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メタ・コミュニティ事業の可能性 〜「和して同せず、分せず」 B as Community ふたたび

お疲れさまです。uni'que若宮です。

今度、こんなイベントでお話することになりました。


この2年ほどで「コミュニティ」という言葉をよく聞くようになりました。たとえば↓の記事のように、まちづくりも「コミュニティ」的に運営される事例が増え、「地域コミュニティ」にも「単なる住民」とはちがう主体的な関わり方が生まれていますが、こうしたコミュニティ的活動には経営の観点からもあたらしい事業や組織のカタチの可能性があると考えています。

違う場所で個別に進めているのに共通の思想で動いている。そういう時代になってきている


共同運営のコミュニティ集合体『Nesto』

今回のイベントは、先日Nestoの代表・藤代健介さんとお話した時に盛り上がり、「コミュニティ的スタートアップ」というテーマでお話することになりました。

Nestoさんはとても面白い事業をされています。一言でいうと時間や体験を共有することで人と人がつながるコミュニティの実験ですが、

Nestoの中にはたくさんの「リズム」と呼ばれるアクティビティ・クラスのようなものがあり(たとえば道ばたの草花をみつけ生ける「野草一会のリズム」や毎朝の「チベット体操のリズム」など、ユニークなものばかりです)、その参加者同士で「リズム」ごとにコミュニティになっていきます。

この「リズム」は「ホスト」と呼ばれる方がインストラクターのようになって主催するのですが、面白いのは「ホスト」がサービス提供者で参加者が「顧客」という考え方ではなく、双方がコミュニティを運営する「ネイバーズ」として対等な立ち場にあることです。

「ホスト」は主催者でありながら、他の「ネイバーズ」と同じ参加料を払います。そして参加するネイバーズのみんなから集まった資金を元手に、「リズム」の運営がされるのです。(ホストはその資金からインストラクター料を受け取ります)

提供者/顧客ではなく、対等なメンバーとして一緒にコミュニティをつくり、みんなで事業をつくっていく。この考え方は弊社が目指すところとも近く、構想を聞きながら共鳴のような感覚を覚えました。


uni'queが目指す「Business as Community」

かなり前になるのですが、こんな記事を書いたことがあります。

この当時、弊社では(すでに分社化した)YourNailというオーダーメイドネイルの事業を展開していました。このサービスではユーザーがアプリでネイルをデザインでき、そのデザインを他のユーザーが気に入れば、オーダーして実際にネイルとしてつけることができるようになっており、アプリ内にユーザー同士の交流が生まれ、ユーザーが他のユーザーのために貢献したり感謝したりというようなコミュニティ的な互助関係ができています。

この事業をやっている中で、企業や事業もこれからはコミュニティのようになっていくはず、という感覚を強く得ました。いわばB to C → B with C という事業形態の変化の先に B as C(Business as Community)という段階があるのでは、と思ったのです。そしてそれ以降、弊社の組織運営はこれを目指して実験をしてきました。

たとえば、YourNailのトップユーザーの方たちの中にはネイルのデザインやアプリの使用法、ネイルの施術の方法についても、運営である我々よりも詳しく「いわばプロ」とも言える方がたくさんいらっしゃるのですが、ある時、百貨店とのタイアップイベントが名古屋であった際に、そうしたトップユーザーの方々に運営スタッフとしてお手伝いいただき、報酬をお支払いしたのです。プロダクトにも運営以上に詳しいトップユーザーの方たちは大活躍してくれましたが、こうしてユーザーの方に事業を手伝ってもらい報酬を支払うと、そういう方たちはユーザーでありながら提供者サイドでもあるわけで、もはや提供者/顧客という二分法自体があまりなじまないものになってきます。

Airbnbのようなプラットフォームでも、部屋を貸し出している「ホスト」たちは、Airbnbの顧客でもありつつ報酬を受け取るサービス提供者でもあるわけです。こうした事例から企業のあり方自体を同じくプラットフォームとして考えると、いわゆる「従業員」とはほとんど「ホストユーザー」にほかなりません。企業というプラットフォームを利用することによって他のユーザーに対して貢献し、その対価を得ているわけで、従業員は企業というプラットフォームの「ユーザー」でもあるわけです。


こうした考えからuni'queでは、従業員(メンバーと呼んでいます)を雇う/雇われるの関係ではなく、uni'queという器(=プラットフォーム)のユーザーとしてフラットに考え、それぞれが協働して企業体や事業を運営する形を模索してきました。その結果できあがったのがスタートアップアトリエ『Your』です。


スタートアップの「アトリエ」

『Your』はいわゆるインキュベーション事業ですが、資金やアドバイスを提供するだけではなく、実際にuni'queのメンバーが一緒になって事業を立ち上げるところに特徴があります。

そもそもこの事業は、女性起業家の比率が異常に低い現状を変えるために取り組み始めたものですが、

「起業したい」という女性の相談に数多く乗るうち、課題がよりはっきり見えてきました。

「女性は起業家に向いていない」「女性が起業をしたがらない」という「言い訳」も未だにまことしやかに語られることがありますが、そうではなく、たとえば投資家やエンジニアへのアクセスなど環境的に「女性と起業との距離」が遠く、不利なのが原因なのです。

ロールプレイングゲームでたとえるならば、男性が起業する場合、ゲーム開始時点で仲間と出会い武器を持ち、すぐに冒険を開始できますが、女性の場合は、そもそも仲間や武器が一切無く、ゲームのスタートすらできていない状態でした。
女性が起業のスタートラインに立てる環境がもっと整えば、女性向け商品やサービスの開発も今より進むはずです。そこで、ママや複業スタイルの女性が、今の生活スタイルを無理に変えることなく事業を立ち上げられるように、『Your』を立ち上げました。

Yourの仕組みを通じて、女性が将来の起業家の卵としてメンバーと一緒に事業を立ち上げ、独り立ちできるタイミングで外に飛び出し、オーナーシップをもって事業を展開していく。

こうした仕組みで運営をしているため、『Your』はコミュニティ的志向がとても強い事業になっています。各事業オーナーは将来は独立して経営者になることを目指していますから、それぞれに事業価値も違い、自立して運営されています。しかし一方で、各オーナーはそれぞれのナレッジやスキルを生かしてYourの中で協力し合ったり助け合ったりもしながら、メンバーとしてYourをゆるやかに運営し体現してもいるのです。

新規事業を次々生み出すことから以前取材で「スタートアップ・ファクトリー」というタイトルをつけていただいたこともあるのですが、どうも違和感があり、今では「スタートアップ・アトリエ」と呼んでいるのも、こうした個のあり方を生かしつつゆるやかにつながる組織を表しています。


異質性を内包した調和

こうしたコミュニティ的な組織のあり方は、僕が「工場のパラダイム」と呼ぶ20世紀の管理型組織とは大きく違います。

Nestoに様々なリズムのホストがいるように、Yourの事業がオーナーの個性によってちがうように、メンバーは組織のために画一化・規格化されるのではありません。リズムのホストはそれぞれの世界観を、Yourの事業オーナーはそれぞれの事業価値を目指し、それぞれが独立的・主体的に活動しています。

このような組織は企業でいうとアメーバ的な「自律分散型組織」に似ていますが、「ゴールすら共通ではない」のがコミュニティ組織です。アメーバ経営は企業体として共通の目標があり、それをブレークダウンする形で小分けされた組織がそれを「分有」します。しかし、NestoやYourではゴールも独立です。とくにYourの場合、究極的にはそこにとどまらず「自立」して旅立つことがゴールであり、「メンバーはメンバーでなくなることを目指して頑張る」とすら言えます。


それぞれのメンバーがそれぞれの世界を変え方を目指す、といっても、じゃあバラバラでなんでもありか?というとそうではありません。NestoやYourに集っているメンバーはある共通した「空気」のようなものをまとっているのです。そしてその「空気」は創業時に用意されたものというより、メンバーが増えたり入れ替わるにつれ生き物のように変化しながら生まれ続けている「空気」です。

コミュニティ的な組織は、個々の多様性や異質性を従来の組織のように画一化してしまうのではなく、むしろ開花させ、生かします。しかしまたそれによって分離してしまうのではなく、そこになにかメタなつながりが生まれてくるのです。


それは「和」という字に似ているかも知れません。「和」は古くは「龢」という異体字で表されますが、この字の左側は「ふえ」もしくは「ヤク」という古い楽器を表します。↓に写真が載っていますが、

ちがう長さの竹の笛を集めた楽器です。長さのちがう笛は一つ一つちがう音が出ます。違う音が出る笛が「和」を表すことからもわかるように、「和」というのは「ちがい」というのを前提としていて、同じ音だけでは和音にならずユニゾンにしかなりません。「和」ができるのは「ちがうからこそ」なのです。


「和」して「同」せず。しかし「分」せず。


画一的にもならず、分離もせず、ゆるやかにつながるコミュニティ of コミュニティのあり方について、またその事業としての可能性について、Nestoのみなさんとイベントで詳しく語りたいと思いますので、興味がある方はぜひ↓からお申し込みください!




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