深まるのか、デジタル通貨「リブラ」をめぐる議論
デジタル通貨「リブラ」について、6月中旬にその構想がリリースされ、7月には米議会での公聴会が開催されたことで、大きな話題になりました。仮想通貨、ビットコインなどに関しては2017年の高騰から暴落までの一連の経緯を経て、更に流出事件などもあったことで、ネガティブな印象を持つ人もまだまだ多いと思います。
ただ今回は世界で27億人が利用者を持つフェイスブックが主導しているということもあり、希望に満ちたニュースとして受け止めた人も多いのではないでしょうか。世界中の貧困地域などでまだ銀行口座を持ってない人にとって、経済活動に参加することを可能にするリブラは、実現したら本当に素晴らしいことだと思います。
7月下旬に市場関係者を対象に行われたアンケート結果によると、リブラについて「賛成」と「条件付きで賛成」」を合わせた回答は66.4%に登るとのことでした。
正直、ここまでの「前向き」な受け止め方を見て、個人的には驚きを隠せませんでした。
金融情報会社QUICKが(7月)24日に公表したアンケート結果によると、米フェイスブックが2020年前半にサービス開始を目指すデジタル通貨「リブラ」について、市場関係者の6割超が前向きに評価していることがわかった。「賛成」(全体の32.9%)と「条件付きで賛成」(同33.5%)の回答を合わせると66.4%だった。「慎重であるべきだ」は29.4%、「反対」は4.1%にとどまった。調査は22~23日にQUICKの金融情報端末内の特設サイト上で実施。金融機関などに勤める市場関係者343人から回答を得た。
実際、リブラがもたらす懸念点は様々な報道でたくさん挙げられています。
①フェイスブックに対する不信(過去の個人情報の流出問題など)
②既存国際金融システム、法定通貨への脅威
③マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ・犯罪への利用のリスク
④リブラ協会のガバナンスの問題
⑤各国、国際組織などでの法規制整備がまだ整ってないこと
⑥米国内での規制が曖昧なためにおこるイノベーションの国外流出リスク
ごく一部を挙げただけですが、世界中の金融政策関係者、政治家、法規制当局、技術者コミュニティなどにおいて、今後膨大な検証・開発作業が求められることと思います。
海外のニュースを眺めてみると、日々リブラ、ブロックチェーン、ビットコインをめぐる議論、新しいニュースが繰り広げられていることに気づきます。議論の中で新しい視点を得たり、技術動向を学ぶこともあると思います。また既存の金融システムの不備、求められるイノベーションのヒントも得られるのではないでしょうか。
世界で27億人の利用者を持つフェイスブックがリブラ計画をリリースしたことで、ブロックチェーン、暗号通貨、ビットコインなどの意味、未来のお金や社会のあり方について考えるきっかけをもたらしたことは、とても評価に値すると考えます。
一方で、懸念点と感じることがあります。どうしても海外発で起きている事象ゆえ、国内で議論する際の仮想通貨、ブロックチェーンなどに関する基本的な共通理解・言語、情報が圧倒的に少ないことです。特に大手メディアにおいては、どうしても大きなイベントがある時のみの限定的な報道になってしまいがちなのではないか、とも感じます。ただ国内でも専門メディアとして「コインデスク」、「コインテレグラフ」「コインポスト」「あたらしい経済」などにおいて、日本語で国内外の「クリプト業界」動向が日々紹介されています。組合せて情報収集することが必要になることと思います。
国内大手メディアでの報道のみを見ていると、ブロックチェーン、ビットコインなどをめぐる大きな動き、そして既存の経済金融社会システムに対するアンチテーゼとして議論されている、非中央集権型で分散化された社会を巡る大きなトレンドを見逃したり、見誤るリスクすらあるような気がします。
今回「 #Libraを私はこう評価」という「日経COMEMOテーマ企画」を見つけて記事を書いてみようと思ったものの、実際に何を書くか、とても悩ましいものでした。中途半端な知識で扱えるテーマではないのではないか、という懸念、また海外含めると既に様々な議論が行われているにも関わらずそれらを俯瞰的に理解できてないことが理由です。
今後どのような議論がこのお題で行われるか、とても楽しみにしています。同時に感じるのは、議論を深めるための基礎情報、共通理解をもっと積み上げていく必要があるのではないか、という問題意識です。
ケンブリッジアナリティカ事件を扱ったネットフリックスのドキュメンタリー映画『グレートハック』などは、フェイスブックの信頼性について議論する際の前提知識として、より多くの人の眼に触れる必要があると考えます。そんな思いから先日紹介させていただきました。まだの方はぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。
その他、リブラとテロ・マネロンとの関係に関しては以下のような記事がとても参考になりました。併せてリンクをご紹介します。
ともあれ、来年以降のリブラの登場を控え、自分なりに 情報収集をしたり、学びを書き記すことで、議論のインフラづくりに貢献できれば、と思いました。更なる議論の深まりを期待しています。
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