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ガス共同調達入札第一弾を踏まえた欧州エネルギーの考え方

エネルギーを必要量確保するのはどの国にとっても重要命題である。天然ガス価格は欧州でも乱高下したことがこの記事からもわかる。

そこで欧州では協調的に供給を安定させるべく、ガスの共同調達入札を実施することを決め、5月16日に入札第一弾が実行された。EUによる共同調達・需要集約プラットフォーム「アグリゲートEU」による入札第一弾で、合計109億㎥のガス需給がマッチングされたことが発表になった。

EUエネルギー・プラットフォームの一環として、昨年4月に提唱されたこのツールは、加盟国がエネルギー確保のために躍起になるのを防ぐため、EUの行動や域外の上流サプライヤーとの交渉を調整することを目指したもの。世界最大級のガス消費者としてEUがまとまることで域内の全消費者にとって有利な条件を引き出すのにも活用できるものである。

しかし、この入札によって、システムが有効に働いたと言えるかといえば、評価が難しい。すべての需要がマッチングされたわけではない上、パイプラインによる供給が大部分の80%を占め、LNGは20%のみ。さらに、マッチングされた量にはEU非加盟国の需要も一部含まれ、目標に対する需要の不足はさらに大きいことになる。またこれが最終的に価格や商業条件にどう反映されるかもわかっていない、など不透明要素が多い。そして何より、現時点のようなLNGが余り気味の時には、買い手が有利に決まっている。

このシステムの価値が出るかどうかは、ガス需給がはるかにひっ迫する冬に見極める必要があると考えられる。船舶輸送される現物のLNGを巡り、欧州がアジアの競争相手との本格的な競争に晒される時期に相場より有利な結果が得られることを成功と定義するべきであろう。


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