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新型コロナは感染症法「5類」移行で本当に特別視されなくなるのか? 

 未知の感染症である新型コロナ(COVID)が発生し、ひたすら感染者を探し出し徹底的な感染対策を行っていた2020年、次々と変異株が出現し、それに対抗するためのワクチン接種や治療薬の使用により医療者としてはひたすら戦い続けた2021年、多くの方がワクチン接種を行い病原性の低下によりウィズコロナを見据えた対応の変化が見られ始めた2022年、そして2023年、ようやく国家として「特別視をしない一般的な感染症」として日常生活を送るための法整備が始まることになりました。「特別視しない」ということは決して軽く見るということではなく、法のもとで一部過剰に行われてきた対応を見直し、制限されてきた日常生活をもとに戻すということです。すなわち感染症法として「新型インフルエンザ等感染症」に位置付けられているCOVIDを「5類」に移行するということです。ここ数日で何が変わるのか?とあちこちで議論がなされているようです。最も大きな変化は「法律のもとで強制的に行うことができる」ことが「できなくなる」ことだと思います。

①感染者・接触者の待機期間

 一般人が「人の行動を強制的に止める」ことは難しいことです。現在COVIDと診断した人に対して私たちが「必ず自宅待機してください」とお伝えできるのは「新型インフルエンザ等感染症」の「感染者の待機期間」に基づくものです。ただ5類に位置付けられている季節性インフルエンザも「学校保健安全法」では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」は出席停止(登校してはいけない)と明記されていますので、学校は感染管理のために生徒を休ませることができます。事業所などでもこれを参考にしている場合もあります。但し「症状により医師が感染の恐れが無いと認めたときはこの限りではない」「これらの基準は疾患が治癒したこととは同義ではない」ともありますので、結局のところは医療機関を受診したうえでの判断となることが多いと思われます。従って「待機期間が全くなし」ということではなく、これまでの知見から他の人にうつしやすい期間を明記したうえで各人あるいは事業所などが判断するという対応が現実的ではないでしょうか。確かに「待機なし」となれば感染しやすい人が拡げてしまう恐れも少なくはありません。しかしオミクロン株に置き換わってからはほとんどが軽症者ですので現状でも「検査をせずに待機をしていない人」も相当数存在します。これまでと同様「体調がすぐれないときは休む」「COVIDの可能性を考えたら接触的に検査をする」「自分が感染者と考えてこれまで言われてきた待機期間中は飲食機会などはもたない」などルールを明確にし徹底することによって感染拡大を最小限に抑えることは可能と考えます(拡がりをゼロにすることを求めるのではなく、数分の1にすることができれば良いのです)。

②公費負担

 現状は「あり」となっていますが、公費となるのは「COVIDと診断されてからの医療費」であり、発熱外来を受診して検査をするまでは「検査費用+判断料」以外は支払いが生じます(全く支払いがないのは民間検査など無料検査施設の場合です)。発熱外来を公表している施設では感染対策の手間や人件費などを鑑みた保険点数の加算がつきますので、受診者の負担は少なく済みますが診療報酬は高くつきます。すなわち患者側・医療側ともにメリットがあるわけです。具体的に説明しますと、発熱外来ではCOVID疑いで診察・検査を行うと陽性であっても陰性であっても負担額は3,000円程度と思われます。しかし診療報酬は30,000円程度となっていますので、現行では概ね1割負担というところでしょう。現行のままこれが3割となると発熱外来で負担していただく医療費が薬剤費を除き9,000円程度となる訳です。しかし5類となると加算がなくなる可能性もあるので、かぜなどで受診する時と同様の1,200円程度になると思われます。おそらく発熱外来を行っていた施設は現行通りに診療を行うと思いますが、受診者を制限したままではかなりの減収となりますので、隔離や時間制限などを設けずにCOVID前の診療体制に戻す可能性もあり、院内感染対策が徹底されなくなることも危惧されます。このあたりを考慮したのが日本医師会の発言(以下)であると考えています。

ただコロナの感染力はインフルよりも高い。専門家からは院内感染対策の継続を求める声があがる。厚労省幹部は「コロナ発生前の医療体制に完全に戻すわけではない」と話す。診療報酬の加算や補助金といった支援を急にやめると、外来や入院などのコロナ診療を続けられない医療機関が出る恐れがある。日本医師会の松本吉郎会長は19日、岸田文雄首相と面会し、医療体制の切り替えについて「段階的に、慎重にソフトランディングした形でお願いしたい」と伝えた。こうした要望を踏まえ、厚労省は当面は支援を続け、段階的に縮小する方針だ。設備や人手が限られる小規模な診療所でも対応できるような仕組みを模索する。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA205B10Q3A120C2000000/

③診療対応

 前述の引用にも関連しますが「原則すべての医療機関」でCOVID診療を行うことはかなりの高いハードルがあります。当然ながら眼科、皮膚科、整形外科などいわゆるマイナー診療科でCOVID診療を行うことはこれまでもなかったと思いますので「すべての医療機関」ではなく、少なくとも「COVID発生前にはインフルエンザなどを含む発熱患者の診療を行っていた医療機関」という捉え方が現実的でしょう。医師法19条1項には「診療に従事する医師は診察治療の求めがあった場合には正当な事由がなければこれを拒んではならない」と定めています。これがCOVID診療に適用されるのか否かについてですが、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は各都道府県等に対し、診療に関する留意点について2020年3月11日に連絡文書を発出しています。

「患者が発熱や上気道症状を有しているということのみを理由に、当該患者の診療を拒否することは、応招義務を定めた医師法(昭和23 年法律第201 号)第19 条第1項及び歯科医師法(昭和23 年法律第202 号)第19 条第1項における診療を拒否する「正当な事由」に該当しないため、診療が困難である場合は、少なくとも帰国者・接触者外来や新型コロナウイルス感染症患者を診療可能な医療機関への受診を適切に勧奨すること。」

その後6月2日発出の2回目、10月2日発出の3回目の連絡でも応召義務については同じ内容

 一方、2019年12月の通知では「特定の感染症への罹患等合理性の認められない理由のみに基づき診療しないことは正当化されない。「1類・2類感染症等、制度上、特定の医療機関で対応すべきとされている感染症に罹患している又はその疑いのある患者等についてはこの限りではない」とされています。当時COVIDは2類感染症等ではなかったのですが「新型インフルエンザ等感染症」が「1・2類感染症等」と同等であれば「特定の医療機関で対応すべきとされている感染症」にあたりこの「特定の医療機関」がいわゆる「発熱外来」というわけです。従ってこの正当な理由によって発熱外来以外の施設ではこの3年間診療拒否を続けることができたわけです。しかし野放し状態にしたことで様々な問題も生じたわけです。

新型コロナウイルスと季節性インフルエンザが同時期に流行する懸念が強まっていることを踏まえ、政府が対応策を打ち出した。限られた発熱外来を重症化リスクが高い高齢者らが優先的に受診できるようにするのが柱だが、気になるのは、発熱外来以外の医療機関が抗原検査で陰性結果が出た患者の診察を拒むことを容認している点だ。医師の応召義務はどこにいってしまったのだろうか。コロナ抗原検査陰性でも拒否容認 医師の診察義務はどこへ: 日本経済新聞 (nikkei.com)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD193G60Z11C22A0000000/

 5類に移行したからといってその施行日からどの医療機関でも発熱した患者さんを診療するとは到底考えられません。受け入れ側としては「多くの高齢者が待合室にいる」「ビル管理者が発熱患者の受け入れを許可しない」「スペースがなく感染対策ができない」「スタッフの協力が得られない」等々、すべて「正当な理由」として拒否し続けるかもしれません。そうなると上記のように「診療が困難である場合は、少なくとも帰国者・接触者外来や新型コロナウイルス感染症患者を診療可能な医療機関への受診を適切に勧奨すること」に従い、結局はこれまでと同様のフローになり何も変わらないことになります。本気ですべての医療機関での診療対応を行わせるのであれば、「COVID発生前にはインフルエンザなどを含む発熱患者の診療を行っていた医療機関」が拒否した場合の罰則規定(強制的に診るということではなく減収にする等のペナルティを課すなど)を設けるなり、少しは厳しい措置を講じても良いのではないでしょうか。

④マスク着用

 「屋内でも原則不要」ということ自体、5類に移行することとは関係ないと思いますので本項は割愛します。

 COVIDは2020年2月1日に感染症法上の指定感染症と指定され、2021年2月3日に新型インフルエンザ等感染症に位置付けられました。政府対策本部の設置・廃止については特措法に基づき以下ように決められているようです。

特措法に基づく政府対策本部の設置・廃止

(設置)病状の程度が季節性インフルエンザに比しておおむね同程度以下であると認められる場合を除き設置
(廃止)病状の程度が季節性インフルエンザに比しておおむね同程度以下であることが明らかとなったとき、又は新型インフルエンザ等感染症と認められなくなった時に廃止

 COVIDに関しては3年が経過し多くのことが判明してきた訳ですが、感染対策のことだけではなく社会全体を考えたときに季節性インフルエンザのみとの比較では結論は出ないような気はします。この書きぶりからみると病状の程度からすれば「廃止」が妥当と考えますが、廃止にしたくない一部勢力の力も感じざるをえません。

#日経COMEMO #NIKKEI #新型コロナとの付き合い方


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