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投資銀行時代に、上司から株式市場の先を見通すには「新聞の政治ニュース」から読めと言われた事の正当性を、経済学の視点から考える

 

 今、なぜ株高なのか?

 世界的な株高が、続いています。そもそも、株価とは、当該企業が将来的にキャッシュをどれだけ稼ぎ、株主にどれだけ還元してくれるかの金額を、現在の価値にしたものと定義されます。なので、現在の株高は、多くの投資家が下記のような、将来ストーリーを想定しているからと考えられます。

今の景気は冴えない⇒でも、世界中で財政出動と金融緩和&ワクチン浸透しつつ⇒将来的に景気が良くなるかも!投資先の企業がキャッシュを稼げるようになるかも!⇒株主へ配当など還元をしてくれるかも!

 ここで、今回注目したいのは、財政出動や金融緩和をしている、政府や中央銀行の動向です。経験則として、アメリカ、中国という巨大経済大国の政治家が、巨額の財政出動を行うと決断すると、世界中の株価が上昇しやすい傾向にあります。同時に、世界で最も流通している米ドルに影響を与える、アメリカの中央銀行が金融緩和を拡大すると決断しても、同様のことが起こりやすいです。なので、株価、そして株価に影響する経済の先行きを考えるには、世界の政治家が、いま財政出動を従っているのか、株高にもっていきたいのかを考えることが、重要になります。下記の記事でも、バイデン政権の株価に対する姿勢の重要性を説いています。


 なぜ、新聞の政治欄が重要なのか?

 と、ここまでの話は、私が金融機関に勤めていた頃に、上司に何度も口酸っぱく言われてきたことです。しかし、今の株式市場では、AIやアルゴリズム取引が盛んにおこなわれており、政治のことを知ることが株価に影響するの?なんて思う方も少なくないと思います。

 しかし、実は政治や選挙のタイミングと、経済の流れが非常にリンクしていることを、データと計量経済学の手法を用いて実証もされているのです。それが下記の実証研究です。この研究では、1957 年から 2004 年のアメリカ大統領選挙の時期に合わせて、アメリカの中央銀行FRB(連邦準備銀行)が金融緩和のタイミングがリンクし、それが循環していると報告しています。

つまり、FRB議長と、アメリカの現職大統領が同じ党派であると、選挙時期に近づくと金融緩和をする傾向にあることを指摘しているのです。選挙の時に景気が良いと、その党への支持率が高まることが予想されるので、選挙や政権維持と、経済政策のタイミングがリンクしていると伝えたいようです。

Burton A. Abrams and Plamen Iossifov, “Does the Fed Contribute to a Political Business Cycle?,” Public Choice, vol.129, 2006, pp.249-262.


*政治的景気循環論という考え方

 経済学の中には、政治動向と経済動向はリンクしていると考える理論があります。それが政治的景気循環論です。政治家は政権の維持にのみ関心があるという仮定を置いた場合、選挙のタイミングと、財政・金融政策が重なりやすく、経済動向というのは政治家、特に与党の動向に左右されやすいという考え方です。

 経済というと、なんだか国民一人一人の活動が自然と均衡して、景気悪化や景気改善が循環しているようにも見えますが、実は上述のような考え方もあるんですね。株式投資をしている方には、政治的景気循環論な考え方の方が多いと予想されます。相場格言には、「国策に売り無し」という言葉もあるぐらいですし。

 私も、改めて経済と政治の関連性について考慮しながら、実証研究をしたいと思います。投資をこれから始める人も、政治ニュースに関心を持っても面白いかもしれませんね。


ここまで読んでくださりありがとうございます!

いつも応援ありがとうございます!

崔真淑(さいますみ)

(画像は崔真淑著『30年分の経済ニュースが1時間で学べる』大和書房より。無断転載はおひかえください)


↑こちらの動画で株式投資と日経新聞ニュースの関連性についてじっくりトークしています!ぜひ!

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