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ESG投融資に必須のD&Iと女性活躍推進〜英グローバル企業の「女性リーダー育成プログラム」に参画して学んだこと

大学院入学のため渡米、そのまま米国シリコンバレーにてキャリアを積み、米国Yahoo!本社のバイス・プレジデント、ベンチャーキャピタルなどの経験を経て、現在は、シリコンバレー拠点の日米クロスボーダーの投資及び事業開発の会社、アンバー・ブリッジ・パートナーズを経営しています。米国シリコンバレーより、ウェルビーイング、テクノロジー・トレンド、ESGなど、ホットな情報を発信していきます。

ESG投融資で注目されるDiversity & Inclusionって何?

近年世界中で成長傾向にあるESG(環境・社会・企業統治)投資が、コロナ禍で更に急増しました。機関投資家が投資の判断をするにあたり、ESGに配慮した投資に注目が集まっています。この背景には、Environment(環境)、Society (社会)、Govenance (企業統治)を含む社会全体への影響を包括的に勘案しなければ長期的な経済成長や投資利益は得られないとの認識が常識になりつつあるからです。

日本では、環境に配慮した投資が特に注目されていますが、欧米ではダイバーシティ&インクルージョン(Diversity & Inclusion、D&Iと称される)がとても重要な要素とみなさており、各企業が多様な人材が活躍するための環境や企業文化を醸成するべく懸命に努力しています。ダイバーシティは、日本語で「多様性」という意味で、企業におけるダイバーシティとは、性別や年齢、国籍、文化、価値観など、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を活用することで新たな価値を創造・提供する、成長戦略とみなされています。インクルージョンは「受容」という意味で、企業におけるインクルージョンとは、従業員がお互いを認め合いながら一体化を目指していく、組織のあり方を示します。従業員一人ひとりの多様性を受け入れることに加え、組織の一体感を醸成することで成長や変化を推進する取り組みがD&Iです。

D&Iは、中長期的な観点からみると、企業価値を高め、社会全体の経済成長にも寄与するという認識は欧米の投資家の間では常識になりつつあります。

英国上場グローバル企業 S4 CapitalのESGの取り組み

Yahoo Inc.にいた頃、世界最大の広告&PR会社のWPPについてよく話題になり、WPP創業者兼CEOであるマーティン・ソレル卿という超やり手の実業家の手腕についても何度か耳にすることがありました。そのソレル卿がWPPを去り、S4 Capitalというデジタル広告&マーケティング・サービスの会社を立ち上げました。ご縁をいただき、S4 Capitalの社外取締役を拝命し、ソレル卿とお仕事をさせていただいています。

S4 Capitalはロンドン証券取引所にて上場し、世界の主要都市でビジネス展開をするグローバル企業です。ソレル卿の名は世界中で知られていることから注目度も高く、しかもグローバルにビジネスを展開しているため、ESG対応は必須です。ソレル卿の号令で、昨年よりESGに熱心に取り組んでいますが、なかでも力をいれているのがD&Iです。

S4 Capitalは、D&Iのために2つのプログラムをスタートしました。ひとつは、女性リーダー育成プログラム。もうひとつは、有色人種の学生に有料インターンシップの機会を提供するフェローシップ・プログラムです。私個人がD&Iに興味をもっていることから、このふたつのプログラムに参画し、社外取締役としてサポートしています。

UC Berkeleyとタッグ〜「女性リーダー育成プログラム」

全米の公立大学でNo.1にランクされるUC Berkeley校。S4 Capitalは、UC Berkeleyとタッグを組んで、6ヶ月間のプログラムを今年3月より開始しました。参加者は、30−40代の女性リーダー50名。ワーキング・マザーも多数です。

プログラムは3つの課題に分けられ、①自分のリーダーシップスタイルを理解し、②いかにパーフォーマンスの高いチームを作り上げていくか、③いかに戦略的かつ効果的にチームを牽引していくか、について学びながらリーダシップスキルを磨いていくようにデザインされています。それぞれの課題につき、4−5の講座(各90分)が用意されており、社内外からのエグゼクティブが講師を務めます。私もこの講師のひとりとしてなんどかお話させていただいてます。

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「共感の時代」にマッチしたリーダーシップとは

米国を中心とした世界中のS4の女性リーダーと話をしていると、世界の女性リーダが抱える悩みは同じだなあと実感せずにはいられません。特に、30代の女性リーダーは、仕事と家庭(特に子育て)のバランスを取るのに苦労し、やるべきこと、やらなければいけないことの優先順位をつけるのに頭を悩ませています。リーダーとしての経験が長い40代の女性リーダーの悩みの多くは「社会と会社が常に変化していく環境のなか、どのように戦略的かつ効果的ににチームを牽引していくか」で、これは男性リーダーから相談を受ける内容と全く同じです。

リーダーシップのあり方は時代により変化していくものです。今年の世界経済フォーラムのダボス会議で、デロイト社のグループCEO Punit Renjen氏が「世界30万人の社員の80%はミレニアル&Gen Z世代。この世代はウェルビーイングが最重要としているため、会社とリーダーシップのあり方も柔軟に変化してかないことには、優秀な社員を雇用出来ない」と述べていました。

ミレニアル & Z世代に求めれるリーダーシップ像は、「価値観を共有し、繋がることでチームを動かしていく」ことの出来る柔軟なリーダーシップ像です。コミュニケーション力、共感力、利他力、直感力、誠実さが必要とされ、リーダー像やリーダーシップの概念がより「女性的」と分類される価値へと変わりつつある今、女性リーダーが活躍出来る時代が来たのでないでしょうか。これまでの、野心的、競争的、支配的なリーダーシップ像は「男性的」ととらえられ、女性の経済界への参入を困難にしてきましたが、これからは女性リーダーにも多くの機会がもたらされることと思います。

「女性リーダー育成プログラム」でお話をさせていただくと、「メンターになってください」とお願いされることがあり、私の経験が少しでもお役に立てればと引受させていただくこともあります。彼女たちの話を聞いていると私自身が勉強になることも多く、次世代のリーダーの背中をそっと押して上げる役割をしつつ、「一緒にお仕事したいなあ」と思ってもらえるように自分をアップデートしていこうと思っています。

世界の土俵で戦うために、D&Iへの取り組みは不可欠

日本でも企業に女性の役員登用を求める動きが高まっているようです。金融庁・東京証券取引所が6月に改定する企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)は女性役員の積極登用を促し、資産運用会社は女性ゼロの取締役の選任案に反対する姿勢を強めると日経新聞の記事にありました。

D&Iは、企業価値を高め、社会全体の経済成長にも寄与するという認識が欧米の投資家の間では常識になりつつある昨今、日本企業がグローバルの土俵で敬意を払われ、対等に戦うためにも、前例を断ち切り、女性リーダーの登用を推めていただければと思わずにはいられません。

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