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ふるさとの風景を「3D」にする為に出来ること。

振り返ると2019年も色々新しい挑戦に取り組んだ年だったが、
この日経COMEMOの寄稿を始めたのも、個人的な新しい挑戦だった。

TwitterもInstagramもやっておらず、考えを発信することに興味が強くなかった自分にとって、この場で何を皆さんにお伝えすると喜んで頂けるのかと悩みつつ、取り組んできた。

実際書き始めてみると、普段書き物や発信を行っていないだけあって悪戦苦闘、その筋力がないことを自覚する事となったが、来年はもっと皆さんに喜ばれるエントリーを書けるように頑張りたいと思う。

目標は、読者がビジネス領域とカルチャー領域を横断するようなエントリー。

そんな中、先日寄稿した
「クラウドファンディングがIPOするということ」
はお陰様で予想もしていなかった大きな反響を頂くことができて、とても有り難くそして嬉しかった。パーソナルな視座に反応してくれるnoteのコミュニティを実感することができました。

そして、今年最後のエントリーとなることだろう今回は、「#ふるさとの風景」について考えている事を書きたいと思う。
今回【日経×noteとのお題企画】として、「#ふるさとの風景」についての寄稿を依頼いただいた時、地方創生や地域活性化というテーマに対して、私が2019年に出会った体験から考えていくと、大きく1つのキーワードに行き着いた。

ふるさとの風景を「3D」に

MOTIONGALLERYでは、さまざまな地域を元気にするプロジェクトが沢山実行されている。2019年で動いたプロジェクトの中から、まずは2プロジェクをご紹介。

・多摩エリアに「たくさんの出会いや出来事が生まれる」景色をつくる
令和元年の大晦日までクラウドファンディング実行中!
東京都三鷹市に建てられた9坪の家「スミレアオイハウス」は、建築家・増沢洵さんによる「最小限住居」を原型に、小泉誠さんがリデザインした家を、地域に開くプロジェクト。

当時小学生だったスミレさん・アオイさん姉妹の育つ家として名付けられ新築された「スミレアオイハウス」。それから20年経ったいま、ここで新しい動きが生まれようとしている。たくさんの出会いや出来事が生まれる光景を、どうにかこの家をいいかたちで残していきたいという想いが強くあったスミレさん・アオイさん姉妹が、9坪の”宿”として運営していくことを決めた。

正に心のふるさととなっている風景を再現する、そんな素敵なプロジェクト。

・福島に世界で一番美しい場所がある景色をつくる
芥川賞作家・柳美里が、2018年4月に福島県南相馬市小高区の自宅を改装してオープンした本屋フルハウスにカフェスペースを増築し、地域の学生や市民、南相馬市を訪れた人たちとの交流スペースをつくった本屋「フルハウス」。

柳美里さんの南相馬市の自宅が、2度のクラウドファンディングによって大きく変貌・進化を遂げている。「世界で一番美しい場所をつくる」と宣言し約900万円をクラウドファンディングし2018年4月9日、本屋「フルハウス」をオープン。そして今回は約1900万円を集め交流スペースが出来ることになった。

みんなで集めたお金で、みんなが集う風景をうみだす。
1回目のプロジェクトの金額・応援人数を、2回目が大きく上回ったことが、みんなのふるさとの風景となる未来へのうねりを表している。

「出町座」にオープン後に行ってみたら

そしてそんな沢山生まれているプロジェクトの中で、最も私が衝撃を受けたのがこのプロジェクト。

京都・出町柳エリアの商店街に新しいカルチャー発信地を創る為、
映画×本屋×カフェの融合ビル「出町座」を創るプロジェクト。

クラウドファンディングは2017年に行われ、2018年からスタートし、とても盛り上がっている。本当に京都のカルチャー発信地になっている、そんな熱気を帯びる場所になっている。

そんな出町座が完成した姿を自分の目でも見てみたい!と思いちょっとご挨拶に行った事がある。自分が関わっていた映画のご相談もありつつ、映画館運営のリアルやMOTIONGALLERYでのクラウドファンディングの感想などざっくばらんにお聞きしようとも思っていた。

そんな中で、出町座の田中さんから聞いたクラウドファンディングの感想に、鳥肌が立った。

「クラウドファンディングを実行したことで、その町の商圏が2Dから3Dになった」

と。それは、まさにその町の見える風景がクラウドファンディングで変わった瞬間だった。同時に私のクラウドファンディングの景色も変わった。

お店を出すときに考えなくてはいけないのは、2次元のマップを見て、お店から変形〇〇㌔メートル以内にどれくらいの人が行き来するのか。その様な商圏人口を考えて出店戦略を練る。それは映画館や本屋でも同じ。
出町座も当然その様な商圏を考えて、出町座を拠点に選んだ。ところがである。
クラウドファンディングに挑戦し9,413,645円を集めた結果見えたものが、商圏が3Dになった景色だという。一体何の1Dが加わったのか。

それは町の歴史。もっというとその町に住んだ事がある人達の姿。
これまで目に見えなかった”歴史”という1Dはこれまで商圏の文脈で語られる事が無かったが、クラウドファンディングを通じて応援してくれた724人の中に立ち上がったのだ。

地域に映画館や本屋などのカルチャー拠点が有ることが重要だと考えて全国から応援してくれた人達、出町柳周辺に住んでいて出町座の様な拠点を求めていた町の人達。ここまでの応援にとどまらず、驚きは
「昔、出町柳に住んでいた時、学生が多い出町柳に映画館や本屋などの文化に交わる場所が有ったら、もっともっと豊かな経験が学生時代に培われたのではないかと思っていた。もう京都には居ないが、今の学生にその経験をプレゼントしたい」
という思いで、もしかしたらオープンした出町座にずっと来れないかも知れないのに応援してくれた人が少なくなかった。

これはまさに、これまで商圏としては当然加算される事はなかった「その町にいま住んでいない人(お店に来ない人)」が、クラウドファンディングによって商圏に加わった瞬間である。

・出町柳に住んだ経験のある人数 ✕ 映画などの文化への想いが強い確率

というそのまちに堆積していた歴史(関係人口とその特性)が、マルチカルチャーコンプレックス「出町座」のクラウドファンディング、そしてオープン後の成功を生み出したのかもしれない。

まちづくりの指標が変わる?!

そう考えると、これからのふるさとの風景のつくりかたも変わってくるかも知れない。

どうしても、地方創生や地域活性化というテーマを考えると「まちに人が沢山遊びに来る」景色に思いを馳せがちだけども、そのまちの歴史を資産として捉え、その価値と関係性のある人達と強く結びつく(それがクラウドファンディングなどのオンラインでの繋がりかもしれない)そんな景色も考えていくことが面白そうだ。

完全に遅れ馳せながら今年私が読んだ
CREATIVE LOCAL:エリアリノベーション海外編。

本に登場した事例
・イタリア:アルベルゴ・ディフーゾ―街全体をホテルにする新しい観光
・イタリア:アグリツーリズム―田舎のホスピタリティを価値に変える旅
などのイタリアのエリアリノベーションの事例がとても面白かった。

アルベルゴ・ディフーゾ―は、ホテルは縦に高く建てるという都会の価値観に基づいて再開発を行い歴史資産をスクラップするのではなく、その土地の歴史や特性を大事にし、まち全体を横に広がった”ホテル”として機能を再定義することで歴史と個性を最大限に引き出した風景を生み出した。

人数(スケール)を指標にすると、「中央をベンチマークに新しいハコモノを作り、広く人に知ってもらう。」という価値観になる。結局田舎<地方都市<東名阪というように、どんなにそのローカリティから始めようとしても、規模が取れる立地に近づきトレースしなくてはいけない罠にハマってしまう。

まちの歴史(関係人口とその特性)から始めることで、人数(スケール)よりオリジナルな価値(単価)も指標になりうる。その為の武器としてのクラウドファンディングは、その町に住んでいた人の声を可視化し、その町の歴史と結び目のある景色づくりに繋がる力がある。
そんな実感を得られた出町座の事例だった。

まちの風景を3Dにする。
そんな思いを込めて、クラウドファンディングに挑戦してくれる人が来年さらに増えると嬉しいし、我々MOTIONGALLERYはそこに全力で寄り添っていきたいと思う。

3Dになったふるさとの風景に加えたい景色

最後に、これはまだこれからの私の単なる願望であるが、3Dになったふるさとの風景に加えたい景色がある。
それは、毎週まちの商店街がその時だけの映画館に変わり、お店からもれる映画の灯りで商店街にふわっと灯りが灯る景色。そう、私がもう一つ取り組んでいるチャレンジ「POPCORN」(だれでも映画館をつくれるプラットフォーム)の話。

今地域・地方でどんどん少なくなってしまっている映画館を、いまのローカルの環境に合わせて再発明し、映画の火を地域に灯し続ける、映画をみんなで集まって観る風景を生み出す為に約2年チャレンジを続けている。

そして、2019年を終える今、登録された映画館がなんと400件を突破!

この広がり、とても嬉しい!
だけどもまだまだこれからのサービス。まだ「風景」と呼ばれる程には広がっていない・・・。

まちのみんなで集まり、映画の灯しでまちを明るくし、そしてそこでうまれたコミュニケーションや人間関係が、まちの歴史(関係人口とその特性)を作っていく。そんなまちの風景を3Dにする取り組みに、MOTIONGALLERYとPOPCORNの両方でサポートしていけたらというのが来年2020年の願いである。

来年2020年、このPOPCORNは大きなリニューアルを行う予定。
地域が映画の灯で明るくなる風景を実現するため、がんばります。応援何卒宜しくお願いします!

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大高健志@MOTION GALLERY
頂いたサポートは、積み立てた上で「これは社会をより面白い場所にしそう!」と感じたプロジェクトに理由付きでクラウドファンディングさせて頂くつもりです!