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コロナ後に変化する人気都市の傾向と富裕層の行動

日本では、新型コロナによる地域経済の落ち込みを戻すため、8月上旬から「Go To トラベルキャンペーン」を展開する計画を立てている。現在も感染者が出ている状況の中、観光旅行へのニーズがどこまで回復するのかは疑問だが、新たな旅行用途として、リモートワークとリゾート休暇を兼ねた地方滞在のニーズ(ワーケーション)は増えてくることが予測できる。環境省でも、ワーケーションを推進する方針を発表している。

4カ所の国立公園などで仕事と休暇を両立する「ワーケーション」を実現できるように環境整備をする。宿泊施設などへのWi-Fiなどのネット環境整備や設備改修などを後押しする(日経新聞2020/6/22)

コロナ後の生活スタイルとして、大多数の人は「仕事」を優先して、都会に住み続けることになるだろう。ただし、ワークスタイルと生活スタイルの変革に成功した人の中では、人口密度が高い大都市に住む必要は無くなるため、富裕層を中心とした地方移住の動きは、既に出てきている。

米国で最も感染被害が深刻なニューヨーク市内では、黒人やヒスパニック系住民の住むエリアでコロナ感染者が急増した。その一方で、マンハッタンなど富裕層が住むエリアでは、市外へ避難する住民が増えており、ニューヨーク大学が、スマートフォンの位置情報を分析した調査によると、2020年3~5月にかけて人口が4割近く減少したことが確認されている。

また、ニューヨークタイムスの記事によると、米国郵便公社がニューヨーク市内で届け出された郵便転送依頼のデータを分析したところ、2020年4月の転送依頼はコロナ前と比べて4倍に増加している。転送先の住所は、ニューヨーク近郊にあるウェストチェスター郡やフェアフィールド郡などの他、ソーシャルディスタンスを気にせずに生活がしやすい全米の地方都市に及んでいる。

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大都市は医療技術のレベルは高いものの、人口密度が高いため、新型コロナの感染が急増するまでのスピードが速い。また、人口に対して急患対応できるベッド数が足りないため、感染後に重症化して死亡する人の割合が高いことも、各種のデータから実証されている。

ニューヨーク市内では、1キロ平米に約1万人が生活している(人口密度は10,700人/k㎡)のに対して、東京は1キロ平米に1.5万人(人口密度は15,180人/k㎡)が生活しており、感染リスクが高い都市であることに変わりは無い。そのため、他県への移動がしやすくなる8月頃からは、「働き方」や「働く場所」の制約を受けない一部のエリート層や富裕層を中心に、地方移住を模索する動きが本格化してくることになるかもしれない。

米国の先行事例に基づくと、コロナ後に人気化する都市の特徴は、コロナ前とは変化しているため、それらの特徴を把握することが、不動産関連の事業者や投資家にとっても重要になるだろう。

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JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を精力的に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。「感染脆弱性で変わる人気都市の動向と富裕層の行動パターン」については、JNEWS会員向けレポート(2020.6.22号)で詳しく特集しています。詳細は公式サイトをご覧ください。

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