職住融合を超えて: 社員を地域に戻すことでイノベーションを主導する
このところ大企業から、思い切ったリモートワーク前提の勤務体系が、相次ぎ発表されている。日本のビジネスマンは、好きなところで暮らし、自分の人生を取り戻すことができるのだろうか。
ワーク・イン・ライフというトレンド
次の記事では、NTTグループが新たな働き方「リモートスタンダード」を始めたことに触れている。勤務場所は「社員の自宅」とする制度で、異動で所属部署の所在地が変わっても必ずしも引っ越す必要がなくなる。
新たな働き方を象徴するコンセプト「ワーク・イン・ライフ」は、仕事と私生活の両立を目指す「ワーク・ライフ・バランス」に対して、「仕事を含む人生全体の充実」を意味する言葉だという。
この記事で取り上げられているNTTグループの山本恭子さんと、先日、リクルートWorksのオンラインセミナーで、編集長の浜田敬子さんと三者での鼎談をする機会に恵まれた。
この日のテーマが、「社員を地域に返す」ということの意味。私の会社では、もともと自由な働き方をしてきたが、リモートワークが増えたことで、私の考える「スローカンパニー」へと舵を切ってみた。それは、「会社の仕組みに合わせて社員が働く」のではなく、「社員が働きやすいように会社が柔軟に変わる」という会社のカタチをめざしたものだ。
三人で盛り上がったのは、ワーク・イン・ライフは、「社員にとって優しい制度」であるだけでなく、「ユニークな発想をする社員を育てる」ことにつながる可能性であった。
パナソニックグループの企業は、都会の一等地に本社を構えると同時に、「どこでも勤務」を可能とした。これは、一義的には優秀な学生を集めるためであろうが、それ以上に「象徴としての本社」と「どこでも働ける」ことの組み合わせが、これからのワークプレイスの標準になることを予感させる記事だ。
社員の日常の困りごとをイノベーションの源泉にする
せっかく社員を地域に返したのだから、そこで思いっきり「リードユーザーとしての暮らし」を作ってもらうといい。それは、家事でも、子育てでも、町内会でも、カフェや商店街との交流でも、さらには家を地域に開くのでもいい。とにかく、「自分のやってみたかった暮らし」をすることを会社として支援してみるのがいい。
料理研修、家事研修、子育て研修、コーヒーの淹れ方研修、まちづくり研修、さらには地域で副業を始めることの支援制度まで。
その上で、毎年、地域や家族のお困りごとのアイデアソンを開催することを忘れてはならない。「社員に暮らしを取り戻させ」て、そこからイノベーションを生み出すのだ。
さあ、ビジネスパーソンの皆さん、自分の暮らしを自分でイノベートする楽しさを味わってみませんか。