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男にはもともと結婚願望なんてないし、告白もできない

新聞もテレビも「結婚したい男女は9割」という言説を取り上げて「9割も結婚したがっているのに未婚が増えるのは男がだらしないからだ」と言いたがりますが、そもそも「結婚したい人9割説」は大嘘です。結婚に前向きなのは男4割、女5割で、これは30年間ほぼ変わりません。

マイナビウーマンの連載2回目は、その件について書きました。

読み応えありますので、ぜひご覧ください。

恋愛離れとか草食化とか…そういう時代によって男女の価値観が変わるみたいな言説を、何のエビデンスもなく説教チックに語る大人こそ害悪でしかないと思います。

僕はずっと「恋愛強者3割の法則」を提唱しています。もちろん、妄想ではありません。地道な調査及びエビデンスを提示した上での話です。

そういう意味では、いつの時代も恋愛や性に積極的な人は3割くらいはいます。でも、逆に言えば7割の大多数は違う。

男は元々3割くらいしかプロポーズできないし、男が女に告白する文化なんて80年代以降の刷り込みだし、結婚に必要なのは、そんな強い意志とか精神論とかじゃなく、環境です(経済環境もそのひとつ)。

環境として、恋愛や結婚に対して大きな影響を与えたものこそ、社会的結婚システムとしてのお見合いの衰退です。

そして、案外皆さんが環境だと理解していないもののひとつに、医療の発達による乳幼児死亡率の低下や平均寿命の延びがあります。

それがなんで未婚化や少子化の環境になるのか?

平均寿命というのは、乳幼児死亡率に影響されます。

平均寿命が50歳を超えたのは戦後からですが、だからといって戦前皆50歳で死んだわけじゃありません。江戸時代の平均寿命は30歳台と言われていますが、あの葛飾北斎は7享年90歳です。徳川家康だって73歳くらいまで生きたし、なんならその前の戦国時代でさえ北条幻庵は97歳、その父の北条早雲も88歳、関ヶ原の合戦で名をはせた島津義弘も85歳、毛利元就も75歳まで生きています。今とそう変わらない。

実は0歳時に死ぬ人数が多いから平均寿命が短くなるだけです。

つまり、平均寿命が短い=乳幼児死亡率が高いということであり、産んでも死ぬ数が多いと出生率は高くなるのです。これは歴史人口学的にそう言われています。

何が言いたいかというと、人口学の人口転換(demographic transition)理論によれば、「多産多死→多産少死→少産少死→少産多死」へと進むメカニズムがあり、無意識に人間はそれに支配されているわけです。現代の日本は「少産少死→少産多死」へと移行中です。間もなく多死時代がやってきます。

そういう見えざる環境の力によって、出生はコントロールされているし、そうした出生の事実に基づいて、人は婚姻動機も理屈付けされ、「する必要を感じなくなる」というわけです。

好きだとか惚れたとかで結婚や出産ができるのは、前述した通り3割だけで、残りはそうした環境やメカニズムによって統率されています。このメカニズムについては、後でちゃんと記事化しますが、とにかく、そうした部分を無視して、なんでもかんでも精神論でなんとかなる、なんて思考は通用しません。


「男が告白できない」というと「それは日本の男がだらしないからだ。欧米では…」という出羽守が出てきますが、イギリスやフランスの男もたいして違いはありません。

積極的にアプローチできる男の率は、フランス22.5%、イギリス22.9%と日本の男より少ないんです。スウェーデン男ですら3割に達しない。そんなもんです。


古来から「男が女に告白する」のが常識だと思っている方は、あわせてこちらの記事(「林先生の初耳学」でも紹介されました)もご覧ください。


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