TLTROのクレジット市場への影響

条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)が欧州で再設定となった。

クレジット市場への影響について考えてみると、まずTLTROは貸出目的の融資に低金利を適用するものであり、それ自体は銀行の利ざやに直接影響を与えないが、実体経済の信用アベイラビリティを増すという間接効果がある。さらに、好条件のファンディングによりキャリー取得意欲が高まるため、現在のようにQEが縮小過程にある中ではとりわけ周辺国のソブリンスプレッドに縮小効果となろう。

クレジット市場は事前にTLTROの導入を織り込んでおり、ここ数週間で金融機関のスプレッドは非金融機関に対してタイト化してきた。過去のTLTROの経験則から予想できるのは、導入発表後はそのタイト化した水準を中心に狭いレンジで推移する傾向がある。次に、イタリアの銀行のスプレッドはユーロ圏の平均に対して発表にかけて大きくタイト化し、その後はタイトな水準でレンジ内推移となりやすい。

市場にすでに織り込み済みであることに加え、過去のTLTRO実施時と比較して銀行全般の資金調達環境は危機的ではないし、様々な資本規制が導入された過程で銀行のバランスシートは改善している。この意味で、導入発表後にスプレッドの縮小傾向が続くことは考えにくい。それでも、以下のような持続的なスプレッド安定効果は期待できるだろう。
1) ECBの追加金融緩和を好感し、社債スプレッド全般のボラティリティが低下する。
2) TLTROを介した資金供給を受けて債券発行の必要性が低下するため、とりわけシニア銀行債のスプレッドには縮小効果となる。
3) 本来の借入コストが高く、かつ自国のソブリンスプレッドの影響を受けやすい銀行ほど好影響を享受するわけだが、この意味でイタリアの中小銀行の借入条件は大きく改善するだろう。さらに、調達資金の一部をスプレッドが高水準な自国国債に投資すれば、利ざやも拡大する。
こうした要素からすると、特にマーケットでは売られやすいイタリアの銀行全般のスプレッドは目先において大きく拡大するリスクはないと見ている。


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