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リモートワークで浮き彫りになった「共感力」の重要性。必要なのは、感情を共有し合う仕組み。

皆さん、こんにちは。

今回は「リモートワーク時代のコミュニケーション」について書かせていただきます。

シリコンバレーのリーダーたちの間で「共感」という意外な言葉が流行している。共感とは他人の感情や視点、経験を感じ取り、理解する能力のことである。
現在、非常に人気のあるワークプレイスコミュニケーションツールを開発したスラック社は設立当初から「共感」を会社のコアバリューとして掲げてきた。創業者のスチュワート・バターフィールド氏は「共感力がないのであれば、人のために何かをデザインすることは非常に難しい」と感じており、社員にはユーザーの立場で考えて製品を改善する方法を探すよう促している。
同様にマイクロソフトのナデラ最高経営責任者(CEO)も共感が人をよりよいイノベーターにすると感じ、同社の企業文化の再構築を成功させるために、共感をコアコンセプトにしている。同氏はイノベーションとは現状を変えるように挑戦することだけではなく、お客様の声に耳を傾け、そのニーズを理解することだと考えている。「私たちが生み出した最も成功した製品を見ると、お客様の満たされていない、明確にされていないニーズを満たすことができたことに起因しています」と話す。
シリコンバレーでは「ユーザーエクスペリエンス」や「デザイン思考」など、エンドユーザーへの共感や理解に基づいた言葉を使うことが主流になっている。人気のあるツールの一つにユーザーの言動や思考、感情などを理解するための「エンパシーマップ」がある。
共感を重視することは、社内でのやりとりにも当てはまる。スラックでは共感性は採用基準の一部となっている。バターフィールド氏によると「人に共感することができれば、良い仕事ができるはず。共感する能力がなければ、人にフィードバックを与えることも難しいし、人を改善させることも難しい。すべてが難しくなる」と述べている。
共感できる職場であれば労働時間を増やしてもいいと考える人が77%、共感できる職場であれば給料を下げてもいいと考える人が60%という調査結果もある。
また、コロナの流行時にはリーダーはリモートワークでストレスを抱える従業員に共感を示すことがより重要になっている。
米シスコのCEOであるチャック・ロビンズ氏によると、新型コロナのパンデミックの際に経営者が従業員個人に向けて示した共感は、単に一時的な傾向ではなく、今後も続くという。「今回のパンデミックで何かを学んだとすれば、個々の状況に応じて共感しなければならないということであり、それは今後も変わらないと思います」と彼は指摘する。
シスコの経営陣が社員とのコミュニケーションを強化し、自宅などからビデオ会議をすることが増えたため、社員は逆に「会社としての距離が縮まったように感じる」という。ロビンズ氏はたとえ彼らが物理的なオフィスに戻ったとしても、従業員は経営陣からこのようなコミュニケーションの増加を「期待」するだろうと考えている。

引用した記事には、「共感力がないのであれば、人のために何かをデザインすることは非常に難しい」「共感する能力がなければ、人にフィードバックを与えることも難しいし、人を改善させることも難しい。すべてが難しくなる」とあります。

例えば、顧客に対して“共感”しながらサービスを提供する企業のチーム内において“共感”しながら組織の求心力を高めるなど、リモートワークが普及している今の時代においては、より“共感”型のコミュニケーションや“共感”型のマネジメント手法が有効になります。

それでは、具体的にどんな「共感」が必要なのでしょうか。

■共感力が高い人はどんな人か

まず、共感力が高い人とは、「相手の気持ちを察して寄り添い、理解することができる」人だと思います。
これは、コミュニケーションにおいて非常に重要なことで、相手がうまく言葉に表現できない気持ちを理解した上で安心感を与えたり、適切なケアや対策を講じることは、特にリーダーとしてチームや組織を束ねる上では重要なスキルとなります。

共感力が高い人の特徴は、

① 「興味を持つ」
→相手の行動をよく観察したり、相手の関心事に自分も興味を持つ
② 「引き出す」
→自分がしたい話をするのではなく、相手の話をよく聞き、本音や伝えたいことを引き出す
③ 「受け入れる」
→相手の話を頭ごなしに否定せず、肯定をしながら受け入れる
④ 「寄り添う」
→自分の経験や環境を基準に考えるのではなく、相手の事情を察し、理解しようと努力する
⑤ 「支援する」
→相手のために何ができるか、何をすれば相手にとって助けになるかを考える

などが挙げられます。

■共感力を鍛えるには

前述した通り、相手に対して「興味を持つ→引き出す→受け入れる→寄り添う→支援する」のようなループを回せると、共感力を高めることができます

人に共感することが苦手という人でも、以下のようなポイントを意識すると良いかもしれません。

・相手との共通点を見つける
・相手が何を考えているか、何を話そうとしているか想像する
・相手と同じもの(情報)を見て、同じ視点に立つ
・自分が話す量を減らし、聞き手にまわる
・相手の言葉を頭の中で反復させ、感情移入する
・お互いに喜怒哀楽を共有する
・自己開示をして相手にも興味を持ってもらう

よく、「人に興味がない」「相手が何を考えているか理解しなくても仕事はできる」という人がいるかもしれませんが、たしかに仕事を円滑に進める上では、相手の感情に寄り添わなくても特に大きな問題は起こらないのかもしれません。人間関係のトラブルに巻き込まれることも少なく、ストレスを抱えず、周りにも流されず、冷静に淡々と仕事もできるでしょう。

ただ、組織に属して仕事をする以上は、一人だけで業務が完結することはほぼありません。チームで高いパフォーマンスを出すためにも、「共感力」を磨き、お互いに信頼し合える状態を構築していた方が良いと言えます。


■必要なのは、感情を共有し合う仕組み

コロナ禍においては、ただでさえ感染への不安や、日常生活で様々な制約を受けることでの疲労が蓄積され、さらには人とのコミュニケーションに対してもストレスを感じる人が増えています。
そんな時こそ従業員に対して、“共感”を示すことへの重要性は今まで以上に増しているのです。

例えば、リモートワーク一つとってみても、「移動時間が削減されて生産性が上がる」と感じる人がいる一方で、「自宅だと集中できず効率が落ちた」という人もいます。
「仕事とプライベートのどちらの時間も確保できるようになった」と言う人がいる一方で、「メリハリがつけられず、結果的に業務時間が伸びている」という人もいます。

個別事情によって、リモート環境も仕事の進捗度合いもリモートワークに対する考え方も異なるのに、マネジメント側の相手への“共感”や“歩み寄り”がなければ、その時点でコミュニケーションが成立しません

「皆がリモートワークだと集中できると言っているのだから、もっと効率的に仕事できるだろう」とか「家で本当に仕事してるのか。一日何をしていたか細かく報告しろ」など、“リモハラ”ともとれる言葉が上司から出ている会社は、危険信号です。部下の仕事ぶりや、何で困っているかなど、物理的な距離によって見えないものがたくさん出てくる状況下では、“共感”がなければ、信頼関係を築けないことは明白です。

リモートワークにおけるコミュニケーションの課題を感じている人は多いと思いますが、その多くが「ただコミュニケーションの量を増やせばいい」という発想になってしまいがちです。
もちろん「1on1面談の実施」や「雑談の時間をとる」、「オンライン飲み会をする」など、コミュニケーションの量を増やす施策を実行することも大事ですが、リモートワークが普及・定着し、そして“活用”していくフェーズに移行された今こそ、量よりも質を向上させることに目を向ける必要があります

コミュニケーションのあり方が大きく変わる中、リアルに対面で話さなくてもオンラインで十分コミュニケーションをとることは可能になりました。利便性が高まり、気軽で身近なコミュニケーションツールもたくさんあります。ですが、コミュニケーションが人と人とによるものである以上、これまで以上に想像力を働かせて工夫しながらコミュニケーションをとる必要が出てきていることもまた事実です。
今のようなデジタル時代にこそ、「感情」をしっかり伝え合う必要が出てきているのだと思います。

相手の感情や価値観を引き出し、寄り添い、そして支援するといった、個人の感情を共有し合えることがベースにあるような組織を作っていかないと、ビジネス上の成果の出し方が小さくなってしまうことは間違いないと言えるでしょう。

■これからのリーダーシップのあり方

タテ社会の意識が強い日本では、これまで強い権力を持ったカリスマ的なリーダーが目立ちやすい傾向にありました。ですが、一方的に支配する、指示するといった、トップダウン型のコミュニケーションやリーダーシップでは、社員の自発性や自主性、アイディアや想像力を奪うことにもなりかねません。

これまで述べてきた通り、今求められるのは、社員と同じ目線に立ち、個々の能力を引き出す「共感型」のリーダーシップです。社員の気持ちを理解し、寄り添い、共感し、対話をし、感情を動かし、支援することができるリーダーシップこそが、これからのリーダーに必要なスキルであると言えると思います。

こういった感情に寄り添うマネジメントが求められていることが分かっていても、それを実行し、持続させることは簡単ではありません。まずは少なくとも、社員とのコミュニケーションの内容や手法が今のままでいいのかと、定期的にモニタリングし、常に改善させていくことから始める必要があります。

少し例えがおかしいかもしれませんが、ある日突然、遠距離恋愛になると、相手の不安を取り除こうとコミュニケーションの方法を工夫したり、相手が今どんな心境かを察しようと想像力が働いたりすると思いますが、それに似ているかもしれません。

相手の状況を想像し、人間の心に向き合うリーダーシップが、リモートワーク時代にはより一層求められるのではないでしょうか。


#日経COMEMO #NIKKEI

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