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「好きなコト」をシゴトにするために必要なコンセプチュアルな思考法

中村保晴 | 事業戦略家

少し前に私は「とある就活系のイベント」に登壇させていただきまして、90分ほどブランディングの話をさせていただいたのです。そしてそのイベントには、私の講演の後で何人かの学生さんに質問を受けて私が答えるという時間があったのですね。

最初は就活におけるごく普通の質問に答えてきたのですが、最後の質問にだけ少し答えを考えさせられました。それもかなり深く。

それは、「好きなことを仕事にする方法を教えてください。」という質問。

就活前の学生の切実な質問だなと、彼女の真剣な表情を見て 私は理解しました。この質問を受けたときに私が考えたのは、「これは方法の話ではなく思考の話だ」ということ。つまり「どうやるか」ではなく「どう考え行動するか」という思考法の話ではないかと。

「好きなことを仕事にする」。本当にそれが実現できたらどんなにいいだろう。誰もが一度はそんな願望を頭の中で描いたことがあるのではないだろうか。

今回はそんな"理想を現実に"できるかもしれない考え方を、私なりに組み立ててアウトプットしていこうと思います。


「好き」という感情の力。

人には 大なり小なり「好きなもの」と「嫌いなもの」があって、特に「好き」という心理は 理屈ではなく感情的なものだ。つまり、「好き」というのは、人が持つ”エモーショナルな感性”だと思う。

まあ「好き」というと幅広いけど、広い意味では”趣味”も「好き」の部類に入るだろうし、あと誰かの「ファン」、どこかのチームの「ファン」という感覚も”好き”という感情のひとつだ。

他にも、猫が好きとか、犬が好きとかペットが好きとか。それと特定のアニメとか映画が好きというのもある。そうそう、その質問をしてくれた学生は「上手じゃないけどギターが好きだ」と言っていた。それだって立派な「好き」だ。

そういう「好きなこと」は  強制されなくても深く知ろうとするし、興味があるから「主体的に」手間をかけられる。調べたりメモしたり。つまり、それは言い換えると「自分ごと」として、「自分の好きなこと」としてそのコトに向き合えるエネルギーを持っているということだ。

「好き」という感情は、それを「深掘りしていく力」を与えてくれる。「好き」という感情は、「自分の中の主体性」を引き出してくれる。「好き」という感情の中には、まさに仕事で求められる「能力の向上」と「ポジティブでアカデミックな部分」を伸ばしていく要素がある。

「好きという感情」は人の成長において明確なトリガーになり得る。それは「好きなことを仕事にする」ということの正当性を意味していると思うし、実際にそうだ。


「仕事」としての”好きレベル”。

「好きなコト」には、「好きだからこそできる」行動の動機がある。それを 趣味として楽しんでいくのか、仕事にしていこうとするのかは、その「好きなコト」によっても違うとは思うけど、少なくともそれを仕事としていきたいと思っている人は、何かそれを実現させるための具体的なアクションが必要だ。

例えば、野球が好きな小学生がいて、その野球を将来の仕事にしたいと思っているとしよう。その小学生が仮に「プロ野球選手になりたい」と思っているとする。彼がプロ野球選手になるためには「圧倒的に野球がうまい」という段階が必要になる。要はプロ野球選手になれるだけのスキルを持つということだ。しかもその野球のスキルを、プロ球団のスカウトが評価して「うちに欲しい」と思われなければ、好きな野球で”メシを食って”いけないわけだ。

ここに「好き」を「仕事」にすることへのハードルがある。

そうは言ってもプロ野球選手のようにハードルが高い仕事ばかりではないから それがすべての仕事に当てはまるわけではないと思う。しかし少なくとも「誰よりも上手」「誰よりも得意」というハードルは必ずある。

「好き」から「得意」へ。

つまり、好きなことで飯を食っていきたいなら、少なくとも「好き」という領域から「得意だ」という領域にいかなければならない。「好き」という気持ちは「感情」だけど、「得意」というのは「やってきたことの結果」。つまり、行動の結果だ。

ただ「好き」なだけでは仕事にはならない。好きという気持ちにはすごくパワーがあって、強い意志に変わりやすい要素がある。何よりも「主体的になれる」という力はやっぱりすごい。「自分ごと」にできるって、やっぱりすごいチカラだ。

だから、その「好きなこと」を仕事にしたいのなら、まずは「誰が見ても得意だ」と言われるようになることがスタート地点だ。もちろん、得意というだというだけでは仕事にならないこともたくさんあるだろう。

仕事になるということは、言い換えれば その得意なことに対してお金を貰えるということだから。誰かがあなたの「得意なこと」に財布の紐を緩めるということなのだから。

それは簡単なことではないのかもしれないけど、少なくとも「得意だ」という評価があれば、そのスタートラインに立てる。好きなことを仕事にしたいと思うなら、まず「得意だ」と言えるところまでいくべきだ。

そして自分で言うだけではなくて、自分以外の人が見ても「得意だね。上手だね」と言われる評価・評判を得るところまでいくべきだ。
「好き」というのは自分の感情だが、「上手」というのは他人の評価だからだ。

好きというだけでは「何も起こらない」。そこからいかにして「得意だ」というところまで行けるかどうか。それが「好きを仕事にしたい人」のファーストステップだと私は思う。

ただの「好き」だけでは仕事にはならない。その「好き」を「得意だ」と言えるように。そしてその「好き」を、他の誰かに「得意だね」と言われるように。

「好き」は磨ける。だって「好き」には、主体性と深掘りしたくなる動機があるから。「好き」を磨くことが「仕事」へとつながるゴールデンロードだ。


”得意”を仕事にしてくれるのは「価値」だ。

それで「得意だ」という領域まで来たら、次に必要になってくるのはその「得意なコト」を仕事にしていくためのプランだ。

世の中は先の「プロ野球選手」のように「なれる率」の低い職業ばかりではない。例えばコンサルタントやデザイナーやライターなどの職業は、フリーランスとして”売れている売れていない”ということを考えなければ「私はデザイナーです」と言ったその瞬間からデザイナーになれる。

いくらデザインすることが好きで、それが得意だと評価されているとしても「どのレベルのデザイナーになるか」というプランは必要だ。なぜならば、「シゴトにする」ということは「自分に価値をつける」ということだからだ。デザイナーだと宣言することがゴールではない。デザイナーとしての価値を”誰かが買ってくれるようになって”はじめて「シゴト」になるわけだ。

シゴトとは、そのジャンルで価値を感じてもらうことだ。企業がその「好きなコト」が得意な あなたを採用するのも「価値を感じてもらった結果」だ。フリーランスの場合は、誰かがあなたに依頼してくれるという事実こそが「価値を感じてもらった結果」だ。

「得意」に蔓延る弊害。

「誰がみても得意なレベル」になると、周りに自分より上手な人が少なくなる。そしてそれがあなたの「価値」を高める弊害になる場合がある。

なぜならば、インターネットのこの時代。まだ出会っていないだけで「あなた以上の価値」は実はゴロゴロいる。その「得意なこと」をシゴトにしていきたいと思うなら、歩みを止めてはならない。なぜならば、仕事とは価値だからだ。価値を高めていくために必要なのは「戦う誰か」ではない。自分の願う「なりたい姿」。そこへ向かうことそのものがあなたの価値を高めるモチベーションになる。

「好きなコト」だからこそ、もっと貪欲に価値を高めていくことができる。
「好きなこと」だからこそ、誰よりも詳しく、誰よりも上手くなりたいという動機が生まれる。

そのために必要なのはプランだ。それが本当に「好き」で、スペシャルな存在になりたいのならプランが必要だ。

人はなりたいものになるための努力を楽しめる。なりたいものになるための苦労は苦労と感じない。イチローの言葉がそれが真理だと証明していると、私は思う。


君にコンセプチュアルスキルはあるか。

大谷翔平選手が高校1年生の時に「マンダラチャート」という 9×9マスのグリッドを使った目標設定をして、誰もなし得なかった「高校生で160km」を達成した話は有名だけど、やはりその話を考えると、その「得意の先」には具体的なプランや目標が必要なのだと感じる。

マンダラシートがいいかどうかということがここでの本質ではなく「誰から見ても得意」という領域に入ると、自分より上手な人がほとんどいない環境になりやすくなる。だから成長が鈍化しやすくなるし、本来なりたかった状態になっていくペースが遅くなりやすい。

そして、そこから先をどうやっていけばいいのかわからなくなる。周りにロールモデルがいないから。そうこうしているうちに、「ただ得意だ」というだけの「趣味の上手な人」で終わってしまいやすくなるというわけだ。

しかし目標を設定することで、そこにいくための自分の行動をコントロールしていけるようになる。これは、コンセプチュアルスキル のひとつなのだが、「こうなりたい」けど「今はなれていない」ということを認識することで、そこにいくための方法を具体的に考えれるようになるという、目標達成の組み立て方のひとつだと考えたらいい。


「どこにどう行くのか」は自分で決められる。

例えば、明日の正午に大阪駅に行くという目標(目的)があるとしよう。
それで今は東京にいるとして、さて「どうやって明日の正午に大阪まで行くか?」と考えていくとする。費用のことも考えるし、時間のことも考えるでしょう。あと、人によっては快適さも考えるでしょう。確実性も安全性もあるかもしれない。

そしてそれらの何を優先させるかによって行動は変わる。時間優先なら新幹線か飛行機を選ぶだろうし、費用優先なら高速バスも候補になる。もしかしたら自分で自動車を運転して行く選択肢もあるかもしれない。他にも多様に方法手段はある。

目標(目的)は明日の正午に大阪駅にいること。そして今は東京駅にいる。明確なのは現在地と目的地だけ。あとは自分が何をどう優先させて確実に目的を果たすかということだ。

目標におけるコンセプチュアルスキルとは、こういうことだ。目的地と時間を明確にすることで、そこまをどう組み立てるか。何を使って、今日何をするのかということまでが決まってくる。それらはすべて手段だ。

何度も言うが、「好きなコト」をシゴトにしていくためには、まず「誰よりも得意だ」という領域にいく必要がある。そこがスタート地点。「それが好きな他の人」との「価値競争」のスタートラインに立っている状態だ。

そこから先は「価値が高い方」がそのレースを制する。自分にどのレベルの価値を付けたいのか。その目指すべくレベルが先ほどの例で言うと「大阪駅」だ。

どこに行くかわからない旅ではいけない。なぜならば人は「なりたいものへの努力は苦痛ではない」のだから。

行き先を決めずに東京駅から東海道新幹線に乗って、気分次第で浜松でうなぎパイを食べてもいい。でもそれでは旅行であって趣味の領域から出られない。それは旅好きという趣味を楽しんでいるだけだ。

「好き」をシゴトにしたいなら、確実に大阪駅に行ける方法を考えるべきだ。大阪駅にいくために「何をするのか」を考え、プランニングするべきだ。

そしてそれを考え計画するスキルが「コンセプチュアルスキル」だ。
イチローや大谷翔平がそうだったように、コンセプチュアルスキルは「今の自分」と「なりたい自分」の間にあるギャップを埋めてくれる。

「好き」をシゴトにする考え方はコレだ。

好きなことを仕事にしたいという考え方は、個人的にすごく好きだ。そんな人が増えていったらいいと思うし、やはり「好き」という感情には漲るエネルギーがあると思う。それは生きていくモチベーションにもなるし、どうせする仕事なら「好きなコト」の方がいいに決まってるよね。

でも考え方として、やっぱり「好き」というだけでは仕事にならないことが多い。残念だけどそれが現実だ。だから多くの人は、今やっている仕事を好きになろうと努力している。

「好きなコト」を「得意」というところまで持っていくのは自分の努力なのかもしれない。でもそこまで来てはじめて「仕事としての」スタートライン立てるんだ。

そしてスタートラインに立ったら次は「コンセプチュアルスキル」を磨いてプランニングするべきだ。今の自分と未来の自分の間に「具体的なギャップ」を抽出するんだ。そうすればやることが明確になる。やることが明確になれば自分の成長が毎日実感できるようになる。

今回質問してくれた学生は「ギターで飯を食っていきたい」と言った。「そのためには楽器メーカーとか音楽関係の会社に就職した方がいいと思いますか?」とも聞いてきた。

私は、「ギターでメシを食う」ということをもっとリアルにイメージしてごらん。と言った。プロのギタリストなのか、楽器屋の店長なのか、それともそれ以外の何かなのか。

一番大事なのは「自分がこうなりたい」と思う未来の姿。つまり、目的地だ。自分という個性のセルフイメージも考えなくてはいけないとは思うが、何よりも優先させるのは「こうなりたい」という強い願望だ。

そこに向かっていく時に 人は、趣味の領域からいつの間にか「プロ」の領域に入って行くのかもしれないね。「好き」という感情は、そんな人の行動に大きく影響を与えるほど強いものだし、「それをシゴトにしたい」という願望は、そこに向かう間に起こるであろう多くの弊害に立ち向かうモチベーションにもなる。

「好きなコト」をシゴトにしたい気持ちって、やっぱりすごいと思う。「好きなコト」をシゴトにしたいって思う人が増えていけば、なんだか日本の未来も明るくなっていくような、そんな気がしてくるのだ。


※好きなコトを仕事にしている人は素敵だ。↓


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