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いま、現場から伝えたい3つの警告

 東京都は29日、新型コロナウイルスの感染者が新たに3865人確認されたと発表した。前日に続き3千人を上回り、3日連続で過去最多を更新した。直近1週間平均の新規感染者は約2224人で、前週(約1373人)の161.9%だった。

 これまでの感染拡大の時も忙しかったことはもちろんですが、今回に関しては特に今週に入ってから発熱患者・検査陽性患者・検査陽性率・変異型(L452R)検出率が一気に増えたことで現場は混沌としています。しかも当院の医師は私1人であり、通常診療の患者さんや海外渡航者の方も来られ、昼休みには職域接種をしているので、診療開始から終了までの9時間は休みがありません。このような中でいま危惧している3つの現状を緊急でお知らせします。

① 検査陽性率の急上昇

 東京都の検査陽性率は10%を超え、その増加率が急激です。当院でも今週に入ってから公費で実施したPCR検査のほぼ半数が陽性です。これは全体的な検査数が追いついていないことが示唆され、水面下でさらに多くの陽性者がいる可能性があります。また患者さんからの話を聞くと行政による濃厚接触者の検査や追跡も十分ではない印象です。

② 中等症・軽症者の待機患者の急増

 ワクチン接種の効果と考えられる65歳以上の患者数・重症者数減少の一方で、50歳代以下の患者急増によりすぐに入院を必要としない中等症・軽症者が自宅待機を余儀なくされています。状態が悪化しないまま回復に向かえば良いのですが、実例として2日前に私が新型コロナと診断した50歳代の女性が咳嗽が強くなったので心配になり東京都に連絡したところ「陽性者なので医療機関の受診は控えるように」と言われたそうで、さらに不安になり私のところに連絡してきました。近所だったので感染対策を指示して来院していただき診察しましたが、肺炎の可能性があったので、保健所に入院の必要性を強くお願いして入院可能な病院を見つけてもらいました。東京都の指示に従っていたら自宅で悪化して重症化した可能性も否めません。さらに開業医の中には検査だけは積極的にするにもかかわらず、結果が陽性となった後は保健所に丸投げで自ら管理をしようとしない院長もおられるので、路頭に迷った患者さんが私のところに相談してくることも少なくはありません。この状況は1年以上前から何ら変わっておらず、本来であれば地域の医師会が協力しあって対応するものであるにもかかわらずいまだ全く進展はありません。その旗振り役をするのは本来、日本医師会であるはずですが、具体的な解決策も打ち出さずに定例の記者会見で国民にお願いばかりするだけで、現在もその変化が全くみられない体制は政府以上に罪深いと考えざるを得ません。

③デルタ型変異の急増

 当院では今月中旬くらいまでは陽性者の半数くらいで確認されたL452R変異ですが、今週陽性になった方はすべて検出されています。東京都が公表しているデルタ型の割合はあくまで届けられているもののみであり、外注検査の場合ではPCRまたは抗原検査陽性で新型コロナとして届けた段階では多くが検査中であり、変異型かどうかが判明するのは数日後ですので、そのあとに自ら届け出ない限りカウントされません。また検査のみ大量に行っている医療機関では当然ながら変異型の検査はしていません。従って現場の印象からみれば現在はほぼL452R変異型に置き換わっていると推測されます。従来型よりも感染しやすいと言われていますが、確かに短時間・少人数での飲食機会でも感染したと推測される方や、家族だけの飲食なのに周りに客がたくさんいた場所に行ったことで感染したと推測される方もおられます。

 これらはいずれも先週の連休明けから短期間で顕著にみられる現象であり、緊急事態宣言中であるにもかかわらず行われているオリンピックがまだ10日前後続くことを考えれば、人流の抑制などに国民の協力を得ることはきわめて難しく、抑止力はほとんどないものと思われます。さらに2週間後のお盆の時期には全国的に人が動くことが予想されることからいま以上に全国的に陽性者が拡散し、日本国内でこれまでにない蔓延状態になることは煽りでもなく必然と思われます。現場と政府とのきわめて高い温度差は否めませんが、国民ひとり一人もこの現状をしっかりとご理解いただきたいと思います。また感染拡大を抑える手段として、個人防衛だけではなく社会防衛としてのワクチン接種の重要性も正しく理解していただきたいと思います。

*あまりにもカオスな1週間でしたので本日(金曜日)の感染者数で驚く前に未明に急いで書き上げました。

#日経COMEMO #NIKKEI

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