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欧米ファンはアニメ・マンガを語りたい

ドイツの書店では近年、アニメやマンガを紹介する書籍をちらほら見かけるようになりました。アニメやマンガの正規品が大量に供給される中、好きな作品を深堀りできたり、新たな自分の好みを発見したりとこういった書籍が果たす役割は大きいと思います。筆者はドイツ在住の日本人として、日本語だけでなくドイツ語による関連書籍もチェックしていますが、その中で気になった点を紹介してみたいと思います。

まずはドイツの書店で見かけた本をざっくり紹介してみたいと思います。(「ざっくり」というのは必ずしも全文を読むことが前提となる「書評」ではないというニュアンスです)

タイトル画像の本は『非公式ワンピース ファンブック』というものです。キャラのトリビアなどをたくさん集録した、ファンによる「もっと知りたい!」という需要に応えるものです。わざわざ非公式と銘打っていて、表紙だけでなく挿絵も公式の画像を使用していませんでした。著作権への配慮が感じられる一冊です。

次に取り上げるのは先日見かけたこちらの本です。『マンガとアニメに関する役に立たない知識』と題された、こちらもトリビア本です。雑学集で、個別の作品の豆知識にとどまらず、日本社会全体をテーマにしています。ただ、大衆向けの本のようで、内容は嘘が書いてあるとは言いませんが、偏りがちであまり内容を鵜呑みにしないほうがいいのかなといったのが率直な感想です。

アニメやマンガをネタに日本社会まで紹介するトリビア集

こういったトリビア本は書店のマンガコーナーで見かけます。次に取り上げる日本語で「ジブリ文庫」とも表記されている本は、スタジオジブリの作品ガイドと言ってよいと思いますが、英語からドイツ語に翻訳した書籍です。

『ジブリ文庫』は英語発

内容は作品ガイドとして、一定の機能は果たしていると思いました。なぜ「一定」なのかというと、著者はアメリカ(おそらく)のアニメ通のようで、筆者のような日本人のアニメファンが読むと、全体として「読み」が浅いと感じてしまいました。ジブリ作品であれば日本語だと解説本はそれこそたくさんありますが、そういった「解説」やその中で紹介される視点は取り上げられていない印象です。魅力が語り「尽くされている」かというと筆者としては物足りなさのほうが。。。

この3冊はあくまで一例となります。ここで本投稿のタイトル「欧米ファンはアニメ・マンガを語りたい」について考えてみます。実はこれは筆者の仮説なのです。欧米ファンと地域を限定したのは、筆者がチェックしている範囲がおよそ欧米に限定しているというだけで、アジアでも同様の傾向、動向はあるかもしれません。

繰り返しになりますが、ドイツでもアニメやマンガの正規品の流通が本当に増えました。そういった環境の中で、カジュアルな「消費者」は次に何を読めば/買えばいいのかといった作品ガイドの需要はあるでしょう。同時に、界隈の「ベテラン」が新参者に伝えたい「読み方」もあるでしょう。振り返れば、日本でもアニメがたくさん放送された結果、アニメ雑誌が創刊し、作品の掘り下げやガイド的な新作のおすすめポイントなどが紹介されてきたと筆者は認識しています。紙の雑誌産業はその役割をほぼ終えたようですが、情報へのニーズはあるのかもしれません。それは例えば、推しのVtuberがハマっているアニメだったりが、見るきっかけになることもあるでしょう。

実は、筆者は最近、菊池健氏の『漫画ビジネス』を読んでいたのですが、その前は氷川竜介さんの『日本アニメの革新』でした。アニメをもっと深く知ることで、アニメの楽しみ方の幅が増えるのではないでしょうか。

世界から見ると、日本はアニメやマンガといったポップカルチャーの「源泉」であり、国外のファンでは到達できない知識レベルといったものが存在するのではと考えています。であれば、アニメやマンガの楽しみ方を提案するのは、日本の人々のほうがアドバンテージがありそうです。

昨今、ドイツの書店に並ぶ関連書籍を見ていて、改めて感じました。そこから導き出されるひとつの解は、日本のアニメ・マンガをめぐる界隈文化を扱う書籍の現地出版なのかもしれません。現地ファンによるアニメ・マンガ語りは存在はしますし、イベントでもトークパネルがあります。ただ、ローカライズされた作品のみをベースにしているため、作品間の影響関係は知り得ない情報ですし、結果、ストーリー展開やキャラの良し悪しを語るくらいしか論点がない傾向にあります。

日本では先日、ソニーによるKADOAKWAの買収協議のニュースが話題になりました。作品やグッズなどの関連商品を海外で販売する傾向は今後も拡大しそうな気配はあります。一方で、現地ファンにはガイド的な情報もそろそろ必要になる段階に達したと最近思うようになりました。皆さんはどう思われますか?


タイトル画像:ドイツの書店で見かけた『ワンピース』のトリビア本。筆者撮影。

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