副業をイノベーションの起爆剤に 〜「コンビニのレジ打ちバイトは無駄」なのか〜
今年を表すキーワードの一つに、「副業」あるいは「複業」があげられると思います。副業禁止が当たり前であった日本で、社会が大きく副業解禁に向けて動き出した年。
副業に関する記事もたくさん見かけました。そういう記事に共通する傾向として、「時間の切り売りに過ぎない単純労働を副業にすることは止めよ」というものがあります。例えば、日経でもこんな記事がありました。
確かに、さして時給も高くない単純労働をしたところで、収入もあまり増えないし体力を消耗するだけ、というのは、一理ある話です。典型的なものとして、コンビニでのレジ打ちバイトが挙げられている記事を、これまで何度か見かけています。
でも、本当に「コンビニのレジ打ちは、やるだけ無駄」なんでしょうか。
マーケティングマインドのある人なら、自分がレジ打ちを担当しているお店の場所や時間帯で、どんなお客様が何を買っていくのか、生のデータに接する機会として活用するなら、少ないとはいえ、お金をもらいながらリアルな経験を積む機会として活用できるかもしれません。
あるいは、大きな店で、他にもバイトの店員さんがいる店なら、そこに働く外国人と仲良くなることで、外国語を練習する機会になったりするかもしれません。そういう外国人の中に、本国に戻れば超がつくエリートである留学生が混じっていたりすることも(少なくてもかつては)あり、そういう人と友達になれたら、外国語練習以上のプラスがあるかもしれません。
新製品が好きな人にとっては、コンビニに配送されてくる新商品をいち早く目にすること・手にすることが楽しい、ということもあるかもしれません。
同じ「レジ打ち」のバイトでも、そこに何を見出すのかによって、払われる時給だけでは測れないプライスレスな経験が得られる可能性があると思うのです。
そして、本業の仕事から離れ、違う業種の異なる職種の仕事を副業にすることで、新たな気づきを得て、本業を新たな視点で捉えてみると、そこには(本業に関する)イノベーションのきっかけが眠っているのではないか、とさえ思います。
自社の将来事業に関してイノベーションを求める企業が多い一方で、副業の解禁には、過労など労務管理上のリスクや企業秘密保持の観点で尻込みしている会社が多いようですが、社員の副業を自社のイノベーションの起爆剤にする、という観点で捉え直すと、一種の研修として位置付けることも可能なのではないか、と思います。副業先を自社事業と競合しないものに限定した上で、副業で得た視点を自社のイノベーションにつながる提案をした社員に一定の褒賞を与えたり、そうした提案の社内コンテストを実施したりすれば、副業する社員の気持ちも変わるのではないでしょうか。そうした提案を実現する方策が用意されていることが大前提ですが。
もちろん、「働き方改革」の名の下に残業代が削られ、実質的な年収ダウンをどう副業の収入で穴埋めするか、という切実な状況があることもまた事実だとは思います。
ただ、時給の額だけを物差しに副業が論じられがちな今の状況を、私はちょっと残念な気持ちで眺めているこのごろです。
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