに仕事を超えた先の生活というか、少し大げさにいえば人生を楽しむヒントも、このゼミの中で、私も含めた参加者同士のやりとりの中から生み出して行けないだろうか、というのが密かに思っていることです。
私自身、仕事として海外の展示会・カンファレンスに参加してきましたが、単に仕事をこなすということだけでなく、そこで知り合った人にまったく別な仕事の件で協力してもらったり、あるいは直接仕事をしなくなっても友達としての関係が続き、家族ぐるみのおつきあいに発展したり、といった経験をしてきています。こうした人間関係は、目先の仕事の成否(通常は、半年か長くて1年単位で1回だけ人事評価されておしまいですね)以上に、持続的で個人に帰属する成果となり、私にとって大きな財産になっています。
また、過去たくさんの展示会・カンファレンスに出向き、時には出展者側のサポートもしながら、見聞きしたり経験した失敗やトラブルを含めたあらゆる発見の蓄積が、今の自分にとって大切なアイディアや発想の引き出しであり、困りごとにどう対処すれば良いかをとっさに判断するデータベースになっているとも感じます。
こうした経験を、仕事の一環としてさせてもらえることは、支払われるお金(給料)に加えての「お金ではない報酬」だと思うのですが、お金は誰でも受け取れるけれど、この「報酬」は案外受け取れる人とそうでない人に分かれてしまうように感じます。
この「お金ではない報酬」をどうしたらフルに受け取れるのか。私自身にもまだ明快な答えがあるわけではないのですが、ゼミの参加者の皆さんと一緒に、私なりの仮説を検証し、その方法を探って深めていけたら、とも思っています。
そのためにも「アウトプット」は重要だと考えています。一つは出張を想定した報告・発表などのためですが、もう一つ、自分自身のためにアウトプットをし、それをゼミの仲間と共有する、それによって同じものを見ても他者の目線を通じて違うものが見えたり、あるいは他者の関心事に自分が付け加えられるものがあればそれを出し、自分の関心事について他者の反応や情報をもらう(=お金ではない報酬の一つ)、といった体験をしたいと考えています。
ご参考までに、この1月にアメリカ・ラスベガスで開催されたCESに関して、私がCOMEMOにアウトプットしたものを載せておきます。
もう一つの隠れた目的:旅のノウハウの蓄積と共有
もう一つ、このゼミで達成したいと考えている目的は、旅のノウハウを参加者の皆さんと蓄積し共有していくこと。日本人の旅のスタイルは、まだまだスタンプラリー的に名所を巡ったり(それも駆け足で)、あるいは旅行ガイドにある美しい写真通りの現物を見て確認することや、オススメされているモノをオススメ通りに買ってくる、といった形が多いような気がします。もちろん、旅の目的は人それぞれなので一向に構わないし、大きなお世話なのですが、それだけが旅だと思っているのだとしたら、ちょっと寂しい気がします。
私が大きな影響を受けた「Practical Nomad: How to Travel Around the World」という本があります。当時、池袋のジュンク堂書店をふらっとのぞいた時に、洋書の在庫処分としてぞんざいにワゴンに入れられ、500円で投げ売りされていたものを手に入れたことを覚えています。現在は新版が出ていて表紙も変わっているのですが、私が手にした2000年版がまだAmazonにあったので、参考までにリンクを張ってみました(ですが、旧版ですので、この版の購入はお勧めしません)。
この本の何が私にとって衝撃的だったかというと、旅の本であるのに、具体的な旅行先のことはまったく書かれておらず、旅情をそそるような美しいカラー写真も一切なく、ひたすら旅の技術・ノウハウが書かれて分厚い1冊になっていたこと。日本の旅行書でそうしたものは見かけたことがなかっただけに新鮮でしたし、書かれているノウハウも当時の自分には新しい知識だらけで、まさにバイブルのように、時間があるときに開いては、何度も目を通す本になっていました。
この本(旧版)に書かれていること自体は、ネットの普及によって時代遅れになった内容も多いのですが、自分が行きたい場所・いくべき場所に、安全にリーズナブルな価格で快適にたどり着くという本書が意図したことは、約20年の時を経て、むしろ一層重要なスキルでありノウハウになってきていると個人的に思います。
そうした「旅する技術」を、ゼミの皆さんとともに、蓄積し、共有し、古くなったものは改訂していけたら、というのも密かに目的としていることです。それがこのゼミのタイトルをわざわざ「海外」としたことの意図です。もちろん、国内でもイノベーションの現場はあるし、旅の技術が必要であることには違いがないのですが、海外であればさらにそれが際立ってくるように感じるのです。
他のゼミの成果を生かす場として
そして、このゼミは、他のゼミよりも遅れて開催されます。理由は、台湾で開催されるComputex Taipei / InnopVEXの視察を「実地研修」として組み込む関係で、開催期日(今年は5月下旬です)に合わせたからです。
それによって、他のNゼミで先行して学んで頂いたことを、このゼミの中で活かしていただけたらと思っています。ビジネスモデル図解やWORD文章教室、情報整理法などは、ゼミで学んだことを実践する場としてうってつけではないかと思いますし、台湾の豊かな食文化や台湾人の働き方は、家庭料理や複業を考える上でも絶好の刺激になるのでは、と考えています。
言ってみれば「規定演技」としてComputex Taipei / InnopVEXへの参加を共通の対象としたいとは思っていますが、「自由演技」として、せっかく台湾に行くことならではの体験を各自で計画し、それに基づいた独自の視察をしてくることも想定しています。そのために、お仕着せの視察プランは一切お出しするつもりがなく(全員で一緒に夕食をとる機会を1回だけ”コアタイム”として設定しようとは思っています)、各自の希望や目的に最も良いと思われる案を、私とともに、今回のゼミを担当してくださる台湾のエキスパート・吉村さんがアドバイス差し上げながら、台湾に行くチャンスをフルに活用してもらい、公私とりまぜで、ディープな経験をしていただきたい、台湾を満喫してもらいたい、とも思っています。それをきっかけに、吉村さんと私が愛してやまない台湾の魅力を知っていただけるなら、それもまた、私にとっての私的な目的を達成することになりますし、これまでお世話になってきている台湾と台湾人へのささやかな恩返しにもなると思っています。
さいごに
ここまでお読み頂いた方、長文・駄文へのおつきあいありがとうございました。このNゼミを通じて、私自身もモデレーターであるだけでなく参加者の一人として、教える・教わるの関係というよりも、ゼミを起点に長く続いて行くコミュニティの一員になれたら大変嬉しいです。同じ旅する仲間としてご参加いただけるなら、幸いです。