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成長するスタートアップで産業の新陳代謝は起きるのか?

スタートアップが雇用を生む

ここ10年余りの人材業界で最も大きな変化の1つが、スタートアップ企業への就職のハードルの低さだろう。かつては、ベンチャー企業やスタートアップ企業への就職はリスクのある選択として考えられていた。内定はもらったものの、両親や親族、家族からの反対で入社を諦めたという声も珍しいものではなかった。いまでもまだその風潮が完全に消えたわけではないが、スタートアップ企業への就職は当たり前の就職先として考えられるようになってきたように思われる。
日本経済新聞の記事によると有力スタートアップ132社の雇用は2年で5割増と急激な伸びをみせている。スタートアップ企業は成長フェーズに入ると急速に事業規模が拡大する。事業規模の拡大に応じるために、大量の人材を獲得する必要が出てくる。

スタートアップ企業が大企業よりも好待遇?

米国や中国のスタートアップ企業をみていると、先進的な働き方や充実した福利厚生、そして高収益は伝統的な大企業ではなく、スタートアップ企業からもたらされることが多い。典型的なのは、GoogleやNetflixだ。
これには、ブランド力のないスタートアップ企業で大企業並みの人材を獲得しようとするとそれ以上の条件を付けなくてはならないといった市場原理や、既存の仕組みがないことと事業成長しているという後押しが好条件を出しやすい環境を整えているなど、様々な要因がある。
日本の場合は、米国や中国ほどではないものの、それでもしかるべきポジションに優秀な人材を採用するために好待遇を準備しようという同じロジックが働いている。特に人材獲得競争の激しいエンジニアでは、近い将来には更に激化して、優れた専門性を持ち、卓越したパフォーマンスを発揮するスター人材にプロスポーツ選手のような条件が提示されるようになるだろう。諸外国ではすでに起こっており、日本でも一部ではみられる現象だ。
そうすると、成長意欲や挑戦心に溢れた若者を中心として、スタートアップ企業への転職を志向するケースが増えるだろう。大企業からも、中堅で優れた業績を出している社員が社外での挑戦の機会を求めてスタートアップ企業へ転職するというのも珍しくはなくなっている。

挑戦するならスタートアップ、安定なら大企業でいいのか

今や、東大でも外資系企業よりもスタートアップ企業を志向する学生が増えているという。挑戦するのであれば、すでに大企業として成功した企業ではなく、ゼロから創り上げて成長中にある企業で経験を積んだ方が自分の成長に繋がり、市場価値を上げられるとみられている。
当然、スタートアップ企業は、大企業と比べて様々な制度や環境の整備が追いついておらず、労働環境は過酷になりがちだ。それをわかっている若者は大企業を志向するようになる。
このような大企業とスタートアップ企業での住み分けが行われてくると、歴史的には企業や産業の新陳代謝が起きやすくなる。企業の付加価値ランキングの上位が入れ替わるのだ。米国では時価総額ランキング上位の企業はその半数以上が10年後には見なくなるとも言われているが、日本でも同じようなことが起きかねない。
だが、日本のスタートアップ企業にも課題はある。1つは、資金調達力の問題だ。日本の投資市場は欧米や中国・インドと比べると規模が小さく、グローバル規模でみると大きくなりにくい。2つ目は、グローバル化の課題だ。日本の市場に最適化されたサービスを展開するスタートアップ企業が多く、グローバル化に課題を抱えている企業も少なくない。
しかし、国際的なビジネスの舞台で日本企業の存在感が低下している中、成長を遂げている日本のスタートアップ企業には、是非、次世代の担い手となり、産業の新陳代謝を進めてほしい。

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