”自由化”してうまくやっていくのは、実はとても難しい。
今日の日経社説「電気の規制料金撤廃は地域事情に応じて」から。
そもそも電力自由化されたのに、規制料金というのが残っている、ということもご存じない方が多いと思うので、まずはそこから。
電力自由化したとはいえ、いきなり料金を全て自由にしてしまうと、旧来の電力会社がその支配的な地位を利用して値上げして消費者の不利益になることも起こり得るとして、大手電力会社には規制料金メニューを維持することが義務付けられています。
普通に考えれば、そんな値上げをすれば消費者からそっぽを向かれるので、そこを狙って新規事業者が出てくるということになるはずですが、まぁそうとばかりもいかないでしょう、ということでこのような「経過措置」が採られたわけです。実際には値下げ競争になりました。
規制料金メニューが残り続ければ、消費者が他を選択しようという気になりませんし、「自由化」したはずなのに政府が過剰な規制を続けるのも筋が通らないので、一定程度時間が経ったらその規制料金は撤廃するのが前提です。競争状況など確認して撤廃しましょう、ということで、いま地域ごとの新電力さんのシェアなどを見て規制料金を無くして良いかどうかを議論しています。
で、確かに新規参入の事業者さんがどれくらい育っているかで定量的に判断するのも大事ですが、この社説が言うようにそれを「条件」にするという方向では議論していません。一つの目安と議論しているという認識です。
>規制料金の撤廃ルールを議論する政府の有識者会議では、区域内に5%程度のシェアを持つ新規電力会社が2社以上あることを撤廃の条件とする案が示された。
目安と条件って何が違うんだ、と思われるかもしれませんのでちょっと解説。いまの電力会社さんのエリアの中で小売り事業に参戦した事業者さんも、そのシェア全部を取りに行くなんてことはしないわけです。北海道だったら札幌で、九州だったら福岡で・・と、需要が密集したところでしか普通事業はやりません。なので、100%に対して何%のシェアを取ったかというのはあまり意味がないわけで、それも一つの目安として考えましょう、ということだと理解しています。
まずは消費者の方たちに、自由化のメリットもデメリットも理解していただく必要がありますが、世の中に情報を浸透させるってとても難しいので、「消費者はまだ知らない」で本来の制度設計の趣旨と違う状態に長いこと置くべきではないと私は思っています。
日本はその辺とても「優しい国」なので、本来の制度設計がゆがんだり、規制しながら規制を足していくようなこともしてしまうので、よく訳が分からないことにもなりがち。
今後さらに、情報開示の在り方(例えばいまはただの価格競争になっていますが、事業者ごとの典型的メニューの電源構成を一覧にしたりとか)や、原子力や石炭といった大型発電所を持つことの「リスク」もその安い電気という「メリット」もシェアできるようにさらに制度設計の議論を詰めていかねばなりません。自由化の世界は実は難しい・・・。