ブランドの思想を店舗に反映するための“一点豪華主義”
Minimalの新業態であるパティスリーが23年9月16日に祖師ヶ谷大蔵にオープンします。コロナ禍を経て4年ぶりの新店舗でありますが、店舗はブランドの世界観を伝える大事なメディアです。どのようにブランドの世界観を店舗設計に反映させるかを新店舗を紹介しながら考えてみたいと思います。
何のためのお店なのかを決める
23年9月16日(土)に小田急線の祖師ヶ谷大蔵駅近郊に新業態のお店がオープン致します。Minimalブランドとして初めての洋菓子屋(パティスリー)を出店することになりました。
実は9月15日(金)までオープン記念のお得な会員権付きのクラウドファンディングもやっていますので、以下よろしければご覧ください。
さて、本題ですが、ブランドの思想を店舗設計に反映するために、まずやるべきことは、ブランドにおいてその店舗がどんな意味があるのか、つまりは何のための店舗なのかを考えることです。
例えば、Minimalにおける今回のパティスリーの目的は、ずばり「Bean to Barの進化」をテーマにより多くのお客さまに接点をもつきっかけをつくることです。
ブランドとして、「Bean to Bar」というカカオ豆からチョコレートをつくるというチョコレートにおけるこれまでになかった“クラフト”のムーブメントを、新しいチョコレートの文化にしていくために、カカオ豆の個性が活きたスイーツを届けることでより多くの人に「Bean to Bar」を知ってもらう機会を増やすことです。
ブランドとして表現したいコンセプト決め、テーマに落とす
新店舗をつくる目的や意味が決まったら、次にその目的や意味を表現するためのコンセプトを決めます。
Minimal祖師ヶ谷大蔵店のコンセプトは「シティクラフトの表現」です。
Minimalがブランドとして目指す姿であるチョコレート業界におけるクラフト文化の提示を体現するために、チョコレートを使ったスイーツというより接点を増やす事ができるパティスリーという業態を選択したからです。
ここから、新店舗の設計におけるテーマ設定に落ちます。
このテーマ設定は実際に内装や機能に反映されるので、具体的であることが大事です。
「シティクラフトの表現」のために、祖師ヶ谷大蔵店の店舗設計のテーマを「(個人の趣味性の高い)職人のアトリエ」としました。
Minimalが表現したいクラフトとは、職人が手仕事でカカオ豆からチョコレートを仕上げる事です。
通常のパティスリーというと語源のフランス文化の影響をとても強く反映して、キラキラした世界観であることが一般的です。
目的としてパティスリーという業態を選択していますが、その一般的な文脈にそってしまうとブランドの思想を反映できなくなってしまうのです。
だからこそ、新店舗のテーマとして、新進気鋭のアーティストの個人アトリエにお客さんが招待されたような感じをイメージする事で、ブランドの思想を反映できると考えて、個人の趣味性が強い=Minimal君としての個性がでたアトリエとしての店舗設計としました。
「一点豪華主義」で目玉を決める
目的・意味→コンセプト→テーマと決まったら、その上位概念を丁寧に店舗設計のディテールに落とし込んでいきます。
店舗設計のディテールは正解がない分、やれることは無限にあります。
そのため、店舗設計の時に注意することは、メリハリです。
僕のおすすめは「一点豪華主義」です。
つまり、目玉を決めて、そこに集中投資するという考え方です。
店舗設計をある程度経験した身からすると、こだわりだすと、店舗というのは無限にディテールに時間とお金をかけることができてしまいます。
完全に採算は度外視で、趣味として店舗をやることは例外と考えると、店舗は作って終わりではなくて、作ってからが始まりで、お客さんに価値を提供しながら、採算をとらないといけません。
その観点からも「一点豪華主義」はおすすめです。
目玉になる=テーマを体現するディテール、を決めてそこに集中的に投資することで、来た人がそのテーマを感じてもらうことができるお店ができると考えています。
補足までに、一点豪華主義の一点とはあくまで考え方の例えで、メリハリをつけるという意味です。なので本当に一点だけに絞る必要はありません。しかし、一点に絞る!くらいで考えることが、ブランドの思想を反映したテーマが本当に伝わる店舗への近道ではないかなと個人的には思います。
コンセプトをディティールへ落とし込む_例①ファザード
Minimal祖師ヶ谷大蔵店での具体例で解説してみます。
「(個人の趣味性の高い)職人のアトリエ」を反映する目玉の一つがファザードです。
店舗におけるファザードとは、建物の正面部分のことで、フランス語では「顔」を意味します。 店舗デザインにおいて、ファザードは文字通りお店の顔になる大事な要素です。
ファサードについてはいろいろ議論して、この商店街に違和感なく馴染むようにしたかったので、バーンと目立つよりも「引き込む」ようにすると決めました。
ここはブランドの持っているアティテュードとしても大事で、お客さんをウェルカムで迎える姿勢を大切にしようと考えています。
そして、次にこの店舗で顔となる部分、つまり僕らが「何を見せたいのか」というと、豪華な外観ではなく、職人たちが丁寧に手仕事で作り上げたケーキや洋菓子です。
そのため、ファザードは華美に飾らず、大きなガラスを採用しました。
つまり、店舗の外からケーキなどが入っている店内のショーケースがちゃんと見えるファザードにすると決めました。
ファザードは店舗外装として外側の壁にかなり作りこんでいくことが通常では多いのではないでしょうか。
しかし、上記の考えから、外側に華美な装飾はせず、わざわざ店舗の内装面積を削って、入口を内側に凹ませるアイデアを採用したのです。そうすることで、ショーケースがあるカウンターのラインと、入り口のラインを平行にする事ができまひた。
平行にする事で外からお店の外観を見た時に、ショーケースを正面から見る事ができ、お店のメインであるチョコレートの洋菓子が自然に目に入るファザードとなりました。
最後におまけ的に要素ではありますが、創業者の僕の美意識として、壁面に対してボコッと出ている凹凸のファサードがあまりきれいじゃないなと前から思っていたこともそのアイデアが出る背景にはあります。あくまでMinimalのブランド人格は僕とは別ですが、ある意味で創業者の考えが溶け込み、個人の趣味性の高いアトリエというコンセプトにあった設計と思います。
内側に引き込むことで動線を作り、目線も誘導するデザインがすごいきれいだし、Minimalのブランドっぽさがでていると考えています。
ブランドの思想として店舗のファサードの役割って「自己紹介」と考えているので「入ってみよう」とワクワクさせる動線ができたら最高です。
僕らのアイデンティティや見せたいものを考え再構築したデザインになっていると思います。
ぜひ祖師ヶ谷大蔵店ができたら見にきてもらいたいです。
コンセプトをディティールへ落とし込む_例②全方位から工房が見える
今回のパティスリーは工房併設なので、工房の作業風景が見えることを大事にしました。お店の外側から見れるように窓をつけて、さらには販売店舗部分からもガラス張りで工房で職人が働いている姿や動きを見てもらうことができる設計になっています。
また、ファサードでの工夫もあって、外側をそんなに派手に作り込まずにシンプルにしたんですが、グレイのステンレスのパンチングボードですべて覆いました。パンチングボードは穴が空いてるから透けてみえるのです。
夜になると、パンチングから室内の光が洩れて工房が動いている雰囲気が出るのもいいと考えました。
オーガニックな天然のものを扱うようなお店のトーンというより、「シティクラフト」というコンセプトで、街のなかにあるクラフトをイメージしていたので、このパンチングのアイデアはブランドの思想が反映されたものになったと思います。
このようにブランドの思想から考えて、店舗設計しました。
その他にも様々な思想から反映した部分がありますが、これはぜひ祖師ヶ谷大蔵店にお越しなって確かめて頂ければ嬉しいです。
Minimalらしい他にはないパティスリーになったのではないかと思います。
最後に、Minimal祖師ヶ谷大蔵店ではただいま絶賛クラウドファンディング中です。ここまで読んで興味をもあっていただければぜひ応援いただけると嬉しいです。
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