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海外で流行する「現金詰め込み」の節約術

食料品や電気代の高騰によって生活が厳しくなる世帯は、2023年中旬から急速に増えてくることが予測されている。毎月の収入から生活費を差し引いて貯蓄ができる余裕度は、年齢、年収、家族構成によっても違ってくるが、インフレによる生活費の高騰で深刻な影響を受けるのは、20代の単身者と、住宅ローンを抱えた30~40代の世帯と言われている。

生活困窮層が増えている状況は、インフレ率が高い米国のほうが深刻で、バンクオブアメリカが2022年8月に行った調査によると、Z世代の73%は貯蓄をすることが難しくなっており、40%は日常の生活にも支障が出るようになっている。その要因としては、家賃上昇の負担が若い世代ほど重くなっていることが大きい。米国では毎年のペースで家賃の値上げが行われているため、持ち家率が低い若者層ほど、収入に対する家賃比率が高くなっている。

こうした状況の打開策として、転職や副業で収入アップを目指すことの他に、「楽しく節約すること」が流行してきている。TikTok上では、生活費に危機感を抱く人達の中で「Cashstuffing(キャッシュスタッフィング)」という節約方法が、世界中に口コミで広がっている。

これは、クレジットカードよりも現金払いを優先して、生活に必要な資金を用途別の封筒や整理ポーチなどにラベルを付けて保管しておくことで、次の給料日までの無駄遣いを防ぐ方法だ。Cashstuffingには「現金を詰め込む」という意味がある。TikTokでは、多様なアイデアによるキャッシュスタッフィングの動画が次々と投稿されて、関連動画の再生回数は8億回を超すようになっている。

https://www.tiktok.com/@baddiesandbudgets/video/7136011389105098026

@baddiesandbudgets

Replying to @Sara Jayne Streets my low priority budget binder carries the bulk of my sinking funds #budgetbinder #cashstuffing #cashenvelopes

♬ Super Freaky Girl - Nicki Minaj

キャッシュスタッフィングは、古くからあるアナログな方法ではあるが、これまではお金の使い方に無頓着だった若者の中でも、節約や貯蓄の意識が高まっていることの効果は大きく、金融系のスタートアップ企業にはビジネスチャンスと捉えられている。

【マネー小分けアプリによる家計管理】

 キャッシュスタッフィングは、現金を目的別に小分けしておくことで、月末に残高不足が生じることを防ぎ、貯蓄できる資金を捻出するチャレンジだが、それを電子化したアプリは家計の予算管理システムとしての成長をみせている。

従来型の家計簿アプリは、使ったお金を記録していく方式のため、毎月の出費が嵩むと次第にモチベーションが下がってしまう。対して、マネー小分け型の家計管理は計画した予算に沿った生活をしやすく、節約の成果が「貯蓄額」という形で残るため、マイホーム購入を目指す家庭や、子どもの金銭感覚を養う目的でも活用されるようになっている。

2019年に米ユタ州で創業したFintech企業が開発する「Qube Money」は、アプリ上で電子封筒に小分けした資金を提携先銀行の口座で保管して、毎月の支出や残高状況を家族で共有できるのが特徴だ。

アプリの利用体系には3種類のコースが用意されている。個人向けのベーシックプラン(無料)では、入金したお金を用途別のフォルダに小分け管理して、請求先への送金をすることができる。月額8ドルのプレミアムコースに移行すると、スケジュールされた定期送金の設定をすることや、カップルと口座の共有をすることが可能になる・

さらに、月額15ドルのプレミアムプランでは、配偶者、子ども、祖父母などを含めた最大5名までにアプリからの即時入金可能なデビットカードが発行されて、生活費や小遣いの小分け管理をすることができる。預金を保管しておく口座は1つだが、家族ごとに専用フォルダを持つことができるため、アカウントオーナー(世帯主)は、プライバシーに配慮しながら、ファミリー全体の入出金を把握して、無駄遣いの習慣を改めることに役立つ。Qube Moneyでは、このアプリの使用によって1世帯あたり、月額400ドル前後の節約が可能になると説明している。

【クレジットカードを使わない節約術】

海外で流行している節約方法のトレンドは、クレジットカードの利用を減らすことが目的として大きい。米国で成人1人あたりのクレジットカード利用残高として平均3700ドル(約48万円)の債務を抱えており、高金利がかかるリボルビング払いの割合も高い。

そこで負債を増やさないためにも、現金払いが節約術として推奨されるようになっている。しかし、現金を持ち歩くのは不便であるし、現金保有は利息も付かないため、銀行口座と連結したデビットカードが見直されている。クレジットカードと比較すると、デビットカードがポイント特典が低いため、近年は不人気となっていたが、無駄遣いをしないために、即時払い式のデビットカードに切り替える動きが、年収が低い若年層を中心に増えてきている。

政策金利の上昇により、米国の普通預金も利息は平均で2%台(年利)にまで上昇しきており、無駄な出費を抑えて預金に回せるか、クレジットカードのリボ払いで買い物を続けるのかの違いで、将来の貯蓄額に大きな差が生じるようになってきている。

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