ジャーナリズムの世界でブロックチェーン、コミュニティが果たす役割
本日付のプレスリリース、「ブロックチェーンベンチャーの株式会社Gaudiy、毎日新聞社とブロックチェーンに関する共同研究を開始」はとても興味を引くものでした。
プレスリリースの主な内容としては「毎日新聞 Blockchain Lab.(MBL)」の発足であり、MBLが今後『ブロックチェーン技術により情報の信頼基盤を築き、ジャーナリズムの健全な発展と公正な社会のバランスに寄与することを目指す』と書かれています。
○背景:個がつながる社会への対応
〜これら情報革命の中では、テレビや新聞といった「伝統メディア」が人々に参考とされる機会が減るだけでなく、時代と共に培われてきたコンテンツへの倫理観すらも曖昧なものとなりつつあり、取材・発信の仕方、権利関係などを転換する発想が求められています。
○MBLの目指す姿
一方、第三者を介さずに信頼ある価値取引を可能にするブロックチェーン技術が普及し支えられることで、個人が収集・発信する情報そのものの信頼性がさらに加速する社会が予想されます。不特定多数の個人が、自分が信頼・共感したコンテンツを正当に評価して報酬(インセンティブ)を与え合うことが容易になる経済社会を想定すると同時に、変わりうるメディア倫理の担保としてブロックチェーン技術がもたらす可能性は高いと考えます。
(プレスリリースより)
デジタルメディアは現在大きな曲がり角を迎えていることは間違いはないと思いますが、毎日新聞という145年の歴史と伝統を持つ伝統的メディアがこうした問いに真正面から取り組む、ということに正直驚きを隠せませんでした。またリリース文の中で『伝統メディア」が人々に参考とされる機会が減るだけでなく』というような文言がさらっと書かれていることにも重ねて驚きです。
今までジャーナリズム分野でのブロックチェーン活用というとアメリカの「CIVIL」や「po.et」という事例が紹介されることが多く、ジャーナリストの書いた記事が政権や何らかの圧力により改ざん、削除されることなくブロックチェーン上に記録されることなどが強調されるイメージが強かったように思います。
「Steemit」や「ALIS」のような、ブログ、SNS的なパブリッシングプラットフォームの場合は、「トークンエコノミー」の考え方やしくみを導入することで書き手や読み手を含むコミュニティ内での信頼を担保としたエコシステム作りの可能性が語られています。
もちろん「ニュースピックス」、そしてこの 「COMEMO」、更には日経ビジネスが昨年6月にスタートした「日経ビジネスRaise」なども含め、読者を含めたコミュニティとの相互のやり取りによりメディアの質を高め、ビジネスの持続可能性も高めていく取り組みは、近年静かに広がっているようです。
海外に目を向ければ「サブスクリプション」というキーワードをきっかけにメンバーからの購読料を中心としたビジネスモデルを築きながら強固な読者・会員コミュニティを活性化させる取り組みにも大きな注目が集まっています(ニューヨーク・タイムズ(米)、デ・コレスポンデント(蘭)、メディアパルト(仏)、ガーディアン(英))。読者からの声を紙面に反映させるような取り組みもこれらの先端事例では次第に広がっているようです。
毎日新聞が今後読者からのコメントや意見などを積極的に取り入れつつ、そうした読者に対してトークン、或いは投げ銭、或いは評価ポイントが付与されるような仕組みが生まれるのか、とても興味深く今後の展開に注目したいと思います。
月刊誌FACTAなどでは毎日新聞の厳しい経営状況も指摘されていますが、こうした新しい取り組みに果敢に取り組むことで伝統メディアならではの取材力、信頼が新しい形で発展していくことを期待します。
毎日新聞が今回パートナーとして手を組まれている株式会社Gaudiyの方と思われる方が運営されている、コミュニティ・マーケティングについての noteにもいろいろな知見が散りばめられています。業界、役職、世代を超えて新しいイノベーションが生まれていくためのアイディアとして、「コミュニティ」に対しての視点にもとても共感します。