今年度の設備投資計画が旺盛な訳
機械受注8.1%増 4~6月期、2期ぶりプラス: 日本経済新聞 (nikkei.com)
新型コロナウィルス感染症に伴う影響やロシアのウクライナ侵攻等により日本経済を取り巻く環境は厳しさを増す中、今年度の設備投資計画は旺盛となっています。
実際、先月公表された6月短観の設備投資計画(日銀)を見ると、GDP設備投資の概念に最も近い「ソフトウェアを含む設備投資額(除く土地投資額)」が全規模合計で前年度比+15.5%となっており、本基準で集計された2004年度以降で最大の伸びを記録しています。
経済全体や企業それぞれの成長期待が高まることによって設備投資が拡大すれば、需要拡大を通じた生産性向上により賃金も上がり、経済成長の好循環につなげることによって経済の長期停滞から抜け出すことができる可能性があるでしょう。
この背景には、コロナ禍の長期化により先送りされた投資の再開に加え、脱炭素やデジタル化の加速、レジリエンス強化に向けた取り組みの押し上げがあります。国際的な供給途絶リスクをできるだけ抑制し、持続的に経済成長をしていくためには、経済の国内自給率向上を通じて経済の強靭化を高める経済安全保障の考え方がこれまで以上に重要になっており、戦略在庫の確保など経済安全保障の側面からサプライチェーンの強靭化などレジリエンス強化を図る動きが拡大しています。
そこで、これまでの6月短観の設備投資計画と同年度のGDP名目設備投資額の関係を基に、今年度の名目設備投資の金額を予測すると、昨年度の87.1兆円から+9.5%増加の95.4兆円にまで拡大する計算となります。これが実現すれば、実に1992年度の95.8兆円以来の水準まで日本の設備投資が拡大することになり、今年度の経済成長率の大きなけん引役になることが期待されます。
ただ、実質ベースで同様の試算を試みれば、実質設備投資の伸びは前年比+7.9%にとどまり、既往ピークの2018年度の水準には届きません。実質ベースで日本の設備投資が既往最高を更新するには、民間企業設備投資の呼び水となるような政府の支援策も必要でしょう。
海外で新たな産業政策が台頭している中で日本は、足元の円安で国内回帰を決断しやすい環境にあります。政府は気候変動対策や経済安保、格差是正等の将来の社会・経済課題解決に向けてカギとなる技術分野や戦略的な重要物資、規制・制度等に着目し、国内の強みへの投資を促す支援策が今まで以上に必要となってくるでしょう。
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