越境の人材が必要な理由と、越境した人材が意識すべきこと
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越境の人材が必要な理由と、越境した人材が意識すべきこと

別所隆弘

2022年の最初の記事になります。みなさん、あけましておめでとうございます。本日1月3日です。今年は1月1日から仕事をしていて、去年は31日の21時頃まで仕事していて、まだ正月休みらしいことをほとんどしてないんですが、まあクリエイターなんてこんなもんだよなと思いながらも、仕事を依頼してくださるクライアントの皆さんだったり、あるいは作品を見てくださる方には、感謝している年始です。僕は多分すごく幸運な立場にいると、年始に思いました。

さて、2022年ですが、個人的にはいろんなことにチャレンジする年になる予感がしてます。2022年の末に、この記事を読んだとき、今予測しているよりもさらに大きな動きをしていたなあと振り返る未来を期待していますが、今の予定だけでも十分大きな変化が訪れそうです。それが今日の記事の主題にも関わってきます。

(1)越境の時代

2021年を振り返ると、仕事の境界線がコロナ禍を通じて一層流動化し、これまで固定化されていた仕事の多くが、いろんな分野と創発的につながる状況が生まれました。一言でその状況を言い表すと「越境の時代」と言えるでしょう。もちろん、これは背に腹を変えられないから出来上がった状況とも言えます。例えば日経のこんな記事。

コロナ禍で最もきつい打撃を受けたのは、交通系と観光系のお仕事ですが、中でもANAやJALといった航空機は、一時期本当にやばそうな雰囲気が漂ってました。空港に行っても、廃墟かと思うほど人がいなかったり。

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そんな中で、いち早く社員の出向という形で「人材の越境」を開始したのが、日本の二大航空会社だったように記憶しています。

上にも書きましたが、背に腹は変えられない事情での越境とはいえ、この試みはおそらくポジティブフィードバックとして会社に新たな可能性をもたらせるはずです。記事の中でも書かれているように、

ANAの組織改革は、「地上で稼ぐ」会社を目指す姿勢を示した格好だ。ANAあきんどは航空券販売などを担うANAセールスから旅行事業を切り離し、同社の社名を変更して4月に生まれた。(上記記事より引用)

空の移動に集中しているが故に、コロナ禍で大打撃を受けた航空会社が、そのインフラの強みを活かして地上でも稼ぐという発想へと転換するのは、勝ち筋があるように見えます。もちろん、記事内にもあるように資金にも限界がある上に、人材も不足しているので、前途多難なのは間違い無いですが、それでもこのような「越境の経験」は、会社を強くしていくのでしょう。

(2)個人の越境と、その象徴空間としてのNFT&メタバース

このような傾向は、大企業だけではなく、これから個人でも加速度的に進んでいきます。一年前に、僕は、このCOMEMOに投稿した最初の方の記事に、個人クリエイターが複数の仕事を持つことの利点を記しました。

これ以後の世界における新たな価値の創出は、少ないパイを取り合う形ではなく、何かと何かをつなげることで「別レイヤーがあるんだ」ということを明示できる人たちが作る物やサービスによって切り開かれていくことになるのでしょう。(下記記事より引用)

僕は数年前から、自分の仕事をずらして複数化することで、その「間」に道を作って、そこから仕事の範囲を拡張するということを試みてきました。それを僕は「獣道を歩く」というふうによく言うんですが、いよいよこの「獣道」は、そんな小さな規模ではなく、皆が意識し始めて越えようとする境目であることが、このコロナ禍において見えてきています。つまりこれまでは整備された「大通り」がある範囲のみが「普通の仕事の範囲」だと思われていたものが、コロナ禍で完全にそこが停滞してしまい、利益構造の転換を個人でさえも意識せざるを得なくなった。そして実際に転換をしていく過程において、意外とこの「大道り以外の空間」は、これまで想定していた以上に面白くて可能性に満ちていることがわかり始めた人が多くなった。そう言うことが水面下で加速度的に起こっていたのが、2021年だったような気がします。

そんな状況の中で目立ってきたのが、意図的に自らの領域を越境していく人材の登場です。僕のいるクリエイティブ業界ならば、一つの中核的技術を持ちながらも、複数の専門的な技術を合わせて習得していき、その足し算や掛け算によって、自分の空間を作り出していくようなクリエイターたちです。写真と動画、写真と絵、写真とSE、写真と言葉、動画と音楽、音楽とダンス、Youtuberと経営者、経営者と写真家。様々な「越境者」を今年は見ることになりました。彼らはかつて大航海時代にコロンブスたちが自らの国から他の領域へと渡っていく「越境者」だったように、専門的領域を逸脱していく越境者として、独自の強みを発揮して、クリエイティブの最前線へと躍り出てきました

彼らはまた、「越境」の象徴でもあるメタバースであったり、あるいはNFT、仮想通貨といった、まだ「怪しい」と多くの人が見ている領域へと、早い段階で積極的に繰り出していきます。その姿もまた、かつての大航海時代の船乗りたちのようです。多大なリスクを引き受けて、一攫千金を夢みる航海者たちのように、彼らは新しい海へと漕ぎ出していく。状況はまさに「越境時代の開幕」なんですね。それは大航海時代にも比されるような、活動の領域を毎秒毎に拡張していく時代の到来なわけです。2022年はそこにさらにWeb3.0も加わって、状況はより混沌としたエネルギーを生み出していくことでしょう。もはやそこは、数年前に僕が必死で足元の狭い道を探していたような、薄暗くて可能性の小さい「獣道」なんかでは決してなくなってきました。

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(3)越境した人材たちが直面するもの

さて、こうなると、2022年は多くの領域で越境人材たちが、大活躍...というバラ色未来だけが待っているかというと、そうでもないのです。上で「大航海時代」を比喩で用いましたが、ここでもその比喩が適切に事情を説明します。歴史が示している通り、大航海時代に越境していった人物たちは、各地でひどい摩擦を引き起こします。最悪の場合は、疫病を持ち込んで、現地の人間の大半が死んでしまうようなことが起こりました。それはまさに、現在の「コロナ禍」においては、あまり比喩にも思えない出来事ですが、こと「仕事」という側面に限っても、越境者が引き起こしかねないのは、それは「越境者のマナー」というべき問題です。

多くの場合、越境者は自身の専門的領域と知識を持っています。だから、越境後はその専門領域と知識で持って、無双しちゃおうと考えているわけです。まるで「なろう系小説」で、異世界に転生したハイスペック主人公のように。でも、得てしてその専門性は、あくまでも自分の領域のみで無双できるものであって、越境した先では、そこのフォーマットに合わせる形で柔軟に変容して使うような、そういう臨機応変な対応力が必要になってきます。一つ、例を出してみますね。

例えば、すごく力を持った広告PR系の人材が、クリエイティブのディレクションもやるという話になったとします。彼は単に広告だけではなく、割と写真も好きで、人物写真がすごくうまい人物という設定にしておきましょう。どこかにいそうだけど、特定の人物は念頭に置いてないので、そこは誤解しないでくださいね(本当に誰も念頭に置いてないですよ!)

で、クリエイティブを発注したクライアントの意向で、例えば「虹」をテーマにしたクリエイティブが必要になったとします。そこで広告PR系最強の彼が「真っ青な空に、太陽、それから虹を合わせた映える絵をまずは作ろう」と考えます。企業用のクリエイティブですから、バシッと明るい絵が必要なわけです。まあ、ちょっと無理あるかもしれませんが、そういう設定にしてください。で、その写真を、写真家に発注します。流石にディレクター自身が写真を撮るってのは仕事量的に考えて無理があるので、実際にクリエイティブを作るのは、やはり生粋の写真家に発注します。で、この段階で、僕のようなクリエイターにようやく話が回ってくるわけですね。

さて、この時点でやばいと分かった人は、さすがです。

Googleで例えば「虹の絵」と画像検索をかけてみますね。

続いて、「虹の写真」で画像検索をかけてみます。

さて、虹の写真の方にもイラストが入ってきちゃうんですが、絵と写真でちょっと違いがあるんですね。絵の方には、たまに太陽が描かれている画像が入ってきます。写真だと、虹と太陽が同時に写っているものは、存在しません。存在していたとしたら(実際検索結果にありますが)、それは合成して作られた写真です。なぜなら、虹の原理的に、虹は太陽を背中に背負った先にしか現れないので、太陽と虹が同じフレームに収まるのは、360度カメラ以外では無理なんですね。そして多くの場合、雨が降った直後に虹は出るので、虹が出る方向の背景は抜けるような青空であることも少なかったりします。写真家は、この物理の厳格さを知り抜いています。ここで双方の「専門性」が衝突を起こします。PRはクライアントの要求を最大化したい、クリエイティブ側は絶対にそれは作れないということが分かっている。暗礁に乗り上げたりするわけです。

さて、クリエイティブの業界ではこういうことが様々に起こります。例えば、「写真として見栄え良くするために太陽の位置を変えてほしい」なんてことも言われるんですが、太陽の位置を変えると影の位置が変わるんで、基本的には無理なんですね。レタッチにはいろんなスタイルがあるにせよ、大体の写真家は、太陽とは絶対に喧嘩しないんです。物理法則とも。そこだけは共通しているだろう「最終防衛ライン」のようなものです。

でも、そんなこと、写真や動画以外の業界からクリエイティブに入ってくるような人がいたとしても、多分わからないですよね。そう、これが「越境者のマナー」というやつです。

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(3)「大越境時代」を幸福に泳ぎ切るために

2022年は、この「越境の加速」と「専門性の衝突」が、これまで以上に頻発することが予想されます。いろんな問題が出て、いろんな解決法が模索されると思うんですが、これまでいろんな業種の方と仕事をしてくる中で、とりあえずこれだけは守っておけば大体仕事はうまくいくという部分が見えてきました。それは一言で言うと、

越境先のトンマナを意識する

これです。これだけ。これが極めて重要です。かつて大航海時代は、越境する側が自分のトンマナを越境した先に押し付けることによって、極めて暴力的な「植民地時代」を引き起こしました。大航海時代の幕開けは、植民地時代の幕開けでもあったわけです。21世紀に、しかもこれから非中央集権のメタバースだとか、分散型ワークDAOだとか言ってる時代にそんな状況を出現させるのは、いくらなんでもアナクロですし、個人間でそれをやってたら、せっかく生み出されつつある「越境の楽しさ」に水を差しかねません。

もちろん、時には越境していく人が、新しい風、新しい血を、古い場所へ運んで、物事がドラスティックに好転するような事象も想定されるでしょう。ですが、多くの場合、それぞれの領域には、それぞれ固有のトンマナがあって、そこで生まれたトーンもマナーも、その領域に固有の歴史と文脈、時には物理法則を伴った、変更不可能なものであることが多いわけです。

それを破壊するとなると、その越境は、ただの「植民」になってしまう。それはやはり、不毛な結果しかもたらさないでしょう。だからこそ、越境時代には、これまでよりも一層コミュニケーションの柔軟性も必要になってくるはずです。越境者は、自分の知っている一部の知識を持っていくだけでも、多くの物事を変える力になるんです。

というわけで2022年は、2021年以上にいろんなものが変わっていく一年になるはずです。準備して、いい方向に社会が動くように、自分も力を尽くしたいなと思っています。そしてその過程を、このCOMEMOにも残して、一年後に振り返りたいなというのが、今の希望です。一年後「いい方向に動いたなあ」と思えますように。

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別所隆弘
フォトグラファー, 文学研究者。滋賀、京都を中心とした”Around The Lake”というテーマでの撮影がライフワーク。 Twitterはこちら https://twitter.com/TakahiroBessho