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「カスタマーサクセス」は、事業成長観点を持ち込むことで継続できる

最近、大手企業でもカスタマーサクセス部門を新設する動きが出てきました。カスタマーサクセスは、商いの本質を捉えた優れた考え方です。

費用対効果に配慮しながら、着実に事業成長につなげることで、活動を一時のブームで終わらせないようにしたいところです。

「カスタマーサクセス」は2000年頃に、セールスフォース社の創業者であるマーク・ベニオフ氏が「企業活動の目的は製品やサービスを提供することではなく、お客さまの成功にある」という考え方に名前を付け、実際の活動に落とし込んだものです。

この20年間で、活動が盛り上がってきた背景には、主に社会の変化があります。ネットが普及し、口コミが簡単に広がるようになると、使ってみると期待したほど価値がないものを、魅力的な広告宣伝によって売り抜けることが難しくなってきました。

また、断捨離が流行したのも示唆的です。先進国では、経済活動が成熟してきており、行き過ぎた消費を反省し、本当に必要なものだけを購入する気運が高まっています。コロナ禍はさらにこの傾向に拍車をかけています。

企業のマーケティング活動は、キャンペーン主体の新規顧客獲得から、既存のお客さまへの価値提供へと重点を移さざるを得なくなっています。その結果、ビジネスモデルも変化しています。企業は、製品の所有権を渡すことに課金するのではなく、一定期間のサービス利用に課金するサブスクリプション型に移行しつつあります。

企業の命題は「どうすれば沢山売ることができるのか」から、「もっと長く継続して利用してもらうためには何が必要か」を考えることへと移行しています。

カスタマーサポートとの違い

企業は、これまでもカスタマーサポート部門を設置し、お客さまの製品やサービスの利用を支援してきました。

カスタマーサポートとカスタマーサクセスは何が異なるのでしょうか。その差を端的に表すと、活動が受動的能動的かの違いです。

カスタマーサポートでは、コールセンターなどでお客さまからのお問い合わせを待ち、適切な回答を提供し、問題を解決することを目指します。カスタマーサクセスでは、お客さまの利用状態をモニタリングし、利用量が落ちていれば、こちらから支援を申し出て活用を促進します。

一般的にカスタマーサポートはコスト部門とみなされ、挑戦がしづらい環境にありましたが、カスタマーサクセスの活動では受け身であることは許されず、積極的に努力を払うことが求められます。

カスタマーサクセスを成功させるために

お客さまの成功を願い、目いっぱい努力する方針は、お客さまの視点では素晴らしいことです。しかし企業にとっては、費用対効果に適うのかが気になるはずです。人もお金も、無限に用いることはできません。

実際、お客さまの期待値を超えたサービスを提供することが、費用対効果に合致するのか、厳しく問うべきだという指摘もあります。

この書籍では、感動サービスの提供を目指すのは、企業にとっては割に合わないと言っています。お客さまが、目的を達成するのに要する手間を最小化し、不満のない状態を理想とするべきだと解説しています。

事業毎に、ターゲットとなるお客さまが求める要素は異なります。正解は一つではないので、自社のお客さまの真の欲求を捉えた上での費用対効果の高い活動が求められます。

そして、限られた資源の中でも、事業成長にインパクトのある貢献を目指したいところです。そのためのポイントを列挙してみます。

1. カスタマイズした人によるサービスのみに頼らず、サービスの型化やデジタルコミュニケーションを大いに活用し、効率を上げる
2. お客さまが成功した状態を定義し、お客さまの状態を数値化し、客観的に健全性を把握できるようにする
3. 継続活動であることを前提に、現実と理想のギャップを埋めるPDCAをまわし続ける
4. 活用を妨げる要所要所を捉え、優先順位に従いながらボトルネックの解消に努める
5. 成功しているユーザの特徴と行動を捉え、同様のユーザを増やすことを目指す

カスタマーサクセスは、企業の本質を突いた優れた概念ではありますが、活動を定着させ継続していくためには、要点を押さえて事業成長へ貢献していくことが求められます。

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遠藤 直紀(ビービット 代表)
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