週休3日は実現できるのか? 成功事例と残る課題を考察する
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
週休3日と聞いて、何を思うでしょうか? 土日に加えてもう1日休めるとすると、くっつけて毎週3連休だなぁとか、水曜日を休みにすれば勤務中は常に週初めと週終わりの気分になるなぁとか、色々と妄想が広がります。そもそもそんな夢物語よりも現実をみろ、という声もあるかもしれません。
いまや当たり前になっている土日休みの週休2日制ですが、その歴史は意外と浅いものです。欧米では戦後まもなく普及したものの、高度経済成長期の日本では週48時間・6日勤務が標準でした。1960年に松下電器産業(現パナソニックホールディングス)の松下幸之助氏が導入を表明し、その5年後に実現しました。当時は「給与も減らさず週休2日にするなんて無理だ」との声が大多数であったようですが、業務効率化に取り組んで実現させました。ちなみに、松下電器産業が日本初というのは事実ではなく、大手企業としては初めての事例でした。
現在は1960年代と比較すれば情報技術が格段に発達し、生成AIの登場によりさらなる飛躍を遂げようとしています。また、今後急速に労働人口が減少していく中で、担い手とのマッチングに高めて、意欲あるなるべく多くの人々に労働参画してもらうことは社会的命題とも言えます。
国会対応などで深夜におよぶ長時間労働が常態化している霞が関でも、人材離れが深刻化しています。多様な働き方を用意することで、少しでも「霞が関離れ」を防ごうとしています。
この件に関しては、週休3日制が人材離れを防げるかどうか疑問です。記事中によると「霞が関の長時間労働の要因は国会対応が大きい。(略)22年の臨時国会会期中、各省庁が答弁案をつくり終えた時刻は平均して当日の午前3時ごろ」と書かれています。22年の臨時国会は69日であり、その平均が午前3時というのは相当なブラックな職場と言えるでしょう。コンサルティング会社などでも深夜長時間労働が問題になりますが、クライアントからの要求を拒否できない構造に原因があります。ここでは国会議員からの質問通告が遅いことなどが根本原因ですので、そこに手を付けない限りは大きな変化は望めないと思います。逆に週休3日にすることで1日あたりの勤務時間がさらに増えてしまう恐れすらあるかもしれません。
民間企業においては、いくつか成功事例も出てきています。前述のパナソニックホールディングスも試験導入を始めました。ここでは、長時間労働になりがちであるコンサル業界大手のアクセンチュアの事例を紹介します。
業務の効率化とルールの明文化は、多様な働き方を導入する際には不可欠です。特に管理職クラスへの教育はもちろんのこと、同僚への理解を会社ぐるみで進める必要があります。この事例では労働時間が減少した分の基本給が減るパターンですが、週休3日制の導入には様々なパターンがあります。すでに試験導入をしている企業をそれぞれ見てみましょう。
多いのは、週トータルの労働時間は維持したまま、勤務日の労働時間を調整するパターン。それにより、基本給自体は維持することができるようにしています。日本マイクロソフトの事例では、生産性を高めることで労働時間の削減と給与の維持を目指しています。
週休3日制に限らない話ですが、多様な働き方を導入することで新たな課題も出てきます。チームメンバーが同時に職場にいる時間が減るとか、担当者が不在になったときの対応とか、情報共有をタイムリーにもれなく行うにはどうするか等々です。これらは奇しくもリモートワーク導入時に噴出した課題であるため、すでに対応できている企業も多いのではないでしょうか。
つまり、ルールを明文化する、情報はすべてクラウド上に共有する、チャットツールなどの非同期コミュニケーションを整える、重要な会議は全員が揃うコアタイム中に設定するなどです。
また、別の論点としては非正規雇用の回復の遅れをどうするのかというものがあります。
つまり、時間的制約のある人に合った労働環境づくりが進んでおらず、フルタイムワーカーに比べてマッチングがうまくいってないことを示しています。この観点でみても、多様な働き方を進めることが今後の日本の労働市場にとって重要だと考えています。
みなさまからいただく「スキ」がものすごく嬉しいので、記事を読んで「へー」と思ったらぜひポチっとしていただけると飛び上がって喜びます!
タイトル画像提供:years / PIXTA(ピクスタ)