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世界に5人しかいない新幹線の熟練工 最新テクノロジーで進む技術継承

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

日本の大動脈とも言える東海道新幹線。一日あたり約43万人、年間では日本の人口を超える約1億6千万人の人を輸送しています。先日10月1日には開業60周年を迎えました。歴史とともに車両も進化を続け、最新のN700Sを見ると先頭が長く伸びた流線型が目を引きます。

この形状を作るのに欠かせないのが、熟練工による緻密な技術です。特に高い技能が求められる先頭車両の溶接に関しては、製作所にいる120人の職人の中でも5人だけに許されているそうです。

これに限らず、国内の熟練工の高齢化に伴う技術継承が大きな課題となっています。トレーニングには長い時間がかかりますし、OJTによるマンツーマンの訓練にも工数がかかります。見習いが増えるほどに熟練工の負担が増えてしまい、工場の生産性も落ちてしまうというジレンマもあります。この課題を最新テクノロジーで解決しようという取り組みが始まっています。

日本の大動脈を結ぶ東海道新幹線の最新車両「N700S」。その生まれ故郷が日本車両製造の豊川製作所(愛知県豊川市)だ。先端の「鼻」や車体には、製作所の職人による緻密な技術が光る。課題である現場の技術継承にはAR(拡張現実)技術を活用。若手の溶接を点数化することで、ゲーム感覚を持ちながら研さんを積める環境を整える。

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コンシューマー向けのMetaのOculusやApple Vision Proなどの製品は値段も高く、キラーアプリケーションも不在で利用者の伸び悩みが続いています。一方で企業向けでは飛行機の整備などの膨大なマニュアルが必要な現場や、リモートでの障害対応などにMR(複合現実)などの活用が進んでいます。

鋼材の加工・販売などを手がける藤田金属(新潟市)はデジタル技術を活用し、業務を改革する。動画を見ながら故障した機械の原因究明や修繕を遠隔地から指示するほか、安全教育には仮想現実(VR)を利用。金属コイルを置く架台の売り込みには拡張現実(AR)を使う。デジタルトランスフォーメーション(DX)で生産性を高め、業績拡大につなげる。

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視覚情報はARやVRで対応できますが、職人技で技術継承が難しいのが力加減や手触りなどの触覚情報に関連する部分です。まさに試行錯誤で見て試して覚える世界ですが、この分野にも「ハプティック技術」を応用した研究が続けられています。コンシューマーゲームでもコントローラーが振動したり、スマホゲームでもバイブレーションを使って没入感のある反応を実現していますね。

産業技術総合研究所(茨城県つくば市)は、モノの動きを捉える極薄の素子を使った触覚共有システムを開発した。指先で触れる触覚を別の人に送信し、共有できる。ゲームなどエンターテインメント分野のほか、工場での職人技の伝承、スポーツ選手の動きのリアルな再現などに応用できる。

「双方向リモート触覚伝達システム」は、触覚による情報伝達を可能にする「ハプティック技術」を使った微小な電子機械システム(MEMS)を利用する。産総研のMEMS技術と東北大の体感振動を強調・変換する技術、筑波大の「双方向リモート触覚伝達システム」、東北大学発の人工知能(AI)スタートアップ、Adansons(アダンソンズ、仙台市)の技術を組み合わせた。

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さらにはカメラやセンシング技術を活用して動きの分析・再現をする研究なども進んでいます。ゆくゆくは伝統工芸の世界にも応用されていき、人間国宝の方の技の解明もできていくのかもしれませんね。


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タイトル画像提供:Leon / PIXTA(ピクスタ)

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