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ポリアモリーを知らない人は多いけど、ポリアモリーに関係がない人はいないと思う。

あなたは「ポリアモリー」という言葉を知っているだろうか。

とある調査では、その認知率は5%程度。

ほとんどの人が知らないこの言葉は「合意を得た上で、複数の人と同時に恋人関係を持つライフスタイル」のこと。1990年代のアメリカで生まれ、日本ではこの数年で徐々に拡がりを見せている。

そんなポリアモリーや日本の恋愛観・結婚観について、今一度考え直してみよう。という「ポリアモリーウィーク」なるイベントが先日、日本で初開催され、僕はオープニングアクトを担当した。

今日はその内容を、かいつまんで紹介しようと思う。

■小島さん、あっち側に行っちゃったね。

僕の講演「パワポで解説!なんで今ポリアモリーって注目されているの?」は、こんなスライドからスタートした。

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この仮説は、僕自身の体験から生まれている。

ポリアモリーというライフスタイルを実践、発信しはじめてから、友人や知人から「小島さん、あっち側に行っちゃったね」なんて言われることがあった。

肯定も否定もされてはいないが、僕はこの「あっち側」という表現がずっと気になっていた。

「あっち側」ということは、その発言者は「こっち側」にいて、あっち側にいる僕は「別の世界の人」ということになる。

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確かに「恋人は1人じゃなくてもいい」とするポリアモリーは「恋人は1人だけ」とするモノアモリー(と言います)からすれば、別の世界の住人のように感じるだろう。

また、数の上でもモノアモリーが世間のマジョリティーだ。

こんな風にポリアモリーは今、「ほんの一部の、別の世界の人たちの話」と認識されていて、これを読んでいるあなたも同じ認識かもしれない。

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■今の「こっち側」も、少し前まで「あっち側」だった。

講演では、そんな整理をした後にこのスライドを差しこんでみた。

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「恋人は1人だけ」とする現在のマジョリティーを正確に表現すると「恋人は同時期に1人だけ」となる。

つまり、時期さえ被っていなければ(結果的に)複数の恋人の存在を認めているのが現在のマジョリティーだ。

しかしこの考え、少し前の価値観を起点にすると「あっち側」にもなる。少し前の価値観とは「恋人は生涯で1人だけ」だ。

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婚前交渉という言葉を知っているだろうか?

これは、結婚前にキスや性行為を持つことを意味しており、少し前までは御法度とされていた。

結婚前に性行為をするなんて、もってのほか。

そんな価値観は身近に存在する。例えば、子供ができたことをきっかけに結婚する行為は、最近まで「できちゃった結婚」なんて正しい道を外れたかのような表現で「あっち側」扱いされていた。

今「こっち側」と思っている価値観も、少し前まで「あっち側」だった。

あっち側は決して「別の世界の話」ではなく、すべてグラデーションでつながっている。

ポリアモリーもまた、今の延長線上にある価値観だ。

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■今の「こっち側」は、既にポリアモリーの一形態

ここまでの説明に納得できた方でも「それでも私はポリアモリーじゃないけどね」と捉える人は多いだろう。

そんな方に、とある本の一節をご紹介したい。

2004年に日本語版が出版された書籍だが、なぜか増版されないため価格が高騰している。

著者はデボラ・アナポール。アメリカのワシントン大学で臨床心理士となり、ポリアモリーを広めた人物だ。

この本の巻末には、こんな用語解説がある。

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これはシリアルモノガミーという言葉を解説した部分で、シリアルは「連続した」、モノガミーは「単一婚(一夫一婦制)」を意味する。

つまりシリアルモノガミーとは、一夫一婦制で結婚をして、離婚した場合も再度、一夫一婦制で再婚するスタイルのことだ。


それ、普通ですよね?


と言う声が聞こえてきそうだが、この書籍ではそんなシリアルモノガミーが「ポリアモリーの一形態」と紹介されている。

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どういうことだろうか。

改めて紐解いてみる。

まず、スタート地点を「恋人は生涯で1人だけ」という価値観とする。しかし時代が変化するにつれ「恋人は同時期に1人」という新解釈が生まれた。それが現在のマジョリティーだ。

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そして昨今誕生したのが「恋人は1人、じゃなくてもいい」とする、ポリアモリーというスタイル。

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考えてみてほしい。

これら3つの形態がある中で、現在のマジョリティーである真ん中はどちらに近いだろうか?

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この疑問に対して、デボラ・アナポールは「恋人は生涯で1人だけ」という解釈をズラした時点で「既にポリアモリーがはじまっている」とした。シリアルモノガミーをポリアモリーの一形態と表現しているのは、そういったことだろう。

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そう考えると「恋人は同時期に1人だけ」というマジョリティーの価値観は、既にポリアモリーに片足を突っ込んでいる価値観だ。

「私はポリアモリーではない」ではなく「私のポリアモリー性は50%程度」が正しい表現ということになる。

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これが僕が冒頭で唱えた「ポリアモリーってみんなに関係ある話なんじゃないか、説」の中身だ。

■あっち側、という思考の放棄が分断を産む

いかがだったろうか?

わかりやすく表現するために時代の流れを使ったが、僕は「ポリアモリーこそ時代の最先端だ」なんて主張をするつもりはない。

伝えたかったのは、すべてはグラデーションであり「私には関係ない話なんて存在しない」ということだ。

自分がまだ理解できないトピックに対して「関係ない」や「あっち側」とするスタンスは、思考の放棄であり、分断の要因だ。そのスタンスはいつしか「攻撃していい相手」をつくりだし、仲間を集めて、対立を深めるだろう。

僕自身は「みんなポリアモリーになろうよ!」なんて推奨をしているわけではない。(実践したらしたで結構大変だ)

ただ、「マジョリティーだから」という理由でモノアモリーを選択している人がいるとしたら、他の選択肢が同列の市民権を得られるようにはしたい。

そのために今回は「ポリアモリーってみんなに関係ある話なんじゃないか、説」として、いささか乱暴にマジョリティーを巻き込ませてもらったが、これをきっかけに恋愛スタイルの選択肢が増えればと思う。

これを機に気になった方は、イベントのアーカイブを見てもらいたい。


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小島 雄一郎
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