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市民テクノロジストと行政サービスのマッチングの試み〜USデジタル・レスポンス

テクノロジーやデータを活用することで新型コロナウィルスの感染拡大抑制、収束への道筋模索に役立てようとする試みが世界中で進んでいるようです。

人工知能(AI)開発のコンペティションを実施するSIGNATE(シグネイト)社は、AI技術者や高度な解析技術を身につけたデータサイエンティストなど約3万人のネットワークを活用することで、形式などがバラバラで分析しにくいとされている、自治体などが公表する新型コロナの患者データを集める「COVID-19チャレンジ」を実施していることが紹介されています。

そんな中、今回は米国でもちょうど一月半にスタートしたばかりのプロジェクト、「USデジタル・レスポンス(USDR: US Digital Response)」について触れてみたいと思います。オンライン上でのデータの可視化など、多くの試みが増えている一方で、現在最もデジタルツールを活用した効率化が迫られている行政機関が、一体どのようにして必要な人材とのマッチングを行っているか、という点が重要と思えたからです。

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USデジタル・レスポンスとは、米国非営利団体コード・フォー・アメリカ創業者のジェニファー・パルカ氏と、パルカ氏同様かつて米国CTO補佐官として活躍していた計3名を中心に3月中旬に始められた、新型コロナウィルス対策のための市民テクノロジストと行政機関とのボランティア・マッチング・サービスです。

コード・フォー・アメリカを2009年に設立したパルカ氏は行政機関が抱える課題を把握した上で、シリコンバレーやスタートアップで活躍する公共的な思考を持ったテクノロジストのネットワークを長年に渡って構築してきた実績を持っていました。新型コロナウィルスの感染が米国でも拡大し始めた3月中旬に何かできることはないかと模索する中で、行政機関と市民テクノロジスト双方に呼びかけ、Googleドキュメントのフォームに記入してもらうことでプロジェクトを始めるに至ったそうです。

結果、4月末の時点において既に5,000人の経験豊富な市民テクノロジストがデータベースに登録、行政機関からも問い合わせが数多く寄せられ、160のプロジェクトがスタートし、そのうち123件もの案件が完了した、と報告されています人材と行政機関のマッチングはコアとなるボランティアメンバーがチェックした上で、行政機関の担当者と24時間以内に打ち合わせを行い、求められる要件、スキルを査定した上で適切な人材のコーディネートを行っているとのことです。

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プロジェクト内容は「データ収集の自動化」、「感染データのモデリング」、「簡単なオンライン・セルフ・チェック・ツールの構築」、「オンライン上の融資審査サイトの構築」などがあり、連邦、州、市、群など、それぞれ異なる規模の地方自治体からの問い合わせに応えていることが分かります。また、使用した技術の多くはギットハブなどに情報が公開されていることもあり、今後こうした蓄積が他の地方自治体にも利用されていく可能性が十分にありそうです。

国内においても例えば給付金の申請プロセスの効率化、或いは各地域の行政機関から市民に対する効果的なオンラインコミュニケーションの改善など、今後ますますデジタル化の波が訪れることと思います。既にコード・フォー・ジャパンなど、長年に渡って地域に根付いた活動をされている団体も存在してますが、それぞれの地域で心ある市民テクノロジストと行政機関との効果的なマッチングのしくみがますます広がっていくことを期待しています。

参考: ジェン・パルカ氏をゲストに招いたポッドキャスト(2020/4/23)

Photo by Edho Pratama on Unsplash

追伸:オープンソースのコロナ関連リンク集サイト「コロナウィルス・テック・ハンドブック」を公開しています。追加すべき有益な情報があれば是非ご記入ください。


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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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