昨年7月初旬にフランス政府が、2040年までに国内のガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を明らかにしたのに続き、同月末にはイギリス政府も同様に、2040年までに石油を燃料とするガソリン車とディーゼル車の販売を禁止すると発表しました。こうした流れは欧州だけのものではありません。いまやドイツを抜いて世界第4位の自動車大国となったインドも、英仏に先んじて、2030年までに販売する車をすべてEVにすることを打ち出していたし(但しその後、撤回)、中国も手厚い補助金によりEVやPHVの導入を進めています。
各国が急速に従来型のガソリン・ディーゼル車の禁止を打ち出したのは、悪化する大気汚染や、欧州について言えば2015年に発覚したVolkeswagen排出ガス規制不正問題に端を発するディーゼル乗用車への信頼低下がきっかけででしょう。しかし、世界全体の化石燃料の燃焼に伴うCO2排出量の四分の一は運輸部門が占める現状を鑑み(IEA CO2 Emissions from Fuel Combustion Highlights 2017)、運輸部門の低炭素化の要請も強まっており、こうしたトレンドが相まっての動きだと思われます。
しかしながら、単純にガソリン車から電気自動車に乗り換えてもCO2は減りません。充電する電気の電源構成によっては、排出量の削減にほどんど寄与しないどころか、むしろネット増になってしまうこともあるのです。皮肉なことに、EVを積極的に推進する中国でも、まだ石炭火力比率が高いため、EVよりもHVの方がCO2削減になるのです。目的が低炭素化であるならば、「需要側の電化と電源の低炭素化」を車の両輪として進めなければ意味がありません。
加えて、バッテリーを作る過程でのCO2排出量については、これまであまり議論されてきませんでした。しかしながら、以前見つけたスウェーデンの研究所の試算(”The Life Cycle Energy Consumption and Greenhouse Gas Emissions from Lithium-ion Batteries”)をもとに考えると、テスラのモデル3くらいの大きな蓄電池を製造する過程全体で排出されるCO2は、普通のガソリン車で10万キロ走って排出されるCo2に相当すると考えられます。様々な前提条件などがあるので試算の一つでしかないことは、報告書にも繰り返し書いてありますが、ただ、無視して良いレベルの排出量でもないでしょう。
エコというイメージの言葉で、政策を先走らせることがないようにしなければ、と思います。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-17/PGQFY56JIJUQ01?srnd=cojp-v2
http://www.ivl.se/download/18.5922281715bdaebede9559/1496046218976/C243+The+life+cycle+energy+consumption+and+CO2+emissions+from+lithium+ion+batteries+.pdf
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