「遊びに行く」場所を失ったアメリカ
Atlanticの記事に掲載されていたこのグラフが大きな話題になっている。
友達と1週間に二回以上外で遊ぶティーン(12年生、日本では高校3年生)の割合の変遷を示しているわけだが、200年ごろまではおよそ8割だったものが、大体2010年以降に急降下している。では一体、原因は何なのか?
「当然スマホの影響だ」という人が多いだろう。確かにスマホがあれば外に行かなくてもいつでも友達と繋がれるし、わざわざ外出して遊ぶしかなかった時代に比べたら減って当然かもしれない。しかし、他にも大きな要因はいくつかある。
まず、物価の高騰だ。
他には、いわゆる「サードプレイス」と呼ばれるような場所が減ったことによって、「お金を使う」という目的を果たさない限りは居座ることができない場所が増えてしまった。たとえば過去にはショッピングモールでぶらぶらしてから、映画を見たりフードコートで食事をしたとしても10ドルくらいで済んだものが、今では同じことをしようと思ったら30ドルは楽々と超えてしまう。公園や図書館への投資も行政が出し渋り、どんどん閉鎖してしまっている。ファストフード店やショッピングモールなども「長時間のだべり禁止」というルールを出したりと、ティーンが「ハングアウト」する場所がそもそもどんどんなくなっているのだ。スマホやゲームに時間を費やすようになるのは、当然の結果と言えるだろう。
2008年に世界金融恐慌が起きたことも忘れてはならない。この辺りからショッピングモールが経営困難に陥ったり、子供にお小遣いを与えられなくなった家庭も増えたと言われている。
子どもの安全をめぐる問題も重要だ。ラッチキーキッズ(家に一人でいることが当たり前だった)X世代と比べたら、子供を絶対に一人にしてはいけない、友達とも外で遊ばせない、という認識が2000年代以降強く広まった。今やスマホで子供の位置情報を確認することができるし、親による「監視」のニーズも高まっている。
大人の孤独問題やティーンの不安症・鬱が年々社会問題として深刻化しているが、その中でどのようにしてコミュニティ形成をするのか、どのようにして友人と会う時間を作り、そのための場所を確保するのか、ロックダウン後突如として「ノーマルな生活」に放出されてしまったアメリカ社会は困惑している。