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コロナで変わる新卒採用:就職活動はオンライン化していくのか?

コロナの流行によって、今年の新卒採用は大きな転換を迎えることになった。ただでさえ、倫理協定の廃止と東京五輪への対応で追われていた企業人事だが、コロナによって更なる変更を余儀なくされた。その結果、企業規模や産業を問わずに下記リンク先の記事にあるようにウェブ就活が急増した。


既存の就活慣習は地方の学生にとって大きな経済負担を強いていた

特に、地方大学の学生にとってウェブ就活は朗報だ。大企業や有名企業の本社機能は東京にあることが多く、地方本社の企業であっても就職活動は東京で実施されるために、東京に数か月単位で滞在しなくてはならない状況にあった。筆者も大分県内の学生に通っていたため、学生時代は3か月間、東京に滞在して就職活動をしなくてはならなかった。交通費を至急する企業は稀であるため、就職活動による出費は学生にとっても親にとっても大きな経済的な負担となっている。

例えば、勤務する大分大学経済学部の学生の就職先の地域を見てみると地方国立大であっても地元の大分県で就職する学生は決して多くはない(33.9%)ことがわかる。4人に1人は首都圏(24.1%)か福岡(27.0%)で就職しているのが現状だ。当然、採用活動は東京か福岡で行われるため、説明会や面接のたびに福岡や東京に行かなくてはならない。

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それでは、このコロナ騒動で学生は東京や福岡に行かなくても良くなったのかというと、事態はそこまで単純ではない。すべての企業がウェブ対応してくれるのなら良いが、ウェブ対応していない企業があるために学生は依然と変わらない就職活動も併用せざるを得ない状況に追い込まれている。


オンライン採用に前向きな会社ばかりではない

対面での採用説明会を中止している企業は数多くあり、オンライン化への取り組みも珍しいものではなくなってきている。それでも個別の会社説明会がすべてなくなったわけではない。鳥取・島根では、58社を集めた合同企業説明会を3月30日に従来通り対面式で実施している。

大手人材会社が主催する合同説明会は軒並み中止か延期が決まったが、少人数制にして実施している企業もある。また、対面ではない採用活動で本当に良い人材が採用できるのか、懐疑的な企業は多い。時事通信による下記の記事では、「学生の理解が追い付かず、ミスマッチが起きる」(三菱重工業)、「6月以降の選考がスムーズにできない」(りそなホールディングス)という懸念の声が紹介され、採用プロセスをすべてオンライン化することへの不安の声があがっている。


就職活動のオンライン化は学生すべてが喜んでいるわけではない

学生にとっても、オンラインによる就職活動は突然の変化で対応しきれずに困惑している事例が多い。マイナビによる調査では、最終面接まで「ウェブ化して構わない」との回答は16.3%にとどまり、採用プロセスのどこかで対面式の機会を望む声が大多数を占める。

ジェイックによる調査でも、マイナビと同様の結果が出ており、ウェブ化を望まない声が多数派を占めている。個別面接のウェブ化を望む人は23.2%であり、「面接のウェブ化を望まない」(47.2%)が最も多い。

また、学生からは急に採用プロセスのオンライン化が始まったが、企業側の準備とノウハウが不足しており、スムーズにいかなかったという声も聞かれる。


日本のデジタル・テクノロジーの低さが、コロナ流行で浮かび上がる

現状、コロナウイルスの流行によって、企業も学生も混乱している状況にあると言って良いだろう。皆が突然の事態に、できることを模索し、手を打っている状態だ。その中で、ウェブ就活が広まってきているが、企業にとっても学生にとっても課題が多く、まだまだトライ&エラーを繰り返していく必要があるだろう。

しかし、ここで1つ気になる点がある。これまで経験がないので企業も学生も右往左往するのはわかるが、そもそもデジタル社会のこのご時世に、双方ともにテクノロジーに対するリテラシーが低すぎはしないだろうか。

今の学生はデジタルネイティブ世代と言いつつ、その実、パソコンも使えなければ、スマホの機能を使いこなしている人は少数派だ。企業も、これからはデジタル化だといいつつも、組織変革に二の足を踏んでいた。いつまでも書類に判子を押させる文化は残り、次々に出てくる新テクノロジーに対応しきれず、他の先進諸国や新興国と比べた時の労働生産性の低さは差が大きくなる一方である。

PwCによる世界CEO調査で何度も繰り返し警鐘がならされているように、日本も含めた世界の経営者にとって、最大の経営課題の1つは「既存社員のデジタルスキルの低さ」である、デジタル・マインドセットを持ち、デジタルスキルを何かしら習得している人材によって従業員の構成を変えることが、企業の競争力を維持し、持続可能な発展に不可欠であると認識されている。

それにもかかわらず、これからの未来を創る学生も、企業の採用担当もデジタル化への対応について、悠長に構えているのが現実だ。

コロナは世界レベルの災害であり、未曽有の緊急事態だと言えるだろう。しかし、その大きな衝撃は、採用活動のオンライン化という変化の兆しを与えてくれた。この機会に、企業も学生もテクノロジー活用に対する姿勢を改め、世界の経営者が望むデジタル・マインドセットとデジタルスキルを習得するように変化して欲しい。


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