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AIで「仕事がなくなる」ではなく、仕事そのものが変化する

ウェブデザインの仕事が登場してきたのは、1990年代の終わりごろです。1995年にMicrosoft Windows 95が発売され、インターネットへの接続機能がパソコンのOSに初めて標準搭載されました。ここから「ウェブを見る」という文化がスタートし、90年代末になると、公式サイトを開設する企業がだんだんと増えていき、これに合わせてウェブデザインの仕事も増えていったという流れです。

2000年ごろのウェブサイトは単なる「紙」の置き換えだった

そのころのウェブは、紙の発行物をウェブに置き換えたようなものがほとんどでした。たとえば企業の公式サイトだったら、トップページがあり、社長メッセージと企業概要、沿革などがあって、商品やサービスのカタログがある。要するに紙の「会社案内」をそのまま移し替えたようなものでした。

しかしウェブデザインは以後の20年余でたいへんな進化を遂げ、ウェブサイトの外観をデザインするだけでなく、いかにしてユーザーを惹きつけ、滞在時間を伸ばし、クライアントの間で良好なエンゲージメント(つながり)を作るのかという方向へと舵を切ってきています。

もはやデザインの本質はUXそのものである

究極にはユーザー体験(UX)そのものをデザインすることがウェブデザインである、という境地に入ってきていると言えるでしょう。そのためにはECサイトだけでなく、商品そのものもデザインの一環として組み込まれ、さらにはその企業が消費者に対して描く物語(ナラティブ)でさえもデザインの範疇に入ってくるのです。

サイトの見た目はもはやデザインのごく一部でしかありません。このあたりが紙の時代に育ったグラフィックデザイナー出身者には理解されないことが多い、というのは業界の人からよく聞く話です。もはや「デザイン」「デザイナー」の意味がまったく変わってしまっていることに、いまだ気づいていない人も多いということなのです。

介護士さんの仕事はロボットに奪われるか

介護士さんの仕事で考えてみましょう。介護というと入浴や食事、排せつなどをサポートする身体介護の業務をイメージする人は多いと思います。たいへん大切ではあるけれども、重労働です。なのでこの身体介護はい
ずれロボットによって代替されるようになるのではないかとも言われています。「そうなると介護士の仕事はなくなるのでは」と考える人もいるでしょう。

しかしロボットが身体介護を代替するようになったとしても、介護を受けているおばあちゃんの背中をさすってあげて「気持ちいいね」「大丈夫だよ」とコミュニケーションをとるヒトの介護士さんの役割は、なくならないかもしれません。人間関係を円滑にするコミュニケーション能力は、AIとロボットの時代になってもヒトの重要な仕事として残っていくはずです。

そうなると未来にも、介護士さんという仕事はなくなりはしないでしょう。しかしその業務の内容は、いまとはだいぶ変わっている可能性がある。

テクノロジーの進化で仕事の内容は大きく変わる

テクノロジーの進化で、さまざまな職業はそれに合わせてどんどん進化していく。なくならないけれども、仕事の内容そのものは大きく変化していくのです。自分がいま就いている職業が、雑誌の特集で「20年後にのこる職業」に掲載されていたからといって、安心してはいけません。逆に「20年後に消える職業」と言われても、その職業がなくなるとは限らないのです。

だから大事なのはこのような「20年後に…」情報に一喜一憂することではなく、人間にしかできない自分の業務とは何か。それをしっかり考え続けていくことなのではないかと思います。


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