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猛暑をきっかけに考える気候変動対策とコミュニケーション戦略

7月も終わりに近づき、私の住んでいる静岡県浜松市では連日38度〜39度という猛暑日が続いています。「気候変動とメディア」というテーマで関心を持ち始めて2年半ほどの月日が経ちますが、否応なしに気候変動のことを考える機会が増えていることを感じます。

報道においても猛暑や温暖化と関連して漁獲量の減少、コメの流通量の減少、山形県と秋田県での記録的な大雨による浸水被害などが連日報じられていて、気候変動・地球温暖化の迫りくる影響が身近になりつつあります。

危機的な状況だ――。6月後半、全国漁業協同組合連合会(東京・中央)の総会で全国の漁師が海の異変を口にした。サンマは直近5年間で8割減、スルメイカは6割減、サバは5割減。養殖のノリやワカメも過去最低の水準だ

[7/14 日本経済新聞]
画像クレジット:日本経済新聞

コメの取引価格が冷夏による凶作で品薄になった1993~94年の「平成の米騒動」以来およそ30年ぶりの高値をつけた。昨夏の猛暑の影響で品質の高いコメの流通量が減り、卸会社は手元在庫が不足している。スーパーはコメの仕入れが難しくなり、店頭で購入制限を始めた。少なくとも新米が本格的に出回る9月まで需給は逼迫した状況が続く。

[7/30 日本経済新聞]

21世紀末、五輪開催の基準を満たす都市の最大約27%でマラソンは開催不能な暑さになると国立環境研究所の大山剛弘研究員らは予測する。秋や夜10時以降の開催、対象都市を広げる対策が必要だ。

[7/29 日本経済新聞]

ただ、気になるのはこうした日々の報道において、気候変動・温暖化とのつながりが詳しく解説される機会は少なく、地球温暖化を止めるためにCO2排出量を削減したり、適応のための取り組みの必要性・緊急性を感じるきっかけは依然少ないと感じることです。


気候変動解決への需要を高めるには、人間のように話すことが必要

そんな時に偶然上記の記事を目にしました。「気候変動解決への需要を高めるには、人間のように話すことが必要」と題した短いエッセイには、以下のようなことが書かれています。

世界中の60,000人を対象とした調査によると、多くの人々が気候変動対策を支持しているものの、現在の解決策に関する言説(ナラティブ)は共感を得ていない。
効果的なコミュニケーションの3つの重要な原則
【1】より安全でクリーンな未来に焦点を当てること
【2】禁止ではなくアップグレードを強調すること
【3】専門用語ではなく共感できる言葉を使用すること

雇用を生んだり、経済成長のような漠然とした大きな話ではなく、未来の世代のために地球を守るというメッセージが、あらゆる層で最も効果的で、専門用語を避け、解決策が日常生活をどのように改善するかを強調することが重要。

[7/3 Cipher CLimate News]

記事を書いたのは元ブランド・コミュニケーション戦略のエグゼクティブだったジョン・マーシャル氏で、現在ポテンシャル・エナジー・コーリション(Potencial Energy Coalition)という気候変動分野のコミュニケーション戦略を立案・実施する非営利団体を運営している人物です。30年以上ものキャリアを通じて石鹸やシャンプー、スナック、クレジットカードなどのマーケティング・コミュニケーション戦略の最前線で活躍していた7年前、当時17歳のご子息から気候変動に対して十分なことをしていないのではないか、と問われたことが団体設立のきっかけとのことです。

例えば同団体が3ヶ月前に手掛けたキャンペーンの一つが以下の動画です。山火事や洪水、大気汚染、干ばつ、台風などと気候変動との関連性を示す内容で、現在165万回以上視聴されています。

2021年のTEDが主催する気候変動において、『気候変動をきちんと伝える方法 3つの戦略』と題した約8分の動画プレゼンテーションにおいては分かりやすいメッセージングの重要性が詳しく紹介されています(日本語字幕付き)。

「地球温暖化」と言われるのと、「地球をオーバーヒートさせる汚染物質の分厚い毛布」と言われるのと、どちらが切実な問題に感じますか? この実践的なトークでコミュニケーション戦略の専門家のジョン・マーシャルが、気候変動についての語り方をすぐにでも変える必要がある理由を説明します。そして彼は聴衆の直感的な理解を促し、心の底から人類存続の危機を心配させるような、簡単ながら力強い言葉の使い方を教えてくれます。

[2021年3月TED Countdown]

気候変動対策の仕事というと、理系の開発職、エンジニア、あるいは最近ではCO2排出量策定の専門家などのイメージを思い浮かぶ人が多いかも知れません。が、今回偶然目にした「ポテンシャル・エナジー・コーリション」の活動を知るにつけ、マーケティング、コミュニケーション分野の専門家の果たす役割がとても大切ということを認識することができました。

*2023年11月に公開された23カ国、約5万8,000人人を対象にした気候コミュニケーションについての調査レポートが公開されています。日本も対象国に含まれていて、とても示唆に富む内容がまとめられています。

image credit:Potential Energy Coalition

政府による緊急性の高いメッセージ(ナラティブ)に触れた人はより賛同を示すというデータが紹介されています。ただし、日本の数値は各国と比べ数値が低いことも窺えます。是非じっくりレポートも読んだ上で、今後もこうしたテーマを深堀りしていきたいと思います。

image credit:Potential Energy Coalition

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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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