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コロナ失業者を救済する従業員の一時仲介ビジネス

 コロナ感染拡大の影響により、ホテルや飲食業界では休業が相次ぎ、失業者が急増する一方で、働き手が不足している業界もある。その筆頭に挙げられるのが食品や日用品を扱うスーパーマーケット、医薬品やヘルスケア用品を扱うドラッグストアー、それにeコマースサイトなどだが、これらの業界では、失業者を一時的に大量雇用する動きが出てきている。

ドイツ本社で、世界に9000店舗を展開するスーパーマーケットチェーン「Aldi(アルディ)」では、英国で宿泊施設とミシュランの星も獲得しているレストランの経営をする「Hampton Manor(ハンプトンマナー)」の従業員30名を一時採用することを発表している。

Hampton Manorは1986年の創業で、家族経営から飲食業を成長させてきたが、今年年はコロナウイルスの深刻な影響を受けて、このまま経営を続けても毎月15万ポンド(約2000万円)の赤字を出す状態にあり、従業員を解雇するしかなかったが、スーパーチェーンのAldiがそれを救済した形だ。Hampton Manorは、ミシュランが星を与えたこともあり、従業員の接客レベルは高く、コロナ特需によって人手が不足しているAldiにとっても、優良な人材を一度に大量採用できるメリットがある。

同様の一時雇用制度は、他のスーパーチェーンでも導入しはじめている。ウォルマートでも、コロナの感染拡大以降、食料品や生活必需品の売り上げが急上昇していることから、米国内の各店舗や物流センターに配属する従業員を15万人増やすことを、2020年3月19日に発表している。平常時には、新規採用のプロセスとして2週間程度の時間をかけているが、現在は最短1日で人材選考をしており、1日あたり5000人のペースで従業員を増やしている。この採用活動は5月中旬まで行われる計画だ。

加えて、既存の従業員に対しても、感染リスクが高まる中でハードワークを続けることへの謝礼として、正社員は300ドル、パートタイム社員は150ドルの臨時ボーナスを支給することを決定している。一人あたりの金額は高いものではないが、ウォルマート全体では総額で5億5000万ドル(約600億円)の賞与資金になる。

また、アマゾンでもeコマースサイトの注文増加により、米国内の物流センターで働ける、フルタイムとパートタイムの人材採用を10万人の規模で行っている。 時給は通常よりも2ドル上乗せされて、4月末までは17ドルの設定。さらに時間外の労働については、時間給の2倍が支給される。これらアマゾンの仕事は、店舗やホテルなどの職場をレイオフされた失業者の受け皿になっている。

日本でも、接客サービス業を中心に職を失う人が増えている一方で、ドラッグストアーや医療関連施設にように、パンデミックによって人手が足りない業界もある。しかし、ウォルマートやアマゾンのように独自のルートで人材採用を行える事業者は少なく、採用選考にかけられる時間も無いため、一時雇用の仲介を行える人材サービスに対する潜在需要は高まっている。

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