2021年を象徴する3つの大きな変化
これが2021年最後のCOMEMOの投稿になる。せっかくなので、この1年を振り返って、私的に感じた3つの大きな変化について書き留めておきたいと思う。
オンラインがビジネスのデフォルトに
1つ目は、ビジネスにおけるオンラインの定着である。今ではスタートアップにとどまらず、ビジネスパーソンの中でZoomに代表されるオンラインミーティングツールの使い方を全く知らない人や、こうしたツールを使ったことがないという人は、かなり少数派になったのではないだろうか。
これが新型コロナウイルスの流行が始まる前のわずか2年前であれば、全く一般的ではなかった。当時、長期出張時に間が空いてしまうのでオンラインでミーティングすることをある大企業のお客様に申し出たところ、「川端さんが出張から帰ってくるの待ちます」と言われたのを印象的に覚えている。状況の変化が早い案件であり、またそう言ったのはおそらく40歳前後のまだ若い人であるにも関わらずそのような反応だった。今であればそんなことはないだろう。
そして現在では、オンライン会議はもはやリアルな会議と並ぶ1つのオプションではなく、オンラインでのミーティングを行うことが原則・基本で、わざわざ移動時間をかけたり感染の危険性を冒してでも対面したり現地・現物を見る必要があるものについてだけ、リアルに足を運んで人に会ったりモノを見たりするという感覚に変わってきていることを感じる。特に、オンラインがすっかり当たり前になり馴染んでいる若いビジネスパーソンについてはそういう意識の変化があり、それは新型コロナウイルスの流行がおさまっても変わらない不可逆なものと考えるべきだろう。
この点で、早くコロナの感染が収束しオンラインの会議をしなくて済むようになる日を心待ちにしている、主に一定以上の年齢・世代の人がいるとすれば、そこに大きな意識のギャップが存在していることは踏まえておかなければならない。
こうして、リアルに会うことの価値はこれまで以上に希少で重要なものとなり、一方でオンラインはネットにさえ繋がれば場所を問わずどこからでも参加できるため、在宅勤務はもちろんであるが、自宅を飛び出てワーケーションといった方法も、それが許される人にとっては選択肢になった1年であった。これが将来、感染の流行がおさまり、海外に行くこともある程度現実的になれば、時差の問題はあるものの海外からワーケーションするといった動きも出てくるのかもしれない。
新興企業(スタートアップ)の大躍進
2つ目は、新興企業(広義の意味でのスタートアップ)の躍進である。特に象徴的であったのは、新型コロナウイルスワクチンを創り出し世界の感染抑制に貢献したビオンテックそしてモデルナである。両社は大手製薬企業と組んだか組まなかったかという点で好対照ながら、製薬大手でも時間を要し簡単ではない創薬の分野でスタートアップが目覚ましい成果を出した点は特筆すべきことだ。
また宇宙分野でのスタートアップの躍進も近年目覚ましかったが、今年は有人の宇宙旅行がヴァージンギャラクティックとブルーオリジンによって実現された年になった。くしくも両社はリチャード・ブランソン氏とジェフ・ベゾス氏というカリスマ経営者が率いる振興企業という共通点がある。
創薬と有人宇宙飛行という、これまで大企業であっても取り組むことが必ずしも容易ではなかったジャンルに新興企業が食い込んで大きな成果を出した点、そして両分野とも1社ではなく2社以上がこうした実績を残し、しかも新型コロナウイルス流行下という困難な時期であった点で、2021年はスタートアップが大きく躍進した年と言ってよいのではないだろうか。もはや、伝統的な大企業にしかできないことはなくなった、と言ってもよいのかもしれない。
こうした流れに呼応してか、日本でも、引き続き大企業による CVC の設立が続いており、大企業が何らかの形でスタートアップ躍進の成果を自社に取り込もうという動きが継続している表れと思う。また、柔軟な働き方の広がりとも相まって大企業からスタートアップに人材を出向させる(レンタル移籍する)動きも見られ、大企業のスタートアップに対する関心が一層高まった1年だったと言えるのではないか。
ビジネスルール・世界秩序の大変動
最後の3つ目は、ビジネスルールそして世界秩序の大きな変化である。ESG やCOP26などで取り上げられた課題がビジネスにおいて避けて通れない重要性を持つことがはっきりした。脱炭素化や自動車の EV 化といった、日本国内ではなかなか積極的に進めにくかったテーマについて、否応なく対応を迫られる状況になった。こうしたことは単に民間企業のビジネスにとどまらず、国家のエネルギー政策など国家戦略にすら影響を与える大きな変化である。
そして米中対立が決定的になり、コロナ流行による物流の停滞から、あらゆるモノの生産と物流が滞る事態が発生している。半導体不足がその象徴であり、最近であればマクドナルドのポテトが思うように輸入できず販売を制限したことも話題になった。
今後こうした事態が続くのであれば、国力の弱い国は必要なものを必要な時に調達できないという状況に局面することが考えられる。日本がそうした国になるかどうかは定かではないが、これまでモノは潤沢にあり店の商品棚に空いているスペースはなく、必要な時に必要なものをいつでも買えるというのが私たち日本人の一般的な認識であったと思うが、昨年のマスク不足や今年の半導体不足に伴うエレクトロニクス製品の供給不足で、価格上昇が引き起こされたことに象徴されるように、もはや欲しいモノ・必要なモノがいつでも好きな時に、しかも安価で手に入る時代は終わりを告げたのかもしれない。
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本年もお読みいただききましてありがとうございました。来年も皆様に、ヒントになったり役に立ったりする寄稿が出来ればと思っています。良いお年をお迎えください。