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経産省 未来対話MAPから考える20年後の働き方【日経未来面×COMEMO_遅刻組】

前回に引き続き、既に募集締め切りを過ぎてしまっていますが、日経COMEMOで募集されていた「#延長線上にない日々」というテーマ募集に便乗して、考察していきたいと思います。学生の皆は、提出物は遅れないようにしましょう。おまいう

生産性の低い人は自分の生産性に気付いていない?

AIに代表されるテクノロジーの進化のスピードは早く、社会は劇的に変化しています。つい数年前を思い返せば、12年前にDropboxがクローズドベータを開始するまでは世の中にクラウドストレージというものは存在せず、13年前まではスマートフォンは存在しませんでした。今や、どちらも私たちの生活でなくてはならない存在です。

GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)のサービスを一切使わずに生活するという実験を行った日経新聞の記事では、仕事の生産性が3分の1に低下し、普通に生活することすら困難になったといいます。

この記事の内容は、GAFAの影響力がすごいと感心するだけではなく、生産性に対する気付きを与えてくれます。この状態の裏を返すと、普段からテクノロジーを活用していない人は、テクノロジーを活用する人から見て3分の1の生産性で動いているように見えるということでしょう。そして、3分の1の生産性で働いている人は自分の生産性が低いことに気が付いていない危険性が高いです。なぜなら、すべてを部下や秘書がお膳立てしてくれる大企業役員ならまだしも、通常は自分の生産性に敏感であればテクノロジーを使わないという選択肢はないためです。

それでは、なぜ生産性に雲泥の違うが生まれているのに、生産性の低い当事者は危機意識が低いのでしょうか。そこには、変化に対する認識の違いがあるように思われます。

変化は「劇的」か?「漸進的」か?

新しい取り組みや先端事例を紹介すると、「そんな急には変わることができない」というコメントを見かけることがあります。たしかに、民主主義に基づいた国家運営のようにスピード感をもって変化することが難しい組織もあります。しかし、社会や産業の変革という目線で見た時、歴史は「漸進的」ではなく「劇的」に訪れることが多々あることを教えてくれます。

例えば、T型フォードが誕生した1908年時点で米国全体の自動車生産台数は約7万台、15年後の1923年にはT型フォードだけで年間200万5千台の生産を突破しました。T型フォードの登場とベルトコンベア方式の大量生産方式は、それまでの米国における交通・輸送事情を数年で激変させてしまいました。

企業内における変革も、1度軌道に乗ると急速に進行することを歴史が教えてくれています。自動車産業の黎明期では、元々は米国最大規模の馬車メーカーであったGMが自動車事業に切り替えてから、わずか4年で米国を代表する自動車ブランドとなりました。ネットワーク科学の世界的第一人者、アルバート=ラズロ・バラバシ教授によると、ビッグデータ分析の結果からも、社会変革を伴うような影響力の大きな変革は急速なスピードで進んでいく傾向にあると述べています。近年の例ですと、スマートフォンやクラウド技術が当てはまるでしょう。どちらの技術変革も、現代社会ではなくてはならないものになりました。

このように、歴史を紐解いてみると大きな変革は急速に普及することがわかっています。しかし、変革は突然起きるのかというとそうではありません。多くの場合、変革の前段階として準備期間と言えるような開発や試行錯誤で莫大な時間と労力を費やしていることが多いです。また、技術革新も突然起きるのではなく、きっかけとなる基礎研究があってこそ生じていきます。つまり、このような大きな変革を生み出すであろう予兆を捉えることで、社会がどのように変化していくのかを予め見据えることができます。

経産省の未来対話マップ

一見、延長線上にはないように見える変革でも、予兆となる準備期間や基礎研究の動向を抑えて置くことで変化に備えることが可能です。そのような変化の未来を予測し、議論をするための素材を経済産業省が「未来対話マップ」として提供してくれています。

未来対話マップ

未来対話マップからみえる4+1の方向性

経済産業省の未来対話マップでは、2050年までに起こるであろう変化について、5つの領域(ヘルスケア、モビリティ、フィンテック、働き・学び、地域)から50シナリオを描いています。紙面の都合上、この50シナリオを全て紹介することは難しいので、こちらのリンク先からご参照ください。

50シナリオを見ていると、将来の変革を生み出す兆候として4つの方向性があることが見て取れます。

方向性① 身体×テクノロジー

1つめの方向性は「身体×テクノロジー」です。シナリオ42「身体機能の拡張がスタンダードになる社会」に代表されるように、生身の肉体よりもテクノロジーで人工的に手に入れた肉体のほうが優れた性能を発揮する世界観が提示されています。このことは、五輪競技の文脈でもよく語られます。というのも、義足の選手が世界記録を更新する社会が遠からず訪れることが予測されているためです。

このことは驚くことではないでしょう。AIの発展により、すでに人類はインテリジェント・スポーツと呼ばれる競技(チェス・囲碁・将棋)で機械に勝つことができなくなっています。

そうなると、映画『ターミネーター』で描かれた世界のように人類は尊厳を保つために機械と血で血を洗う争いをするようになるのでしょうか?

それとも、藤井聡太棋聖が「今は対決の時代を超えて、人間とAIは共存という時代に入ったのかなと思います」と語るように、AIは人類の良き隣人であるのでしょうか?

この疑問に答えるのが、方向性②となります。

方向性② ターミネーター型か?ドラえもん型か?

ターミネーター型の世界観をほうふつとするのは、シナリオ47「AI統治社会」です。人間が担っていた仕事は機械が従事するようになり、政治・行政・司法といった共同体維持の意思決定もAIが担うことになります。ターミネーターというより、アニメ『サイコパス』の方が近いでしょうか。

まさか映画やアニメでみられるような重要な意思決定までAIが担うようになるとは思えない。そう考える人も多いでしょう。しかし、この現象は既に一部では始まっています。例えば、日本ではまだほとんど見られませんが、いくつかの欧米企業では採用業務における重要な意思決定(合否選抜)にAIによる判断が用いられています。人間の意思決定よりも、AIの方が精度が高いと見做しているのです。

ここまで高度なモノでなくても、もっとアナログな段階で、日本企業も同じことをしています。例えば、昭和の時代には学歴(学校歴)で就職先が決まったり、現在では適正テストの結果で合否が判断されることも少なくありません。人間の意志を介することなく、機械的に判断するという意味では、程度の差こそあれ、構造だけを見ればAIによる意思決定と同じプロセスを辿っています。

また、AIが人類の上位者となるのではなく、あくまでパートナーとして寄り添う未来も予想されています。シナリオ38「AIがパートナーになる生活」です。そのほかにも、ナノテクノロジーの進化によって、健康管理を機会が担うシナリオ32「ナノ・コントロール医療社会」も当てはまります。このように、人類が意思決定者としての権限を持ちつつ、その意思決定を支える立場としてのAIとの共存が予測できる未来です。そこは、ドラえもんとのび太のように、パートナーシップが人間と機械の間で結ばれた世界と言えるでしょう。

方向性③ 「所属」という概念がなくなる

Youtuberに代表されるように、組織に所属することなく職業人生を歩んでいくという選択肢が当たり前になってきました。ほんの10数年前までは、誰も予想することができない働き方です。エンターテイメントの世界だけではなく、通常のビジネスでも特定の組織に所属することなく、生活をしている人々がいます。彼ら彼女らは、アライアンス(提携関係)という企業と個人が対等の関係で労働契約を結び、自らの付加価値を企業に提供します。リンクトインの創業者であるリード・ホフマンが著書『アライアンス』で描いた世界観です。

この世界観を支えるのは未来対話マップにおける、シナリオ21「誰もがプロジェクト単位で働く時代」です。プロジェクト単位で働く社会では、個人のキャリアはどの組織に所属しているのかではなく、どのようなプロジェクトで価値を発揮してきたのかという行動記録が基盤となります。

そうすると、個人は自分の才能を多様な面で発揮することができるようになります。人気のあるyoutuberでも、本業をほかにもってマルチプレイヤーとして活躍している人が多くいます。伝統的には、小説家がそうでしょう。複業が当たり前となります。その結果、シナリオ39「労働力のマルチプレーヤー化」が新たな常識となるでしょう。

方向性④ 「個」で完結できる生活

方向性③にあるように、どこにも所属しないということは、自分の人生の責任を自分がすべて負うということです。こうやって文章で書いてしまうと当たり前のことですが、実現しようとおもうと難しい生き方です。このような生き方を突き詰めると、公生活も私生活も、個人の活動だけで完結させることができるようになります。

未来対話マップでは、シナリオ12「全員が地域課題に取り組む時代」、シナリオ24「全員先生・全員生徒の寺子屋社会」、シナリオ29「ホームメイド食物の時代」などが挙げられます。

自分で責任を負うことは精神的な重圧も大きく、自立心が求められます。当然、そのような強い心を持った人ばかりではありません。そのため、「個」で完結できる生活に適応できる人、適応が難しい人の双方がいることを前提として社会の在り方を考えていく必要があります。

未来対話マップにはない5つ目の方向性「宇宙」

また、未来対話では描かれていませんが、私たちの生活を大きく変えるテクノロジーがあります。イーロン・マスクに代表されるミレニアル世代の起業家の多くが、宇宙ビジネスに強い関心を示しています。日本では、ZOZO TOWN 創業者の前澤氏や堀江貴文氏のインターステラ・テクノロジズが有名です。

現在の技術では、宇宙に行くまでに莫大なコストがかかります。そして、安全性も担保しきれてはいない状態です。しかし、次なるフロンティアとして、宇宙開発に乗り出そうという動きは活発化しています。

宇宙が身近になった世界で、私たちの生活はどのように変化するのでしょう。良く言われているのが、エネルギー問題の解消でしょう。宇宙空間に広げた太陽光パネルからのエネルギー供給によって、化石燃料や原子力に頼る必要がなくなります。また、SFドラマの『スタートレック』のように宇宙探索という新しい冒険が待っているかもしれません。

どの方向性で価値を発揮していきますか?

社会の変革に気付いたときには、私たちは猛スピードで変化に迫られます。2020年は、COVID-19 によって、テレワークやオンライン授業など、一気にデジタル・トランスフォーメーションへの対応が求められました。そして、この変化は不可逆のものになるだろうと言われています。

このような急速な変革に右往左往し、変化についていけずに衰退していく未来は望ましくない予測でしょう。そのためにも、近い将来に大きな変革を生むであろう兆候を見逃さず、常に準備していくことが個人にも企業にも求められていると言えるでしょう。







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大分大学経済学部の講師をしています。採用や育成などのタレントマネジメント、地方創生・地方発起業などの話題を取り上げていきます。※日経電子版キーオピニオンリーダー ※多様な意見を尊重したく、コメント返信は原則控えています。質問はTwitter(@IkariOita)へお願いします。