2010年、ナタリー・ポートマン主演の「ブラック・スワン」は、思い詰め過ぎて壊れていく人間の脆さを畳み掛けられるように説かれているようで、重苦しい気持ちになりながら、でも、綺麗すぎるナタリー・ポートマンに釘づけになったことを覚えている。

金融業界で言うブラックスワンも重苦しいものという点では共通かもしれない。事前予想がなかったのに、いざそれに遭遇すると衝撃が大きい現象のことをいい、極端な出来事やクレジット・イベントを指す。2019年のクレジット市場には、ブラックスワンが既に二羽。いるかいないかはっきりしないけれど、それ以外にも数羽いる、という認識である。

一羽目のブラックスワンは米中による貿易協議の決裂。2月末までをめどに、90日間協議をし、合意できなければ関税を引き上げ、ますます米中間が深刻化していくことになる。3月1日は米国の債務上限問題の期限であり、5日は中国全人代が始まる日である。自国で大事なイベントをそれぞれ迎えるにあたり、世界の金融市場が震撼する決断をするとは思えないものの、ありきたりの常識が通用しない判断がなされる可能性は見ておかねばなるまい。二羽目のブラックスワンは合意なきブレグジット。3月30日0時00分までに、金融市場が納得できる決断ができるかどうか。

ITバブル崩壊懸念の再燃、大型事業会社の突発的破綻、流動性枯渇によるレバレッジド・ローンやハイイールド市場へのネガティブな影響などは、まだそこにいるかどうかはっきりしないが、いたことがわかったときには影響が大きいブラックスワン候補者と言える。

2019年は、日本にとっては元号が変わり、欧州では通貨統合から20年目の節目にあたる記念すべき年である。だからというわけでもないが、金融・財政政策が市場のボラティリティを抑え込む動きは今年も継続するであろうことが期待される。しかしながら、遭遇すれば大きな衝撃がありうるブラックスワンがこれから数か月の間に現れてくる可能性が大きくなっていることが、重苦しさの元凶なのかもしれない。


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