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ニュース発想法で妄想を広げる。

経営コンサルタントだった頃から、ニュースに因んだ少し変わった習慣を持っていた。当時、ニュースサイトのメルマガを幾つも登録していたのだが、日課は、送られてきたメルマガに書かれているニュースのタイトルだけをしっかりと読むことだ。でも本文は基本、クリックしない。タイトルだけ読んでそのニュースの内容を想像するだけだ。メルマガ毎にタイトルは10程度ある。それら全ての本文を読むことなど、到底できなかった。そこで、タイトルだけ読んで、内容を想像するという暴挙にでたのだ。

最初のうちは、タイトルを読んでも内容を想像するのが難しかった。故に、ついついクリックして記事を読むことも多かった。でも、日々繰り返す中で、次第にクリックする記事の本数が明らかに減っていったのだ。AIの学習ではないが、このメルマガの記事では、タイトルの付け方はこうだ。したがって、内容はこんなことまで書いてあるに違いない。そんな想像、いや妄想ができるようになっていったのだ。

次第に、俄然ニュースを読むのが(実際には読んでいないのだが)速くなったのに気づく。少なくとも、タイトルから内容を瞬時に考える力と、世の中で起きている様々なことへの興味が自然と湧いてくるようになった。その後、妄想するのが楽しかったのか、それで十分と思ってしまったのか、本文まで読む記事は1日数記事までに減っていった。すると、当たり前だが問題が生じた。

ふと、妄想した記事の内容は合っているかなと思って、クリックして記事を読んでみると、妄想した内容と本文の内容とはかなりの乖離があることが分かったのだ。「この内容ならこのタイトルではないでしょ」と言いたくなったり、「まさかこの展開とは」と思ったり、色々あった。もちろん、具体度の違いはあれど、妄想通りの内容であることもあった。理由も妄想した。ライターが変わってタイトルの付け方が変化したのか、AIさながら学習データが足りなかったのかは分からなかったが、何かしらの対応が必要だと感じた。

少し考えたが、結論は簡単だった。日々世の中にニュースは溢れる中、全てのニュースに目を通すことなどできない。妄想力が鍛えられて、多様な出来事に興味が湧くようになるのであれば、事実とズレた妄想ニュースが自分の頭の中に溜まっても仕方がない。少しだけ妄想と事実の突き合わせの追加学習を増やすだけで、そのままこの習慣を続けることを選んだのだった。その結果、数年後には妄想力や瞬発力が確実に高まったと自分で感じることが出来るようになった。

しばらくすると、更なる変化が生まれた。自分の中に沢山のアンテナが立つようになっていたのだ。アンテナとは日々抱えている多種多様な仕事における課題に役立つヒントだ。課題と高まった妄想力をつなぎ合わせるための仕組みがいつの間にか生まれていたのだ。どんな仕事の課題でも、本質的なところまで抽象度を上げると、日々送られてくるニュースのタイトルと重なる部分が浮き出てくることに気づいたのだ。

その後は、アンテナの種類や本数にも意識が向くようになった。すると、驚くべきことに、異なるいくつかの仕事の課題と一つのニュースが紐づくことがあった。抽象度を上げて本質を意識すると、それをそれぞれの仕事の課題の具体に落とし込むことでいくらでも応用が効くのだ。分野や領域が離れているからこそ面白いことが生み出せるということも感じるようになった。

その集大成ではないが、今日はメルマガではなく、日経電子版を開いて、ビジネス欄のトップページを見た。瞬間的に目に入ってきた、アンテナに引っかかった記事は上記の4つだ。最初の3つは、「賑わいづくり」に役立ちそうなネタだ、集まりたくなる場の持つ力の因数分解が頭の中に浮かぶ。妄想が広がる。場自体の魅力、その場を彩る道具、必要な利便性、緩急の重要性の具体を想像する。

4つ目のAIアシスタントからは、OpenAIの社長の「道具の使い方」への想いを妄想した。道徳、倫理観が語られているのだろうと感じる。その上で、最初の3つの記事の妄想から生まれた「賑わいの要素」を、様々な分野の事例から探し出すのに使いたいと頭が動く。情報の海の隅々にまで、自らの持つアンテナを向ける作業を、ChatGPTに任せるというアイディアにつながるのだ。

どんなやり方でもいい。ニュースを能動的に活用する癖、自らの能力を高めるための道具として使う癖をつけて欲しいと思う。日々それを続ければ大きな力になる。創造生産性を高める道具として、誰もがニュースを使い倒す。こんな世界を来るのが待ち遠しい。次の5年、自分のニュースとの向き合い方がどう進化させられるか、これもとても楽しみだ。

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