入社してすぐ辞めてしまう社員の教えは◎◎レポートよりも役に立つ?
こんにちは。Funleash志水です。いつもNoteを読んでくださりありがとうございます!
最近、組織や人に関連するニュースが増えましたね。
先般、経産省が出した発表した報告書「人材版伊藤レポート」や「人的資本の開示」といった話題がメディアで頻繁に取り上げられるようになりました。職業柄、こういったレポートや調査結果は目を通しますが、どれだけの効果があるのかなと思いながら観察しています。
というのは20年近くこの類の話題は出ては消えていて特に目新しいことはないのです。いまだ実現できていないのは、政府や識者が主導で提唱している内容と、現場の状況との乖離が大きすぎるからです。中には困惑してる会社もあるようです。
そういえば、前政権において、2020年までに「女性管理職を30%達成」と意気揚々に掲げてかなり話題になりました。これも多くの組織であまり改善がないまま、いつの間にかこっそり2030年に先送り。
大きな目標を掲げるのは素晴らしいことです。しかし、その後どうなったか追跡するとか、なぜ実現できないのか実態調査と丁寧な振り返りをすることはもっと重要。目標を達成しないで先延ばしすることに慣れてしまってないでしょうか。
さて、紙面でよく見かける人的資本とは「教育や訓練、最適な配置を通じてスキルや能力など人材の持つ価値を最大化し、企業価値を高める」ことです。人材の持つ能力を最大限引き出していくことを意味しています。
気をつけたいのは、株主からの投資を拡大するため人的資源を数値化することばかりに気を取られていると、目的が手段化して本来のあるべき姿がぶれてしまう。会社でも時々ありますよね。
働き手がやりがいを感じ自分の組織に貢献したいと思えるようになるにはどんな組織にするべきなのか?
レポートを読むことに時間を費やすよりも、「能動的に行動」する。身近に「人的資本の向上」につながるトピックがごろごろ転がっているので探してみましょう。
例えばこの記事!組織をよくするためのヒントが盛りだくさんで、示唆に富む内容です。
記事にでてきたAさんは入社した会社に違和感を感じてすぐに退職を決断しました。
実態はきちんと調査しないとわかりませんが、短い発言だけでも以下のようなことが想像できます。
・企業が説明会の時に仕事内容や期待値などについて明確に説明していない
・新入社員を受け入れる職場の体制が整備されていない
・社員のオンボーディング・プラン(組織に新たに加わった人材に職場に慣れてもらうことで定着&戦力化を促進する取り組み)が用意されてない
・高圧的でパワハラに近い言動をとる上司がたくさん居座っている
「今の若いもんは辛抱が足りない」
「すぐ転職するなんて非常識すぎる」などと判断してはいけません。昭和の新入社員とは確実に違う世代であるということを認識する必要があります。
2021年の調査(公益社団法人全国求人情報協会)によると、入社後約半年で転職志向を持つあるいは離職したと回答した人が4割に上り、20年に比べて8ポイント増加しているとあります。
「自分に合わなければ辞める」これが今の若い世代の価値観なのかもしれません。
そして彼らは10年すれば企業の大事な「人的資本」のコアとなる若手人材なのです。このような価値観を持つ人材がマジョリティになる日がやってきます。そこは考えておかないといけないです。
記事の中では「ミスマッチ」とされています。でもそれで終わるのはもったいない。これ、日本企業が抱えている課題が浮き彫りになっていますよね。
話がちょっとそれますが、以前、同じような課題に私も直面しました。
誰もが知っている有名な会社でしたので採用には全く困らないほど「惹きつける」ブランドがありました。
けれども蓋を開けてみると新卒&中途採用者が1年以内に半分強。3年以内でほぼ全員が辞めてしまうことがわかりました。あまりの退職率に最初は呆然としましたが、退職者の声をききたいと考え、退職する社員全員とその職場の上司&同僚から徹底的にヒアリングを行い「課題」を抽出しました。
退職する社員からは、耳を防ぎたくなる、ショックなエピソードがたくさん出てきました。単なる不満はスルーでも建設的な意見がほとんど。報酬など人事制度、キャリアの機会、社内コミュニケーション、経営の方針、多岐にわたる内容で圧倒されました。そして、「辞める社員の率直な声」は、その後に策定した人事戦略および導入した数々のオリジナルの人事施策のベースになりました。
退職者続出のブラック企業から選ばれる企業へ。
愚直に取り組み続け、その後数年で退職率は改善し、以降、エンゲージメント・報酬の水準も人材市場において上位を維持してます。また、働き甲斐のある職場の実現は、経営や人事だけではなく全員の責任だと言い続けたことで、組織風土大きく変わりました。
率直に苦言を呈してくれた社員のおかげです。
さて、もう一つの記事を見てみましょう。
記事によると、この企業では「不正が惰性で続く」実態が長年続いていたそうです。
14工場ではいまだ調査が行われており、不正が疑われる2303件のうち2割弱の370件で完了していないとのこと。これは株主、社員、顧客も離れていってしまうほどのインパクトです。信頼を取り戻すためにはかなりのリソースが必要となります。
今後の対策として、「中間管理職の権限分散や適正な管理基準を策定するほか、社内人事ローテーションを拡大するなど組織風土を刷新する」とありますが、、、それで本当に変わるのでしょうか?
権限や管理基準を策定してもローテーションを拡大しても「組織風土」が変わらない限り、これからも不正は続くと思います。
こういう問題が起きたときに弁護士や外部調査委員会などが参画して全社的な調査が行われるわけですが、その前にやれることがあるんですよね。
そうだ、退職者に聞いてみよう!
変化してきているとはいえ、いまだ終身雇用の価値観が根強い伝統的な日本企業では人材が流動的な外資と比較すると、退職者は圧倒的に少ないです。
それでも退職を決断した人たちにアンケートを取るとか、話を聞いてみることをオススメします。組織で働き続ける社員は組織内での処遇を恐れて口を閉ざすかもしれませんが、退職者ならば、「なぜ組織を離れる決断をしたのか教えてくれる可能性が高い。「組織で起こっている実態」が明らかになります。
その中でこれは問題とピンときたら、退職者が属している部署やチームに焦点を当てて徹底的にヒアリングする。小さい問題であっも丁寧にひろってゆきます。そこでわかった課題について具体的なアクションを策して全社に広げていく。深刻化するまえに問題の芽をつむことができます。
メンバーシップ型の日本企業には、組織を離れる人を裏切者扱いしたり、悪者にする傾向があります。けれども視点を変えてみる。退職者の声から組織文化の改革につなげられるヒントが得られるはずです。改善できたら、辞めた人たちが戻ってきてくれる可能性があります。
人材の持つ価値を最大限にするのであれば、能力やスキルを発揮するために「阻害となっている要因」を徹底的に排除する覚悟が経営や人事には必要です。
今いる人材を囲い込むのではなく、選ばれる会社へ。
株主や顧客に選ばれる前に・・・組織で働いている社員が胸を張っていえる会社へ。
「ここで働くことが私の誇りです。自分の能力が最大限に生かされるからです」
中にいる社員をケアすることも大切。もっと視点を広げて、これから入ってくる未来の社員も、辞めてゆく社員もその声を拾って組織風土や制度を進化させる。
これが、人的資本を最大化するための一歩ではないでしょうか。