値下げを目指す日本企業、値上げに動く外資企業
日本のアマゾンプライムが値上げを発表したことで、今朝のTwitterの私のタイムラインが賑わっていた。米国での価格に比べればまだ半額以下といったところだが、物価水準やアマゾンの手がけるサービスのバリエーションの差、そしてAmazonと競合の関係を考えると、こんなものだろうかとも思うが、1,000円の値上げは率にして25%以上であり、デフレ傾向の強い日本においてこの値上げはかなり大幅である、といっても良いだろう。日本のプライム会員の数は非公表だというが(世界の総数では昨年時点で1億人を突破している)、日本で約4,000万人いると言われるアマゾンユーザーの1割がプライム会員だと仮定すると、単純計算で40億円ほどの増収になる。仮にこの値上げでプライム会員をやめるユーザーが10%いたとしても、増収は25億円近い。しかも、この値上げ自体に要するコストはほぼゼロである。
一方で、仕事柄、さまざま、とまでいうと大げさだが、直接間接にそれなりの数の日本企業の商品やサービスの価格設定と、その交渉などの場面を見させていただいているのだけれど、価格をどう上げていくか、と考えているケースはごく稀で、ほとんどが、どう安くするか値切るか、ということに腐心している。それも、よく検討した上で値下げあるいは値切りの判断になった、というよりも、脊髄反射的に、息を吸うように無意識のうちに安く安く、という志向が働いているように感じられる。その値下げや値切りがどのようなインパクトをもたらすか、ということまで計算した上での意思決定であると感じることは、ほとんどない。
企業だけでなく、政府が主導して特定業種に値下げ圧力をかけるようなお国柄なのだから、民間企業がそうであるのも無理はないのかもしれない。
無意識にそうしている、ということは、この国の「空気」がそうだということになり、これに抵抗することは並大抵のことではない。そして、安くするということは分かりやすく、受け入れやすいから、なおさらその「空気」が広がっていく。
これは、取引先に値下げ交渉をしながら自分の給料が上がらないとぼやいている矛盾に気がついていない、ということでもある。値下げを要求するのが仕事、という人もいるだろう。値下げの仕事をしている人の人件費と、彼らが得た値引額とどちらが多いのだろう、と思うこともある。値下げは交渉に時間を要するのが普通なわけだから、そのロスも含めて考えれば、日本の生産性を上げることにマイナスの影響こそあれ、プラスにはなっていないのではないか。
そうやって、多大な時間と労力を使って安く提供される日本企業のサービスや商品で浮いた家計のお金が、アマゾンなどの値上げに消えていくのだとしたら、冷静に考えると、ちょっと滑稽な感じがした。
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