なぜ感染者数は急激に減少しているのか?(その1)
コロナの感染者が急激に減少している。およそ毎週半分になるような急速な減少である。7月の下旬には、感染者は毎週2倍という急激な増加を示していた。ところが、7月末に突然これが急減し始めた。約10日後には、先週との比は1近くまで下がった。そして今は、毎週半分になるほど急減になっているのである。
しかし、なぜ急にこのように急激に減少したのか、合理的で納得できる説明を見たことがない。メディアでも明確に説明していないと思う。
メディアが急激な減少の理由として取りあげているのは、ほとんどの場合、ワクチンの普及や人流の減少である。しかし、ワクチンは一定のペースで進んでいるので、突然下がり始めることを説明できないし、人流は下がっていないので、説明にならない。
そこで、以下に、私なりにこれに3つの科学的説明を試みてみた。
どれもメディアでは(多分)見たことのない説明だと思う。
(1) ワクチン効果の加速性
急激な減少を説明する第1の仮説は、ワクチンの効果が時間と共に加速して強くなることである。
ワクチンの接種は、おおよそ毎日100万人程度のペースで進んでいる。接種のペースは、ほぼ一定で安定しているので、突然、7月末にワクチンの効果が表れるのは不自然である。もっと連続的に徐々に感染者が減るのなら分かるが、急に下がり始めた説明にはならない。
これが、ワクチン接種が進んだにも関わらず、メディアで専門家が、ワクチンのお陰と強く主張していない理由だと思う。
ところがメディアが報じていない重要なことが1つある。それは、ワクチン接種者数が毎日一定でも、ワクチンの効果は加速度的に大きくなることである。
なぜか。実は、ワクチンの効果を決めるのは、ワクチンを打った人の数ではない。ワクチンの効果を決めるのは、ワクチンを打っていない人の数がどれだけ減ったかなのである。
しかも重要なのは減少人数ではなく、減少率である。毎日一定数のワクチンを接種していても、ワクチンを接種していない人の減り方(減少率)は加速する。例えば、ワクチンの接種者が0人からスタートし、毎日100万人接種すると、10日後には1000万人の接種者が生まれる(単純化のために2回接種の事を一旦忘れる)。全国民を単純化のために1億人とすると、接種していない人は、1億人から9000万人に減る。10%の減少である。
これに対し、既に、5000万人の接種が終わった状態から10日後には、接種をしていない人は、5000万人から4000万人に減る。これは20%の減少である。
このように一定のペースでワクチンを打っていても、ワクチンを打っていない人の減少率は加速していくのである。この事実は、感染症に関する基本的な知識なので、もっとメディアは伝えるべきだと思う。
ただ、この加速効果だけでは、7月末から起きた劇的な減少を説明できない。
(その2に、つづく)
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