臼井 隆志|Art Educator
休みの日も「何者かでなくてはならない」のか?
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休みの日も「何者かでなくてはならない」のか?

臼井 隆志|Art Educator

週休3日制議論とは何か?

「週休3日制」という言葉をよく耳にするようになりました。その言葉だけ聞くと「え〜いいなぁそれ理想的だなぁ」と思う一方で、「そんなこと本当に実現可能なの?一部の余裕のある人だけじゃないの?」と思ってしまう自分もいて、どこか距離のある言葉でした。

メリット/デメリット

ただ、ふと気になってこちらの記事を読んでみると、"政府は「骨太方針2022」に「選択的週休3日制の促進」を盛り込んだ"とあり、国策としても多様な働き方を推進する方向に舵をとっていることがわかります。

この制度を導入することで、生産性の向上や高齢者・女性の活躍推進、リカレント教育(生涯学習として、働きながら、大学院等での学び直しを行うことを指すことがおおい)にもつながるといいます。

他方で、1日の労働時間を長くすることで制度と帳尻をつけようとするなど、多くのバッドパターンも指摘されています。

週休3日制への批判的論点

週休3日制に対しては、論点として、そもそも有休消化を健全に進められるほうにすることのほうが大切だとの主張も展開されています。そのためには個人とチームの学習の視点が挙げられます。制度を導入する以前に、個人が自律的に労働管理ができ、なおかつチームでのコミュニケーションが円滑に取れるようにして休みを増やしても問題がなくなるよう工夫するなど、休み方を学ぶことが必要なのでしょう。

また、この週休3日制を前向きに検討できる業態は、いわゆる正規雇用のホワイトカラーを前提としており、パートタイムで働く方や非正規雇用で働く方には不利になる可能性も大いにあり得るでしょう。

文化系トークラジオ「Life」3日目の休日、何をしようか

こうした論点を踏まえつつ、聞いてみるとおもしろいあるラジオ番組があります。文化系トークラジオ「Life」です。

そもそもこの問いがいいですよね。「週に3日休みがあったら何をしたいですか?」というもの。これ、みなさんだったどう答えますか?

自分だったら何するかな?

これぼくだったら、子どもをその1日分、保育園に行かせられるのかによってだいぶ変わるなと感じました。もし行かせられるなら、のんびりと1日本を読んで過ごしたいなぁと思います。本を読む体力もなさそうだったら、ずっと寝たりNETFLIXみたりしたいなぁとか。本を読むのも気分が乗らなかったら、美術館や映画館に行きたいなぁと思います。妻と休みが合わせられたら、いいランチを食べに行きたいなぁとか。もし子どもが保育園にその日だけ行けないとなったらば、まぁなんでしょうね、大半は家でだらりと過ごすのでしょうね。

その一方で、その1日を生かして、何かしなきゃいけないんじゃないか…副業やボランティア活動など、家族の資産形成やら社会貢献やらしなきゃいけないんじゃないか…という気持ちにもなりそうです。ただ、結果として、そうしたことをやろうやろうと思いつつできない日々が続いていって、なんとなく自己肯定感のさがる3日目の休日を過ごすのかもしれない…。

何者かになろうとしすぎ

そんな気持ちに対して、この番組では、おもに宇野常寛さんが「何者かになろうとしすぎ」ということを指摘していて、その指摘がとても気持ちのいいものでした。

副業や社会貢献など、目的を持って過ごすのももちろんよいでしょう。そうして「発見」や「成長」を積み重ねるのもよいでしょう。他方で、思うままにすごして、何かを発見したり成長したりしないような休日の過ごし方も積極的に肯定されるべきだと、ぼくも思います。

SNSが生み出した呪いを、いかに解けるか?

SNSが登場して10余年になりますが、その間、人々の私生活が「公私混同していく」状況を目の当たりにしてきました。どこぞの企業で働く人でありながら、プライベートではこんなことをしている人なんだ、という公私混同の表現をするプラットフォームこそがtwitterやinstagramです。

休日に「何か」をしていて、それが「アイデンティティ」になるようなもので、その「アイデンティティ」をもって仕事や私生活を「コンテンツ化」し、「フォロワー」を楽しませるべきなのだ、というバイアスが、人々の中に形成されているのではないかと感じます。それはある種の呪いとして、ぼくたちに巣食っているのかもしれません。

先ほどのLifeの「週に3日休みがあったら何をしたいですか?」というこの問いが含むものは、「それをなぜしたいのですか?」「本当に、あなたの心の声はそれをしたいと思っていますか?誰かに思わされてはいませんか?」という批判を内包しているものでした。その批判は、さながら上に挙げたような呪いを解く優しいものでもあったのです。

#日経COMEMO #NIKKEI

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臼井 隆志|Art Educator
0歳から大人までのアートエデュケーション、ワークショップデザインを専門としています。定期マガジン「アートの探索」では、アートを触媒とする学びの場づくりに関するコラムの執筆と、対話型鑑賞イベントを開催しています。 著書『意外と知らない赤ちゃんのきもち』(スマート新書)