見出し画像

エラーとイノベーション

こんにちは。新城です。自分を拡張するマージナルな環境について、世界経営者会議でお話を聴くことができましたので、まとめてみます。

カオスの際

指令に基づく行動。軍隊や工場などの、実務の執行のうえで精密さを求められる現場において、それはとても適切なものとなる。
しかし、NETFLIXでは、刺激を提供し、行動が発生する。その場を提供することが、重要だ。カオスに陥らない、ぎりぎりの際のところ。
その環境が、多くのアイディアを生み出すのだ。
(第22回日経フォーラム世界経営者会議 NETFLIX 創業者CEO リード・ヘイスティングスより)

このカオスに陥らないぎりぎりの際のような場所とは、どのようなものなのか。
僕自身の経験の中から、それを探そうとすると、カンブリアナイトに思い至ります。

カンブリアナイトのカオスさ

「みえる」「わかる」「できる」「かわる」というカンブリアサイクルを軸に、多様な活動が、数多の両異域で、多彩な人材によって研究され実施され社会実装されている。その活動内容を、超カジュアルな雰囲気の中で話してもらい、聞きたい人が聞く。それも、聞きながら他の人とそれについて話し合いながら、そこで生じた疑問やアイディアを、登壇者に投げかける。

いわゆるプレゼンテーションを静かに拝聴し、質疑応答し、その後にネットワーキングするという、御行儀のよいイベントではなく。会場に入った直後から参加者登壇者が乾杯して飲み始め、その飲み会の余興的に発表と対話が行われる。参加者から「知的でカオス」と言われるようになった、独特の空気感。

僕にとって、多くのアイディアが生まれるカオスな環境は、このカンブリアナイトが一番しっくりくるものです。

リレーショナルアート

リード・ヘイスティングスさんは、こうした環境においては「それぞれの文化的背景の違いを踏まえ、言葉の間、行間を読むことが大切になり、それはアートに近いものだ」と語っていました。

リレーショナルアートという分野があります。関係性の芸術とも呼ばれ、完成された作品を観賞するのではなく、作品の制作などに参与(participation)すること、そこで生まれる関係(relation)そのものが作品の一部として大きな意味を持つものです。これは、完成した作品と鑑賞者との間の相互作用に着目するインタラクティブアートとは異なるものと考えられているようです。下記のartscapeに、とてもわかりやすく書かれています。

同氏の言う、カオスの際という環境で生まれるアート的対話とは、このようなものに通底するのかもしれません。そして、それは、何も難しいものではないと思うのです。

共視の構造

カンブリアナイトでは、その状況を生み出すために、共視の構造を活用しています。お互いの主張を対面して話そうとすると、そこに対立構造が生まれやすくなります。カンブリアナイトでは、様々な背景を持つ人たちが、登壇者の話を共に聴く、共に視るという「共視」の構造をとることで、対立せずに、違いの背景の違いを読み合ったり翻訳したりしながら語り合うようになります。

共視は、発達心理学でジョイントアテンションとも呼ばれ、幼児が他者の意図や心的状態を読み取り始める発達上のターニングポイントです。二者の外にある対象を共有し、考え、言葉を交わす段階です。かつてカリフォルニア大学にて研究されたバウンスというコミュニケーションゲームも同様の構造を持っています。共視することにより連帯感が生まれる。詳細は、下記の記事にあります。

エラーとイノベーション

さらに、同氏は、こうも言います。カオスの際の環境は、エラーの発生率を下げようとする環境には向かない。安全性を求められる企業には向かない。イノベーションと精度は違うものだ。

当たり前のことですが、どのような世界を生み出したいのかによって、その土壌となる場は異なります。カオスの際は、新たな世界を生み出す、挑戦的な現場にこそ求められるのでしょう。カオスの際とは、マージナルな環境だと言えるのかもしれません。


いいなと思ったら応援しよう!