好パフォーマンスが長期化するクレジット市場

 先週のFOMC会合とECBのドラギ総裁講演では、いずれも目先の金融緩和予告が明白に打ち出された。米国でも欧州でも直近の経済指標が極端な悪化を示してはいないだけに、両中銀のハト派スタンスは先行き不透明感増大に先手を打つ予防的な保険と受け止めてよいだろう。こうした先見的な緩和バイアスは中銀が金利正常化を準備し始めた2018年とは真逆の動きであり、クレジット市場のスプレッド縮小を後押しし、かつ高パフォーマンスを長期化させる材料とされよう。つまり、リスクオフ材料に対するバッファーを強化することになる。

注意点としては、世界的にGDP成長見通しが必ずしも明るくないことと、先進国間の関税引き上げ問題などの地政学的な不確定要因を抱えていることであり、後者の領域のサプライズがスプレッドの急激な拡大をもたらすリスクはある。とはいえ、こうした地政学的リスクは、政治的な思惑で右往左往させられることになるがゆえ、政治的な判断が金融緩和の深掘りを促進させる可能性もあり、悩ましい。

G20の行われる大阪に各国の大物が集う日が近づく。大阪は当然のこと、東京でも、駅構内のごみ箱の封鎖やコインロッカーの使用禁止など徐々に厳戒態勢モードが取られ出した。日本でも、参議院選挙の告示が視野に入るなど、政治的な動きは顕著になりつつある。

しかし、やはり、グローバル経済において最大の注目は米中貿易戦争の行方であり、目先G20においては、トランプ‐習近平氏の交渉がどう出て来るかに尽きる。基本シナリオとしては、少なくとも2020年の米大統領選挙までは「2国間の恒久的な合意に達することはないがこれ以上の悪化もない」と見るのが妥当であろう。

米中貿易戦争がさらに悪化しないことを前提とすれば、先進国中銀の先見的な金融緩和がリスクオフ材料を十分に相殺してクレジット市場の支えとなることになる。特に、金融緩和が成長を少しでも押し上げた証左が出てくるならスプレッドの縮小が定着することも視野にいれておかねばならない。

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